情報授業実践記録
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レポート作成を通した
プレゼンテーション授業実践
−修学旅行での自主研修報告会−

大分県立日田高等学校
畑野新司

 
はじめに

 本校は,生徒の大多数が進学を目標にする普通科進学校です。なかでも総合的な学習の時間は「アドバイザリー・レクチャーズ」と称し,進路学習を中心に企画・運営されています。特に,2年次の前期は学部・学科研究,後期は職業研究を柱に据えて全教員が生徒に関わって指導を行っています。また,職業研究に関しては,修学旅行での企業研修を通して,日頃経験することのできない体験を積んでいます。しかしながら,これまではそれらの経験を他者と共有する場面が少なく,調べることが中心でした。そのため今年度は,発表までを情報の指導計画に取り入れました。今回は教科「情報」の授業の中での,報告書・発表資料の作成,発表,評価を取り入れた授業を紹介したいと思います。

 
授業展開

 本校では,「情報C」を2年次に2単位履修しています。昨年までは,座学(教科書)は各教室で行い,実習はコンピュータ室で行うという形態をとっていましたが,年間を通してパスワードを忘れたり,機器の操作に手間取ることが多かったりしたので今年度は思い切ってすべてをコンピュータ室で行うことにしました。また,今年度は,「タイピング力」の育成も目標とした年間計画を作成し,授業を行いました。以下に今年度の主な特徴を記します。

授業は全てコンピュータ室で行う
授業の開始15分はタイピング練習を行う(その時間の授業は約35分)
授業の内容は生徒のモニターに投影する
実習は,「Word」「Excel」「PowerPoint」とする
※ 特に,後期の後半は次のような計画にしています。
「Word」での報告書作成 ……3時間(12月の評価),座学
「PowerPoint」での報告書作成 ……3時間(1月の評価),座学
各クラスでの発表 ……3時間(2月の評価),座学
 
詳細

(ア) 1週間で報告書 [1] の資料を完成させる。(課題)
その場で考えさせると授業が進まないので,事前に書かせてくる。この時点で「総合的な学習の時間」を使って訪問企業等が決定済み。
(イ) 実習の1時間目……「Word」での報告書作成 

報告書 [1] を完成させる。
・郵便番号はインターネットで検索させる
・企業のWebページのURLはドメイン名までにする
・選択理由,用意した質問は必ず入力する
・時間が余ったら,企業のWebページで事前学習する
・ヘッダーに出席番号と氏名を入力し印刷する

(ウ) 実習の2時間目……「Word」での報告書作成
生徒は,修学旅行で調査した内容を報告書 [2] に入力する。

・質問の回答,感想,次年度の改善点などを入力する
・ヘッダーに出席番号と氏名を入力し印刷する

その場で考えるためなかなか進まないので,いったん,印刷させ残りは冬休みの課題とする。(手書き)

提出した作品の裏に「PowerPoint」による資料の例を印刷して生徒に返却する。

(エ) 実習の3時間目……「Word」での報告書作成 
生徒は,修学旅行で調査した内容を報告書 [2] に入力する。
・完成した生徒から印刷し,提出する
【12月】
(オ) 実習の4時間目……「PowerPoint」での報告書作成

起動方法と新しいスライドの追加の方法だけを教える。
・1枚目はタイトル
・2枚目は企業の情報や選択の理由
・3枚目は事前に用意した質問や事前学習の内容

(カ) 実習の5時間目……「PowerPoint」での報告書作成

前回の続きを作成させる。
・4枚目以降は質問に関する回答や見学場所(目安は3枚)
・感想や改善点を箇条書きで整理する
・画像を挿入する

報告書 [1],報告書 [2] を参考に使うように指示する。

(キ) 実習の6時間目……「PowerPoint」での報告書作成
・全部で6枚〜9枚のスライドを作成する
・フッターに出席番号と氏名を入力し,9枚のスライドを1ページに集約印刷提出した作品の裏に発表の際の注意点を印刷して生徒に返却する
【1月】
(ク) 実習の7〜9時間目
(この3時間だけは,タイピング練習を中止し,50分の発表)

・生徒の発表時間は2分間とし,評価時間1分とする
・1時間の発表者の目安は14人

【評価について】
・報告書 [1] の提出
(チェックする内容:郵便番号/URL/選択理由/質問/ヘッター)
・報告書 [2] の提出
(チェックする内容:質問への回答/ヘッター)
・発表資料の提出
(チェックする内容:スライドの枚数/感想の内容)

 
評価について

 本校は,私一人で教科を担当しているため一人ひとりの作品を評価することが大変である。そのため,事前に何を評価するのかを生徒に伝えている。また,それ以上の内容に関しては,+αで評価を行っている。
 今回は,一人ひとりの発表の姿勢やスライド内容に関して重点的に評価を行った。また,生徒に対しても他者を評価することで,良い部分を見つけることができていた。生徒による評価では,大きな声が出ている生徒の評価が高かった。
 今年度は,全員に対して一人2分,評価時間を1分としたためかなりの時間がかかった。また,同じクラス内で同一企業の発表が多かったため多少飽きる生徒が出てきた。
 
終わりに

 全体会では計10グループに発表をお願いした。各クラスで,代表を決め短時間であるが,班毎にクラス発表での反省点やアドバイスをもとに改善がみられていた。私自身初めての経験ではあったが,生徒のやる気に助けられ無事にクラス発表・全体発表ができた。この一連の取り組みは次年度以降も続けていきたい。なお,クラス内で同じ発表を聞くことは意義があると思うが,何らかの改善も必要ではないだろか。