周辺教材「出口の数学」
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(1)カードによる年齢あて
大阪高等学校数学教育会 教材開発委員会
大阪府立港高等学校
大阪府立大和川高等学校
岡 本   宏
横 山 博 次

連載をはじめるにあたって

 大阪高等学校数学教育会は,昨年発足50周年を迎え,現在13の委員会が活動しています.教材開発委員会は,その中の一つで,委員各自のアイデアや授業での経験を基に,実践的で,すぐに授業等で活用できる教材の開発・研究を行っています.
 当委員会が開発した代表的な教材に「高校数学へ」と「出口の数学」の2種類の冊子があります.「高校数学へ」は中学校の数学から高校の数学への導入教材として,昭和51年以来今日に至るまで,多くの高校生が利用し,成果を上げてきました.その間,学習指導要領の改訂と共にその内容は改訂され,現在は 新教育課程の実施に向け改訂作業中です. この教材は,合格発表から入学までの間の新入生の課題として,主に利用されています.そして,冊子の最初に校名入りで学校独自の新入生向けメッセージを入れることができ,最後には生徒の実情に応じて,確認問題などを選ぶことができるという特筆すべき特徴を持っています.しかも,同じような内容の市販の教材より安い価格になっています.
 一方「出口の数学」は,1時間ないし2時間の授業で完結し,しかも生徒にとって面白く, 数学Tなど既習の科目内容を活用しながら,数学的な考え方や解き方を身に付けることのできる教材として集められたもので,そのままプリントとして使えるように編集されています. 第1集が昭和62年,第2集が平成2年に発行されています.この冊子は,文科系または大学などの入試において,直接数学を必要としない生徒を対象としたもので,高校3年間のまとめの学習として利用されることを前提としています.そういう意味で,「高校数学へ」を高校への‘入口の数学’と考えるなら,この「出口の数学」は高校を卒業するにあたり,必要な教養が身に付いているかを確認する意味で, 文字通り‘出口の数学’と呼べるものです.
 今回から4回にわたり,いくつかの教材を紹介させていただきます.最後に,これらの教材や当委員会の活動に興味をお持ちの方は,下記の連絡先までご連絡下さい.

教材開発委員会
kyouzaikaihatsu@clubaa.com

周辺教材「出口の数学」

カードによる年齢あて

A男 「B子さん,いくつですか?」
B子 「女性に年齢を聞くなんて失礼ね.」
A男 「それじゃ次の6枚のカードの中で,B子さんの年齢の入ったものだけ教えてくれないか.」

カード1(1のカード) カード2(2のカード) カード3(4のカード)
3 5 7 9 11 13 3 6 7 10 11 14 5 6 7 12 13 14
15 17 19 21 23 25 15 18 19 22 23 26 15 20 21 22 23 28
27 29 31 33 35 37 27 30 31 34 35 38 29 30 31 36 37 38
39 41 43 45 47 49 39 42 43 46 47 50 39 44 45 46 47 52
51 53 55 57 59 1 51 54 55 58 59 2 53 54 55 60 13 4
カード4(8のカード) カード5(16のカード) カード6(32のカード)
9 10 11 12 13 14 17 18 19 20 21 22 33 34 35 36 37 38
15 24 25 26 27 28 23 24 25 26 27 28 39 40 41 42 43 44
29 30 31 40 41 42 29 30 31 48 49 50 45 46 47 48 49 50
43 44 45 46 47 56 51 52 53 54 55 56 51 52 53 54 55 56
57 58 59 60 13 8 57 58 59 60 31 16 57 58 59 60 46 32
30個にするため同じ数を2回入れてあるカードがあります.

B子   「またうまいこと言って…….まあ,いいわ.カード2とカード3とカード5に入っているわ.」
A男 「では当ててみよう.22才だろう.」
B子 「どうしてわかったの?」

問1
(1) カード1,カード3,カード5ならいくつ?
(2) カード2,カード5,カード6ならいくつ?
(3) カード5,カード6ならいくつ?
(4) カード1,カード2,カード3,カード4ならいくつ?

<種あかし>10進数の22を2のベキ乗数で表す.
24 23 22 21 20
〔←2のベキ乗〕
1 0 1 1 0
…………………(a)
つまり 16 +4 +2
=22となる.

問2 次の各数を2のベキ乗数の和になおせ.
<例>14=8+4+2〔注 14=8+2+2+2のように同じ数を2回以上使わない〕
1=1 6= 11= 16= 21= 26=
2=2 7= 12= 17= 22= 27=
3=2+1 8= 13= 18= 23= 28=
4= 9= 14= 19= 24= 29=
5= 10= 15= 20= 25= 30=

B子   「どうしてこんなことするの?」
A男 「上の表で1を使っている数をみてごらん.左のカード1に入っている数ばかりだろう.」
B子 「あっ,ほんとだ.」
A男 「2を使っているのも同じだろう.その他,4,8,16,32も同じだよ.」
B子 「それがどうしたの?」
A男 「だから,2のカードと4のカードと16のカードに入っていたら2+4+16=22になるだろう.」
B子 「なるほど.やっとわかったわ.」
A男 「では少しまとめてみよう.」

≪2進数について≫
 前の(a)のように2のベキ乗数のあるなしを示す1と0だけを並べた数を2進数といいます.2進数の足し算では

    0+0=0,0+1=1,1+0=1,1+1=10

のように計算し,その結果,自分の年齢が入っていたカードの右下の数を足すと本当の年齢がわかることになります.
 このように2進数は0と1の2つの数で計算をしていきます.この0と1を「電流が流れている,いない」や「磁界のNとS」のように扱うと,これがデジタル信号になります.コンピュータではこのような2つの信号を使い分けてデータを処理しているのです.
 CDやMD,iモードの携帯電話回線,ISDNや光通信等は全てデジタル信号を使用しています.
 君たちの知らないところで「2進数」が活躍しているのです.

(本稿は,当時天王寺高校・神永浩が作成したものを港高校・岡本宏が再編集しました.
「出口の数学」第2集 §6 に掲載されています.)