情報授業実践記録
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学校紹介CMを作ろう
−15秒で何をどう伝えるか−
甲南高等学校・中学校
吉田 賢史
 
はじめに

 生徒たちにとってビデオ編集は、非常に高い関心と興味を抱かせるようです。そこで、「学校紹介CMをつくろう!」というテーマで授業実践をおこないました。
 ここでは、CMの企画から、教員から施設を利用させてもらうための許可、編集作業など一連の授業展開について紹介します。生徒の人数は、40名で、使用した機材やソフトウェア等は以下の通りです。
        ・ビデオカメラ 5台
        ・iMac
        ・MS Word 97 for Macintosh
        ・iMovie Ver.1.0
 
授業の流れ

表1 授業の流れ
授業内容 備考
1
1班8名程度に分ける
カメラの準備台数による
学校の良いところ・アピールしたいところは何?
A4白紙を班に配布
5分程度のブレスト
出てきた項目をカテゴリに分ける
5分程度
班ごとに発表(「学校の良さ」の共有)
10分程度
学校の特徴を1つに絞る
5分程度のブレスト
班ごとに発表
5分程度
キャッチコピーを考える
次回までの課題
2
キャッチコピーの発表
5分程度

絵コンテを考える(鉛筆書き)

20分程度
撮影場所の確認
5分程度
施設利用許可願いの作成
雛形は用意しない
3 施設利用許可願いの作成
許可願いができた班から許可をもらって撮影開始
ビデオ撮影
4 ビデオ撮影
15秒CMだからとりすぎに注意
ビデオキャプチャ
5 ビデオキャプチャ
In点-Out点を決め、効率よくキャプチャ
編集作業
6 編集作業
進んでいる班と遅れている班の調整が必要。
進んでいる班は、伝えたかった内容が伝わるように制作できたか検討
修正作業
7 ビデオに記録
グループ内評価
8 CM上映会
他班のCMを評価。
CM評価記入
 
  1.  ビデオカメラの台数にもよりますが、1班の人数は4〜5名程度が適当と思われます。時間を区切ってテンポ良く進めます。
      また、ブレーンストーミングに関する注意も確認しておく方がよいでしょう。
  2.  
  3.  キャッチコピーが、印象的に伝わるためには、どのような流れとシチュエーションが必要か、グループ討議をさせます。
     グループ討議を重ねながら絵コンテを完成させます。
     絵コンテが完成すれば、撮影場所として使用する施設を管理する教員に撮影許可をもらうための「施設利用許可願い」を作成します。許可願いの雛形は用意せず、文面も生徒自身に考えさせます。ホームルームなどで配られるプリントなどを注意深く観ておくように伝えます。
     ワープロは使えても実践的な文章が書けない生徒に、書式や文体を意識させる良いチャンスとなりました。
     
  4.  
  5.  15秒のCMであることを再度伝え、撮影しすぎに注意させます。これは、編集時の労力の軽減と、キャプチャの時間、ファイル容量の節約につながります。
     また、編集時にフェードなどの画面切り替え効果を使う場合には、前後3秒ほどの余白撮りをするように注意します。そうしないと、使いたいシーンがフェードなどの効果で消えてしまうからです。ビデオ編集を経験していない生徒は、余白撮りを意識せず撮る傾向があるため、編集時に困ることが多々あります。
     
  6.  
  7.  iMovieを使って、使用する箇所のビデオ映像をコンピュータに取り込みます。3. の項目でも注意したように、余白撮りの部分も取り込むように注意します。
     
  8.  
  9.  iMovieを使って、編集作業を行います。画面切り替え効果やキャプションの挿入、音楽の同期などをおこないます。今回の場合、音楽の使用について、JASRACに問い合わせる必要がありませんが、問い合わせステップを見せて、なぜ許諾申請が不要かを意識させることが大切です。
     今回のように、公開あるいは放映せず授業内だけで音楽を使用する場合は、許諾申請の必要はありませが、卒業アルバムとしてのビデオ制作を授業に取り入れたときは、許諾申請が必要です。参考までに、許諾申請のおおよその問い合わせステップを紹介しておきます。
            ・ JASRACにて使用曲を作品データベースで検索します
            ・ 各レコード会社あるいは各権利者に以下の項目を伝え許可をもらいます。
                ・ 使用曲
                ・ 使用時間
                ・ 使用目的
            ・ JASRACに申し込み(webからも可)し、許諾番号・許諾証紙を交付してもらいます。

  10.  
  11.  早く進む班と遅い班の調整の時間が必要になります。早く完成した班は、完成度を高めるための時間となります。
     
  12.  できあがったCMをクラス内でお互い見せ合い、感想をもとに、更に完成度を高め、ビデオテープに記録し、CMの完成とします。

  13.  他クラスのビデオも含め、CM鑑賞会を開き、生徒に評価を記入させます。    
 
評価について

 評価の観点は、以下のようなものです。
企画段階でのグループワークの状況については、
        ・ ブレーンストーミングができているか
        ・ 作業の役割分担ができているか
依頼文書の作成においては、
        ・ マージンなどの書式設定は適切か
        ・ 右寄せ、左寄せ、インデントなどは適切に使えているか
依頼文の内容では、
        ・ 何のために施設を利用したいか
        ・ どのように使うのか
        ・ いつ使用するのか
CMの内容については、
        ・ キャッチコピーは何か(5段階評価)
        ・ 学校のイメージが伝わっているか(5段階評価)
        ・ 印象に残るシーンがあったか(5段階評価)
        ・ 時間は守られているか
        ・ 制作者が伝えたかったことは一言でいうと何か(記述)
です。CMの内容についての評価に関しては、教員だけでなく、上映会で生徒個々に他班のCM作品ごとに記入させます。
  それぞれの評価をCM作成班に戻し、イメージが正しく伝わったかどうか自己評価させ、良かった点と反省点について議論させ、自己評価させます。
  最後に、世話になった教員にお礼とともに各班の作品CMテープを届けます。
 
CMサンプル

 実際のCM映像をいくつか紹介します。

 

(注)著作権保護のため、音声は削除しております。

 
おわりに

 生徒たちが一番嫌がっていたことは、「施設利用許可願い」の作成でした。多くの生徒は、依頼の文章が書けませんし、文章ができあがっても書式設定やインデントの設定などができず、空白文字を使って調節しようとします。 ワープロを実際に使う場面をいろいろな場所で作らなければいけないと痛感しました。
  PCの操作に関しては、教員が事細かく使用方法を指導しなくても、iMovieの操作方法など試行錯誤を繰り返しいろいろな操作方法を見つけながら進めていました。また、班内で操作方法についてわからないことなどがあれば他の班の生徒と協力し合い、教え合ってすすめていました。
  教員の関わった場面としては、 「施設利用許可願い」の作成だけといってよいかもしれません。これからは、生徒たちに色々操作させて、使い方を自ら発見し生徒同士でその技術を共有する授業展開ができるよう教案を練らなければいけないと再認識しました。
  発見と知識(情報)の共有から生まれる学びを大切にしたいと考えています。

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