情報授業実践記録 |
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説得力ある作品づくり −自分中心から相手を意識した作品に向けて− |
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兵庫県立太子高等学校 木村恭子 |
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生徒の状況と期待する力
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毎年、授業の初めにアンケートを実施し、生徒の情報に関する意識や操作レベルなどを確認しています。家庭に自分用のコンピュータを持っている、もしくは自由に使えるコンピュータがある割合が、少しずつですが増加してきています。それに伴い、生徒のコンピュータに対する苦手意識は、年々減ってきているように感じます。 小学校や中学校での経験や家庭環境の充実により、文章入力やマウス操作などのコンピュータリテラシーは上達しています。その一方で、必要な情報を選び出す・相手に伝わるようにまとめる・発表する能力はまだ上達したとは言いにくい状況です。 「マウスが使える」「キー入力ができる」「提示した通りに作ることができる」だけではなく、自ら考え、情報収集し、相手を説得できる作品が作れる能力を、この情報Cの授業の中で身につけてほしいと考えています。 |
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本校の授業内容
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本校では、昨年まで情報Aを選択していました。最近の生徒を取り巻く環境、求められる能力などから、いずれは情報Cへ切り替える必要があると考えていました。今年度より、総合学科になったことを機に情報Cへと選択を変更しました。 そこで年間を通しての授業実践報告がまだ難しいため、今回は年間計画のうち前期テーマに取り上げている「プレゼンテーション活動」について授業実践を紹介します。 プレゼンテーションを行うにあたり、まず生徒たちに「相手を意識する」ことの大切さを話しています。生徒たちは、自分が言いたいことを、自分が好きなように書くことはできます。しかし、携帯電話のメールの文章にも表れているように、受け手側には非常に読みにくい文字や色の使用、説明不足で印象が悪いものが多くあります。 そのため、授業では「誰に伝えるのか」「内容のポイントはなにか」「効果的に伝える手段の選択」について検討する時間を多くとり、作成時間は全体の授業時間数の中でも比較的短く設定しています。 毎年、最初の学習はクラスや学年全体で共通のテーマのもとで取り組んでいます。これは、同じテーマで作成することで、テーマをとらえる視点や表現方法などをお互い比較し見直すことができるようにするためです。 また、テーマによっては作品を一つにまとめています。これらは、コンピュータ室の共有フォルダに残し、その後の入学生たちが参考にできるようにしています。単に個人提出作品とするのではなく、共有データとして残すことを生徒に伝えると、調べたことをまとめる時に、こちらの想像以上に著作権やモラルを意識して取り組む姿勢が見られます。 |
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「誰に伝えるか」
「内容のポイント」 「効果的に伝える手段の選択」 の学習 |
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まずは、与えられたテーマからたくさんのアイディアを出してもらうようにしています。アイディアを出すためには、KJ法やブレーンストーミングを活用し、自分たちがポイントにする内容をまとめてもらいます。そして、そこで出たアイディアをもとに、相手を意識したまとめ方をするためにはどのような工夫が必要か考えるように指導しています。 授業を進めていく中で生徒たちは、「プレゼン=プレゼンテーションソフトの活用」と思いがちです。たしかに、ソフトの使い方を身につけることも大切なことかもしれません。しかし、伝えたいことが本当にその方法でよいのか判断できる力がなければなりません。適切なツールを選択する能力がなければ、すばらしい内容も台無しになってしまいます。 プレゼンテーションの授業を展開するにあたって、「レポート」「ソフト活用」「web作成」・・・と伝達手段を決めて実施しています。いくつかの方法を経験する中でそれぞれの特性を知り、最終的に自由テーマで発表を行うときに効果的な伝達手段を自ら選択できる力が身につくように進めています。同じテーマ、同じ伝達手段であっても、最初にしっかりアイディアを出すようにすれば、発表者らしさがあふれた作品に仕上がります。 何度か発表を繰り返すことで、徐々に人前で発表することへの抵抗も減ってくるようです。さらに、他の発表を見ることでより良い伝達方法を吸収していきます。経験を積み、たくさんのプレゼンテーションを見ることで、互いに刺激しあい、学び、生徒自身でどんどん発想豊かな授業へと発展させてくれています。 |
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おわりに
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生徒をとりまく情報環境は、年々進歩し複雑になってきています。また、コンピュータへの苦手意識は減っていても操作能力の差は大きくあります。そのような状況では、授業を展開するにあたって、すべてを教師側で教えていくことはとても困難なことです。そのため、生徒自身がいろいろと操作する中で新たに発見すること、お互いに協力し、教えあうことがとても大切になってきます。 現在の生徒はまだ実践していませんが、授業に慣れた頃から、コンピュータの操作をする時には、早く出来た生徒を“プチ先生”として任命し、操作が分からない生徒を教えるために立ち歩くことを許可しています。“プチ先生”も最初は、自分がやったほうが早いといってマウスやキーボードを取り上げる場面もありました。しかし、何度か“プチ先生”を経験するうちに、「自分が分かるからといって相手も分かるとは限らない」「方法を見せるだけでは、何度も同じ質問をされてしまう」「相手の思いを無視して、自分が良いと思った方法を押し付けてしまうと、次は質問してもらえない」など、いろいろなことを学んできます。また、操作が分からない生徒も、誰でも良いから教えてもらうのではなく、次第に教え方の上手い生徒を選ぶようになってきます。教師から教わるだけでなく、このような経験を通して伝え方の方法を身につけ、主体的に授業に関わることで、ここでの学びが次の学習に効果的に表れていきます。 情報の授業を通し、改めて生徒がつくる授業の大切さを感じるとともに、これからも生徒同士が高めあう授業展開ができるように計画を立てる必要性を感じました。 資料:共有データ作品「情報モラル」「進路」 |