情報授業実践記録
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情報教育として必要な要素
−実学としての情報を目指して−
(東京)成城高等学校
春日邦夫
 
実状に対応した情報教育を

 本校では、情報科は情報A(教科書「啓林館 高等学校 情報A」)を開設し、授業を展開しています。年間の授業計画は、一学期に情報総論として、コンピュータの基礎知識から情報化社会における情報の役割などを、座学と実習を6対4の割合で行い、二学期には、各論としてネットワークとデータベースについて、その仕組みと実際の利用環境などを学習します。三学期は情報倫理、アルゴリズムを扱い、Wordによる文書作成、Excelによる表計算、PowerPointによる自己紹介等のプレゼンテーションを織り交ぜながら実施しています。全体を通して見てみると、「情報A」に収まりきらない内容を展開していることになると思います。例えば、データベースなどは情報Aの教科書では語句が出てくるだけ・・・といった具合になりますが、実際は、教科書で扱っていない内容も指導しています。
 正直、教科書・サブノートに沿って授業を進めていけば情報の授業は教員にとって簡単だと思います。しかし、私見ではありますが、教科書の中身だけではIT環境の移り変わりに対応できず、生徒たちにとって「実社会では役に立たない」ものになると思われるのです。大雑把な表現ではありますが、昨今のIT環境は、複数に張り巡らされたネットワークのそれぞれの末端に様々なデータベースが乱立し、それらを運用する多彩なアプリケーションが日進月歩で入れ替わってゆく・・・まずはこのイメージを生徒に伝えてゆかなければいけないと考えるのです。高校で情報を学んだ生徒が、大学生になり、社会に出て、前述した環境でそれぞれの職務についてゆくことを考えれば、情報教育は必須のテーマになってくるのではないでしょうか。
 
本校の授業内容

 では、具体的に授業の内容をいくつか簡単に紹介させていただきます。
 まず授業そのものについてですが、全ての授業を、コンピュータ教室で行います。座学には自前のPowerPointで作成した「板書」をスクリーンに表示し、ノートを取らせながら授業を行っています。加えて、最初の授業で全員分のユーザーIDと仮パスワードを配布します。一年間、生徒個人で運用させるのですが、毎時間コンピュータをなにかしら使用させることによって、一学期の間にほぼ全員が自分のIDとパスワードを正しく運用できるようになります。続いて、コンピュータの基礎知識として、ハードウェアとソフトウェアについて、BIOS・OS・アプリケーションについて、ディジタルとアナログについて、と実習を交えながら進めていきます。
 一学期はここまでで終了してしまいますが、生徒たちは今後、授業を通して利用者としても、開発者としても必要な根本的な知識を習得するに至るのですが、驚くのは、ほとんどの生徒がこの一学期の学習内容をはじめて学ぶということです。家庭にコンピュータが普及し、小中学校にもコンピュータが導入されているにも関わらず、実状は、インターネットで閲覧したり、ゲームとして使用する程度の生徒が、大多数を占めるのです。情報科の教員として赴任した当初、コンピュータの普及状況を考え、もう少し高いレベルでの情報教育を想定していたのですが、初年度は下方修正で大変でした。
 二学期は、ネットワークとデータベースについて、その仕組みと実際の利用事例を学び、実技として、ネットワークを利用したディバイスとの通信や、身近ななんでもデータベース作成などを行います。また、ネットワークの授業では、セキュリティについても扱い、情報倫理まで絡めた内容で授業を展開しています。
 三学期には、情報倫理とアルゴリズムを扱うのですが、特に情報倫理では、権利義務に関して、ファイル共有ソフトによる社会問題を大きく取り上げ、被害者にも加害者にもならないよう注意を促しています。また、アルゴリズムでは、座学の後、PowerPointを利用したフローチャート作成を実習で行っています。

 
終わりに

 以上、概略ではありますが本校での情報教育を紹介させていただきましたが、情報の大きなテーマは、「実学」であると思っています。生徒は、多かれ少なかれコンピュータに囲まれた環境で学び、仕事をしてゆくことになるのは間違いないので、今後も「実学」をイメージして情報の授業を展開してゆきたいと思います。