数学切り抜き帳
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展開図のコード
桜花学園大学教授
岩井 齊良
 図形は直観的には分かりやすいが,これをことばで説明するのは難しい.文字で表されたものは暗記するのも簡単だが,図形はそうはいかない.
 ここでは正多面体の展開図がどのように記録できるかを考えてみよう.
 これには決まりきった方法はないので,場合に応じ工夫が必要である.
しかし,今は具体的な問題を想定しているわけではなく一般的な状況で考えるので,こういう話もあるという軽い感覚で読んでもらいたい.

 まず立方体(正六面体)であるが,これは正方形の並びであるから,方眼紙をもってきてどのます目が埋められるかを観察すればよい.

 このように方眼紙を色づけして表される図形をビットマップという.
 ビットというのは情報科学のことばで,情報の最小の単位0,1のことをいう.
 上の最初の図には,

 

というビットの並びが対応し,コンピュータの内部では図形が数値として記録される.

 次に,正四面体,正八面体,正二十面体は正三角形の並びであるから,正三角形を並べたグラフ用紙をもってきて,どの部分が埋められるかを観察すればよい.

 これらの図形はビットマップと同様の考えで数値化できよう.
 さて残るのは正十二面体でこれが問題である.

 正十二面体の展開図をよく見ると,現れる正五角形は正立の正五角形と倒立の正五角形しかない.

 よく考えてみるとこれは当然のことである.
 2つの正五角形がある辺でつながるとき,一方が正立であれば他方は倒立である.

 正十二面体の展開図を記録するために筆者は次の工夫をした.
    正五角形の1つをAとする
    Aに隣接する正五角形の1つをBとする
    A,Bのどれかに隣接する正五角形の1つをCとする
    A,B,Cのどれかに隣接する正五角形の1つをDとする

 出発点となる正五角形Aはどの正五角形を指定してもよい.正立であってもよいし,倒立であってもよい.

 次に,正立の正五角形の辺に1,2,3,4,5の番号をつける.

 これを 180 回転したものを倒立正五角形の番号とする.

 これにより,正立,倒立の2つの正五角形が隣接するとき,同じ番号の辺で接することになる. 

 これで準備は整った.次の展開図について,どの正五角形とどの正五角形が何番の辺で接するかを表に表してみよう.

A
A
A
A
A
C
G
H
H
H
H
B
C
D
E
F
G
H
I
J
K
L
1
2
3
4
5
4
2
3
4
5
1

 この表から次の展開図のコードが生まれる.

     AB1AC2AD3AE4AF5CG4GH2HI3HJ4HK5HL1

  ここまでのことを理解するために次の問題を考えてみよう.

問1 上の例にならって,次の展開図のコードを求めよ.

答1

  AB5AC2AD1DE3DF4FG2GH4HI1IJ2IK5HL3

 ここまでは展開図をコード化する話であったが,約束事に従えば逆に,コードから展開図を作り出すことができる.

問2 次のコードで表される展開図を描け.

  AB2BC1CD4DE2EF5FG2GH5HI2IJ4JK1KL2

答2

 最後にコードについて一言触れておく.

 今日では,ほとんどすべての商品にバーコードが付けられている.
 レジの現場で読み取り機で読み取られたコードはコンピュータに送られ,コンピュータは必要な情報である商品名や値段を現場に送り返す.バーコードはこのような仕組みの中に組み込まれている.

 この仕組みから分かることは,コードはある約束事で作られた暗号である.コードだけではなんの役にも立たない.この暗号を解読するソフトウェア(解析プログラム)があってはじめて,必要な情報がもたらされる.

 コンピュータに展開図のコードを知らせ,画面上に展開図を描かせるには,次のソフトウェアが必要である.
 まず,正五角形Aを描く
 次に,A,Bの共通辺の中点を中心として正五角形Aを 180 回転した正五角形Bを描く
 C以下の正五角形も同様に描く

 これまでに出てきた正五角形の展開図を付録とした.コピーして実際に作ってみよう.
付録 正十二面体の展開図
展開図1
展開図2
展開図3
展開図4