情報授業実践記録
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アンケート結果から学習成果を考察する
−前任校における「情報C」の取り組みから−
埼玉県立春日部高等学校
加藤友信
 
1.はじめに

 昨年度まで2年間、埼玉県立不動岡高校で情報Cの授業を1年次90分(2単位)で展開してきました。今年度は転勤となり、3年次で2単位の情報Cを行っています。ここに述べることは、昨年度までの授業報告となります。
 
2.『情報』とは、どんな教科?
情報A、情報B、情報Cの違いは?

 普通教科情報のねらいは「『情報活用の実践力』を深化・定着させるとともに『情報の科学的な理解』と『情報社会に参画する態度』を育成すること」となっています。
 それぞれの観点は、次のように説明されています。
  • 情報活用の実践力…課題や目的に応じて情報手段を適切に活用することを含めて、必要な情報を主体的に収集・判断・表現・処理・創造し、受け手の状況などを踏まえて発信・伝達できる能力
  • 情報の科学的な理解…情報活用の基礎となる情報手段の特性の理解と、情報を適切に扱ったり、自らの情報活用を評価・改善するための基礎的な理論や方法の理解
  • 情報社会に参加する態度…社会生活の中で情報や情報技術が果たしている役割や及ぼしている影響を理解し、情報モラルの必要性や情報に対する責任について考え、望ましい情報社会の創造に参画しようとする態度

 すなわち、普通教科「情報」は、特定のアプリケーションの使い方や単にコンピュータの操作方法を教える教科ではなく、上記のねらいを達成するためにコンピュータなどを道具として使いましょうという教科といえます。
 では、情報A、B、C3つの科目の違いは、何かというと、上で述べた3つの目標のどれに主体をおくかという点です。情報Aは情報活用の実践力、情報Bは情報の科学的理解、情報Cは情報社会に参画する態度にそれぞれ焦点をあて、バランスを考えながら教えていくことになります。本校が履修させている情報Cの目標は、「情報Cは,情報の表現方法やコミュニケーションについての学習、実際の調査活動、情報ネットワークの学習から『情報活用の実践力』を高めるとともに、『情報社会に参画する態度』の育成を重視する。これらの活動に関連させて、,情報機器や情報通信ネットワークの仕組みや特性などの『情報の科学的な理解』も併せて育成する。」となっています。
 埼玉県内で昨年度情報Cを実施した学校は、数校で、ほとんどが情報Aであると報告されています。

 
3.【検証】情報Cの成果は?

 上記教科の目標が、1年間を通して、どのくらい生徒に伝えることができたかを知るため、最後の授業でアンケートを実施しました。

 考察:[1] の回答が意外と多かった。これは、情報Cは本来その三分の一程度を実習に充てればよいところを、毎時間情報学習室で講義→実習という授業形態をとったためと考えられる。すなわち、生徒にとっては毎時間コンピュータを触っていたという印象が強く、それが [1] の回答に結びついたものと考えられる。
 次に多い [3] は、まさに情報Cの中心的目標である「情報社会に参画する態度の育成」である。また、同様の目標が [5] インターネット利用方法 [6] メール利用方法にも含まれており、これらの回答数を合計してみると、目標はほぼ達成されたといえる。万一、教える側が普通教科「情報」の教科目標に対して誤った解釈をしているとすれば、回答は [2] 特定のアプリ…あたりが突出してくるであろう。

 さて、次に行ったアンケートは、学習前後での道具としてのコンピュータに対する意識調査です。何のためにコンピュータを使うのかという設問を設け実施した結果、以下のとおりとなりました。

 

考察:学習前、ゲームと答えていた人数が学習後減少し、マルチメディア、情報発信が大きく増加した。本年度の最後に、総合演習として、生徒個人のHP作りおよび4人1組の班による著作権クイズ作成を行ったことが大きく影響したものと考えられる。それまで、コンピュータをゲームやワープロなどのソフトウェアに利用することが多かった生徒が、マルチメディアを盛り込んだ情報発信の道具として利用できることを認識した結果だと思われる。

 次に1年間を通してわかりにくかった内容、わかりやすかった内容についてアンケートをとりました。結果は以下のとおりです。

考察:上記アンケートの [1]〜[8] が今年度の授業(主に講義部分)の具体的な内容である。情報の科学的理解を深めるためにどうしても、コンピュータの特性に触れる必要がある。2進数、16進数はその入り口に位置するものであるが、やはりわかりにくいようである。来年度へ向けて、教材の開発等を考えたい。
 わかりやすかったと回答している [2] メールの利用は、携帯電話の普及に伴い、e-mailを違和感なく利用できる生徒像を浮き彫りにしている。また、同様にわかりやすいと回答している [8] 著作権については、実のところあまり講義は行っていない。前述のとおり、総合演習で著作権クイズを班単位で作成させるために、次のようなプロジェクト学習を行わせた。

■■■著作権クイズ作成プロジェクト■■■
[1] 「著作権の概要」について調べ学習(個人)
[2] [1]を基に著作権クイズ作成(個人、1人5題程度)
[3] 各班(4人)での問題絞込み(グループ討議)
[4] Web作成のための設計案、役割分担(グループ討議)
[5] Web作成、リンク確認(グループ分担作業)

 調べ学習が十分に行われたことによって「わかりやすい」と認識するのであれば、今後どのように十分な調べ学習をさせるのがよいか、また、時間を短縮させるかなどを考えていく必要がある。

 次に示すのは、その他として「授業(学習)環境の満足度」「90分授業の適切度」について聞いたものです。

考察:生徒に与えている学習環境は、おおむね次のとおりである。
[1] 個人アカウント(ログイン時、メール)
[2] ホームディレクトリ(個人のデータ置き場、個人HPの発信元)
[3] 部活、委員会等のデータ共有ディレクトリ
[4] コラボレーション用共有ディレクトリ(クラス毎)
[5] 教材配布ポイント
[6] 教材提示ポイント
[7] 簡易アンケートシステム
 これらの環境は、教職員とほぼ同等である。違いはデスクトップ環境の制限が厳しい点のみである。5年前からコンピュータを責任を持って使わせるというビジョンから現在の環境を構築してきたが、これは、情報の授業においても役に立ち、多くの生徒が満足していることがわかる。
 90分授業についても、毎時間、講義のみに終始しないように、ちょっとした実習を取り入れているので、ちょうどよいと答える生徒が多いのであろう。

 
4.最後に

 試行錯誤の状態で行ってきた普通教科「情報」ですが、アンケート結果を見る限り、前任校においては、ほぼその目標を達成することができました。
 しかしながら、課題も多く残っています。そのひとつが評価に関する問題です。前任校では、提出させたレポート、製作物、ペーパーテスト等を用いて評価しましたが、授業担当者が2人であったので、たとえばレポートの評価を両者の間で合わせるのに苦労しました。また、持ちクラス数が多い場合、評価しなければならないレポート、提出物は非常に多くなり、膨大な時間が必要になります。これらの点については今後、現在の学校で模索していきたいと考えています。
 また、教科「情報」で得たコンピュータリテラシーや情報発信能力は「総合的な学習の時間」や他教科でおおいに活用されるべきです。そのような意味からも、1年次での実施が望ましいと考えています。