情報授業実践記録 |
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相互評価による同一課題の連続評価 −評価結果をフィードバックさせることによる成果物の変化について− |
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埼玉県立越ヶ谷高等学校 中島 聡 |
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はじめに
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Webページやプレンゼンテーションのような不定形な成果物をどのように評価していますか? また、授業を行う前に存在する生徒のスキル差をどのように考慮していますか? この2つの質問の回答として、本校では2年間にわたり生徒間の相互評価と同一課題の連続評価を行ってきました。その内容と結果をかいつまんで報告いたします。なお、ここで報告させていただきます内容は、埼玉県高等学校情報教育研究会会誌にて発表済みのものです。 |
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ソフトウェア開発と実装
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生徒間で相互評価を行うときの厄介なことの一つに、集計処理があります。紙などのアナログメディアを利用した場合、作業量が評価者数と評価項目数の積に比例して増加して行きますので、自ずと量的な限界が出てきてしまいます。また、電子メールやファイルなどのデジタルメディアを利用したとしても、書式やファイル名などに対する指導が必要になるでしょう。これを生徒が直接データベースに評価を簡単に書き込めるようにすれば、問題は回避できます。そこでまず、相互評価用のソフトウェアの開発を行いました。 本校では、生徒のコンピュータ環境をオープンソースとフリーウェアで構成しています。OS に Linux、ウインドウシステムに XFree86、デスクトップ環境に KDE、オフィスソフトに OpenOffice.org、認証には OpenLDAP と Linux-PAM、ファイル共有に NFS などという具合です。この環境下で開発効率を最優先に、データベースに PostgreSQL、アプリケーションサーバに Apache と PHP、フロントエンドには Webブラウザを使用することにしました。実際に実装として行ったことはデータベースの設計と設定およびPHPによるプログラミングということになります。評価入力以外にも、集計や結果の閲覧、評価項目の設定を行う管理用プログラムなども必要に応じて作成し続け、現時点で30本弱ほどの規模になっています。 なお、各プログラムは認証を必要とし、評価入力では評価者を同時に登録するように作成しました。これを不正や不当な評価を入力することに対する抑止力としています。また、個々の生徒の評価結果は、被評価者の生徒と教員だけが閲覧できるようにしてあります。 |
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運用
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内容は「○○の紹介」で、埼玉県立福岡高等学校の鈴木成先生の授業から拝借しました(啓林館「情報教育」メールの第65〜67号を参照)。作成に割り当てた時間数や規模、評価項目なども鈴木先生の授業を参考にしてあります。オリジナルの運用に、1回目の相互評価、再作成、2回目の相互評価が追加され、レポート提出が削られています。追加部分に充てた時間はそれぞれ約3時間(65分授業)で、全体としてオリジナルの倍強の時間数となっています。 相互評価は講座単位で行い、一人の生徒が評価しなくてはならない作品は約39(自身の作品は評価しないので、講座人数から1を引いた数)となります。評価項目数は16〜18でほとんどが選択肢ですが、文章によるものも3つほどあります。教員も同じシステムで評価を行います。生徒の評価と教員の評価は同等として扱っていますので、教員の評価のウェイトは約2.5%ということになります。 1回目の評価が終了した後、生徒は自身の作品に対する評価の内容を確認します。評価結果を考慮した上で次の評価で高い結果を得られるように作品を修正します。ここで他者の評価がフィードバックされ、生徒の情報交換の能力も試されることとなります。 成績は、各評価項目別の平均値を求め、この値の偏差値を項目に対する素点としています。最終的な評価は、この偏差値の平均値を利用しています。成績は講座中の相対的なものなので、講座間に有意なばらつきがある場合は補正処理をする必要があります。 |
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結果
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いろいろと判明したことがあるのですが、ここではタイトルである連続評価の効果について報告します。家庭のインフラや授業を受ける前にスキルの差となるような事項についてアンケートを実施しました。その結果から極めて有利と思われるグループ(個人でコンピュータを所有、インターネットに自由接続可など)と不利と思われるグループ(高校以前にワードプロセッサまでの指導を受けた、またはコンピュータの授業を一切受けていないなど)を抽出し、個々の生徒の評価の推移を示したものが次のグラフです。
グラフから有利グループでは評価が次第にバラバラになって行くのが分かります。グループの平均値と標準偏差を調べてみると、有利グループは(53.81, 3.82)→(50.30, 9.77)→(53.50, 9.14),不利グループは(44.30,12.24)→(50.16,10.22)→(48.14, 7.92)となっています。2つのグループの標準偏差が近づいて行くことも分かります。このことは連続評価によって、家庭のインフラや授業以前のスキルの差がかなり軽減されつつあることを物語っているように思いますが、いかがでしょうか? |
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おわりに
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ここで報告させていただいたこと以外にも多くのことが分かりました。足りない部分や新たな問題も出てきています。特に、再作成時の生徒の様子を見ていると、修正の方向性を決めるのに点数化されていない「文章による評価」をかなり重視していることが分かりました。そして、文章による伝達に問題を抱えている生徒が相当数存在することも見えてきました。情報伝達の基本である文章表現を合理的に評価する必要性を強く感じています。詳しくは前述の会誌の第1、2号、または下記のURLを参照して下さい。しばらくこの授業形態を大きく変えるつもりはないので、何かに新しく挑戦したり、何かを発見した場合は、何らかの機会を得て報告してゆくつもりです。 |