情報授業実践記録 |
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ストーリー作りに重点を置いた プレゼンテーション実習の実践 −落語から学ぶ情報伝達の方法と情報収集・構造化の大切さ− |
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浜松市立高等学校 矢頭 勇 |
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1.はじめに
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普通教科「情報」が導入されて3年目が過ぎた。私自身も情報Aを担当し2年が経った。私の初年度は実習の制作物そのものを評価するのではなく、制作過程での意欲の変化や理解の過程など、プロセスに注目をした。 (1) そして「自己評価カード」の自由記述を読み取り、実習における成長の過程が分類でき、それが指導と評価の対象となりうる示唆を得た。 (2) しかし、初年度での理解の過程・成長の経過というプロセスの評価の対象は、その多くが生徒の意欲の変化や、スキルの向上の指導と評価に偏っていたように思う。このことは免許講習で普通教科「情報」の免許を取得し、初めて担当した他教科の先生が多く陥ってしまった点と思う。 そこで2年目の今年は、教科「情報」の制作物が情報の表現物であることに注目し、生徒が制作の過程で何をどのように伝えようとしているかを評価する必要があると考えた。例えば、プレゼンテーションでは、ソフトで作ったスライドだけが制作物で評価の対象というわけでなく、発表の内容や発表内容を組み立てる経過も含めて制作物であり、評価の対象であり、指導にも時間をかける必要があると考えた。 今回の報告では、平成17年度のプレゼンテーション実習の授業実践で、問題の発見・明確化、情報の収集と整理・処理・分析、提案といった情報学的な問題解決の方法を発表する前のストーリー作りに盛り込み、制作の過程に重点をおいて指導・評価した実践を紹介する。 |
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2.落語研究会の経験を活かして
プレゼンテーション指導 |
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(1)落語は究極のプレゼンテーション 私は子供の頃からずっと落語が好きである。小学校の頃は、内職をしている母のラジオから流れる寄席中継を聞き、落語家が言葉だけで聴衆をわかせ笑いの渦にしているのを聞き、落語の話芸の魅力に魅かれたものだった。大学で落語研究会に入ってからは、新宿末廣亭など寄席に通い落語に没頭した。卒業後も「蒲郡落語を聴く会」、「掛川寄席」、「圓窓五百噺」などで落語の研究を続けてきた。 落語は、たった一人で座布団の上に座り、言葉としぐさだけで聴衆を注目させ、頭の中に情景を想像させ、笑いと感動を引き起こす。しかし、落語は単にアミューズメントの芸能ではない。落語の成り立ちは、仏教僧侶が釈迦の教えを民衆に伝えるための「説教」がその始まりである。説教はその「芸」と「型」を広げながら、能、歌舞伎、浄瑠璃、講談、落語、浪花節と分散していき、落語はその中のひとつなのである。(3) これは「考えを伝え、聞き手に行動を喚起させる」というプレゼンテーションの定義そのものである。 演者の技法は、間、くりかえし、しぐさ、小道具(扇子と手拭)を巧みに使い分け、落語三百年の蓄積で「芸」の域に達している。(4) 落語家は座布団という制限された空間の中で、選び抜いた一言やしぐさの一つだけで登場人物の性別、年齢だけでなく性格や行動傾向までも表現する。立川藤志楼(高田文夫)は昭和62年5月8日の紀伊国屋ホールでの高座で「死神」という演目に登場する死神の描写を「年のころなら八十でこぼこ、白い毛がぽやぽやっとありまして、ねずみ色の着物の前をはだけると、あばら骨が一本一本浮き出ているようで、わらじを履いて白い杖をついてやせこけていて」という伝統的な表現に続いて「俳優の加藤嘉さんのようなもの」と過去にない大胆な演出を加えた。この言葉ひとつで、会場の聴衆全員が共通の「死神」を想像することができた。 つまりスライドを使わなくても、人間は言葉と身振りだけで受信者に自分の考えを伝達できる方法を持っているのである。落語家は言葉としぐさだけで聴衆を注目させ、補助として扇子と手拭を使う。(上方では見台、小拍子、張扇も使う。)私はプレゼンテーションにおけるスライドは、ちょうど落語における小道具と同じ位置付けと考えている。
(2)明確に構造化されている落語のストーリー
(3)落語の扇子・手拭がプレゼンテーションソフトのスライド |
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3.授業計画
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生徒への課題 「○○」の宣伝プレゼンテーション
<目的>宣伝という行為を通して、自分が注目した対象物の中に、どのような価値(伝える価値のある情報)があるかを見つける。
<内容>自分の身の回りのものについて宣伝する。スライド3枚 20秒〜30秒程度の発表とする。アイデアシートを作成し、それに基づいて作品を制作する。発表は、対象物を使ってみよう、買ってみようと思わせるものにする。
第1回〜第3回 アイデアシートの作成
第4回〜第6回 制作
スライドのデザイン(背景の選択)は導入で指導するため、使用するが、中にデザインの選択に没頭してしまう生徒が出るので、「背景は白で統一」で十分である。
<評価基準>制作に必要な技能を十分に身につけた b:助言を受けながら制作に必要な技能を使うことができる
第7回 グループ内発表 コメントシートの交換 相互評価カードと代表選考
<評価基準>
第8回 代表者によるクラス発表 実習完成自己評価カード <評価基準>a:プレゼンテーションの活動全体をよく理解し、今回の実習が、これからの生活でどのような場面で活用できるかを適切に考えることができる b:今回の実習がこれからの生活でどのような場面で活用できるかを考えることができる。 |
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4.生徒の作品
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生徒の作品の日常生活部門のうち、授業のねらいをよく反映している作品を紹介する。 「提出作品」はこちらから |
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5.反省とこれからの課題
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情報発信ができない生徒が作品制作に進まないのは様々な原因が考えられるので、ここに対応してどの段階で困っているのか(問題の明確化、情報の収集、ストーリー作り、ソフトウェアの使い方、人前で発表するのが苦手、など)をよく理解し適切に支援をしてあげたい。 |
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6.まとめ
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今まで私たちがプレゼンテーションソフトを使って発表をする時、行き当たりばったりで作成しているのが現状であろう。その原因は、私たちが過去にきちんと情報発信のための教育を受けていないからであろう。今後は小学校から情報教育をどのように行うかという研究 (7) が進んでいるため、情報発信としてのプレゼンテーション教育も小学校、中学校そして高等学校の各段階で指導項目を変えて実施いくことが必要だと考える。たとえば高等学校ではストーリーをしっかり立てるという情報の構造化、一枚ごとのスライドに対して項目・内容を明確にするオブジェクト指向、他人の著作物を利用するための心掛けなどの項目が考えられる。 今後は高等学校におけるプレゼンテーション学習にこのような発達段階に応じた項目をどのように盛り込むことができるかを考えていきたいと思う。 Eメール:dai781@b2.mnx.ne.jp 参考資料 |