新しいメディアを活用した授業
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「コンピュータとインターネット」活用の試み
−実験・実習授業での取り組み−
東京都立新宿山吹高等学校
情報科(工業・電子担当)
山 本   誠

1 はじめに

 コンピュータやインターネットに代表される高度情報通信社会の急速な発達に伴い,学校教育の現場においても,新しいメディアを活用した授業への対応が迫られている.
 近年,生徒のコンピュータやインターネットに対する興味・関心・学習意欲は,家庭など身近な場所での普及に伴い,極めて高いものがある.
一方,知識や技術,機器操作の習熟の程度については,かなりばらつきがある.
 コンピュータやインターネットに関する分野の内容は,技術の進展がはやく,教材や学校設備の整備等も含めて,十分に対応し難い現実がある.
 授業で取り扱う内容や指導方法について,戸惑いや疑問を抱えつつも,教育のひとつとして実際に取り組まざるをえない社会状況になっている.
 ここに,新しいメディアを活用した授業の一例として,コンピュータやインターネットを活用した実験・実習授業の実践例を紹介する.

2 新宿山吹高等学校について

 平成3年に普通科と情報科をもつ単位制,無学年制の高等学校として開校し,昼夜開講型の定時制課程と通信制課程がある.
 学期は「前期」「後期」制で,授業は1コマ105分間単位で行われている.
 通常の授業に加え,生涯学習講座や土日講座などが設けられ,毎日朝から夜遅くまで,幅広い年齢層と個性豊かな生徒が登校している.
 インターネットを活用した取り組みは長く,過去に100校プロジェクトをはじめとして,さまざまな研究を行ってきた経緯がある.学校全体で,インターネットに接続可能なコンピュータは,100台を超えている.現在は,「光ファイバーによる学校間ネットワーク活用研究校(文部省研究事業)」として,通信速度が1.5Mbpsの高速・大容量の光ファイバー回線で,インターネットに接続されている.

3 指導形態と工業関係科目

 情報科は,都立の高等学校で唯一存在し,工業科,商業科の学習内容を中心に,情報に関する内容を指導している.
 工業科の関係科目では,おもに実習室(≠パソコン教室)で,実験や実習を中心に班編制で授業を行っている.
 実習室の机の上には,天井からつり下げ型の電源コンセントがあるほか,部屋毎にインターネットに接続可能なHUB(集線装置)が設置されている.
 コンピュータやインターネットを使用する場合,保管庫(ロッカー)からノート型コンピュータを取り出し,必要に応じて接続し使用している.
 工業科関係科目の例を次に示す.

    (1)工業基礎
    (2)情報技術基礎
    (3)電子基礎
    (4)電子機械
    (5)情報実習(A,B,C)
    (6)課題研究

4 工業基礎での取り組み

(1)指導の概要
 科目「工業基礎」は,おもに1学年相当の生徒を対象にした実験・実習科目で,「工業の各分野にわたる基礎的技術を,総合的な実験・実習によって体験させ,広い視野と問題解決能力を育むこと」を目標としている.
 ここでは,特に「電子・情報技術の基礎」,「機械・製図」,「加工(ものづくり)」といった3つの柱を中心に授業を行っている.
 私の担当する「電子・情報技術の基礎」に関する授業では,コンピュータのハードウェアを理解するために必要な基礎・基本となる内容を取り扱っている.
 指導項目例を次に示す.

    [1]オームの法則
    [2]コンデンサの接続
    [3]コイルの性質
    [4]ダイオードとトランジスタ
    [5]論理回路の基礎(AND,OR,NOT)
    [6]コンピュータ制御の基礎

 前期の最初の授業では,オームの法則を例に実験を行い,コンピュータを動かしている電気について,電圧,電流,抵抗の関係を理解させている.
 この授業は,実験・実習授業のガイダンス的役割をもつことから,指導項目と併せて,レポートの書き方についても指導している.
(2)実験の内容
 実験の手順と内容の概要を次に示す.
 [1]オームの法則の実験
 オームの法則は,V=IRで表されるが,この関係を確かめるため,図1に示す実験回路を用いて,抵抗Rに電流Iを流し電圧Vを測定し,計算値と比較する.
 なお,実験には,電流計,電圧計,ダイアル型可変抵抗器,すべり抵抗器,直流安定化電源,スイッチなど,各種実験機器を実際に使用する.
 [2]レポートの作成
 レポートの作成は,情報を科学的に理解し,利用し取り扱うために必要な作業の第一歩であると考えている.
 最初は手書きで,レポートを作成するために必要な内容を指導する.
 レポート用紙やグラフ用紙などに,鉛筆と消しゴム,定規を使って作成させる. レポートとしての基本項目をはじめ,図や表の書き方,誤差や数値データの扱い方などについて理解させる.
 生徒は,予想以上に,レポートの作成に時間を必要とし,その作業が大変であることを感じ取るものである.
 レポートの項目例を次に示す.

    ア 目標
    イ 原理・法則
    ウ 実験の手順
    エ 実験結果
    オ 考察
    カ 感想
    キ 参考資料


図1 実験回路

5 コンピュータとインターネット

 手書きでレポートの作成を終えたところで,コンピュータやインターネットの活用に移る.
 実際に行った実験内容や結果をもとに,発展的内容として,レポートの作成を行わせる.
 情報科の生徒として身につけて欲しい情報の科学的利用や情報社会に参加する態度を指導する上で,コンピュータやインターネットを利用することは効果的である.
(1)コンピュータの活用
 はじめは,ワープロのソフトウェアを使用して,手書き作業を置き換えるという内容で,コンピュータを使用する.
 次に,表計算のソフトウェアを使用して,実験データを整理させ,グラフィック機能で,結果をグラフ表示させる.
 手書き作業で苦労した後にコンピュータを登場させることで,コンピュータの有効性を一層理解させることが出来る.
 実験・実習授業でのコンピュータ活用例を次にまとめて示す.

    [1]ワープロのソフトウェアを使って実験・実習レポートをまとめる.
    [2]表計算のソフトウェアを使用して,実験・実習結果の数値データを整理し(図2),情報を視覚化する(図3).
    [3]プレゼンテーションのソフトウェアを使用し,実験・実習結果を発表する.


図2 表計算ソフトの使用例


図3 実験結果の視覚化

(2)インターネットの活用
 インターネットは,レポートを充実させるという視点で活用する.具体的には,実験・実習を通じて生じた疑問,質問等について考えさせ,インターネットで情報検索,情報収集を行わせ,答えを得る.
 生徒は当初,「何から検索してよいか」,「どのように使ったらよいか」戸惑いを感じているが,具体的使用例を先に提示してから,自主的な活動に移らせることで,発展的に授業が展開する.
 例を示すと次のようなものがある.

    [1]オームの法則とは.
    [2]オーム氏とはどこの国の人か.
    [3]いつの時代を生きた人か.
    [4]どのような仕事をしていたか.
    [5]どのような顔をしているのか.

 さらに,インターネットから得た情報を,ワープロ,表計算などのソフトウェアと統合的に利用させ,レポート作成に活用させる.その際,著作権等の留意事項についても併せて指導する.

6 まとめ

 今回,オームの法則を題材に,実験・実習を行い,レポートの作成を通じて,コンピュータやインターネットの利用を試みたが,生徒の反応は極めて良好であった.
 実際に行った実験・実習結果のデータを利用することで,ワープロ,表計算,ブラウザなど,さまざまなソフトウェアが手段や道具として活かされたと感じている.
 今後,コンピュータやインターネットが普及する中,指導内容等,マルチメディア活用の方策を,探っていきたいと考えている.

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