数学切り抜き帳
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 四平方の定理?!
桜花学園大学教授
岩井 齊良
 「四平方の定理」という呼び名は筆者が勝手につけたものである.次に「直角三角錐」という耳慣れない単語が出てくるが,これも筆者が作ったものである.
 四平方の定理は三平方の定理にちなんだことばで,直角三角錐は直角三角形にちなんだことばである.

●直角三角錐●
 三角錐OABCにおいて,1つの頂点Oに集まる3つの角 ∠AOB,∠BOC,∠COA がいずれも直角のとき,これを
    点Oを直角の頂点とする直角三角錐
と呼ぼう.
 これは直方体の片隅を切り落としてできる立体である.手近にある直方体(箱,机,本など)を見てその片隅を切り落とした場面を想像して下さい.あるいは,四角い箱の中をのぞきこんでこの立体が存在することを確かめよ.
 いま君がいる部屋の中にも直角三角錐は存在する(下図).

●四平方の定理●
 四平方の定理は直角三角錐の4つの面の面積に関わる公式としてまとめられる.
 点Aから辺BCに下ろした垂線の足をHとすると,
    OA⊥OH, OH⊥BC
 したがって,

     △ABC= AH・BC, △OBC= OH・BC

定理(四平方の定理)
 点Oを直角の頂点とする直角三角錐OABCにおいて,次の等式が成り立つ.
   (△ABC)2=(△OAB)2+(△OBC)2+(△OCA)2

証明 (△ABC)2
AH2・BC2 
(OA2+OH2)BC2 
OA2・BC2 OH2・BC2 
OA2(OB2+OC2)+ OH2・BC2
OA2・OB2 OA2・OC2 OH2・BC2
=(△OAB)2+(△OCA)2+(△OBC)2


 見ての通り,この証明はきわめて初等的である.
 この定理と三平方の定理との類似点に注目しよう.

   三平方の定理……直角三角形……辺の長さ
   四平方の定理……直角三角錐……面の面積

 三平方の定理は,

   直角三角形において,斜辺の平方は直角をはさむ2辺の平方の和に等しい

と表現される.
 四平方の定理を同様に表現すると,

   直角三角錐において,斜面の面積の平方は,他の3つの直角三角形の面積の
   平方の和に等しい

となるであろう.

 初等的証明の方を先に示してしまったが,それはさておき,計算力のある若者には次の問題を解いてもらいたい.

問 3点A(a,0,0),B(0,b,0),C(0,0,c) を頂点とする三角形の面積を求めよ.

(ヒント) cos∠BAC,sin∠BAC を決定せよ.

 この答は,

   

となる.これを変形すると,

   

となって上の定理の結果と一致する.
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