情報授業実践記録
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地域密着型の『Webページの作成と
情報発信』の授業実践報告
熊本信愛女学院高等学校
川本眞義
 
1.本校の特徴

 熊本信愛女学院では、カトリック精神を基盤とする教育理念に基づき生徒の一人ひとりが主体性を確立し、それぞれの可能性を最大限に伸ばして自己形成を図ると共に、女性として豊かな心をもって、社会の建設に貢献する人間を育成することを目標にしている。
 また、熊本市中心部に位置し、恵まれた通学環境にある。
 
2.普通教科「情報」について

 本校では,旧課程において普通科普通コース3年生に対し、学校設定科目「情報基礎」を実施していた。授業内容としては,主にワープロソフト・表計算ソフト、HP作成ソフト、プレゼンテーションソフトの四つを習得させることが目標であった。3学期に時間的余裕があれば,WWW・電子メールの活用や情報機器のしくみ等についても触れていた。週2時間,2月からは家庭学習ということで,授業時間数が少ないため,技術を教えることと、問題解決に充当する時間との両立や工夫にずいぶん苦労していた。
 このような経験から、普通教科「情報」の導入は、比較的スムーズに行うことができた。
 今年度は、過去の経験を生かし教材研究を重ね、創意工夫し、地域の皆様にご協力いただいて授業展開を行っている。今回は、その一つとして「Webページの作成と情報発信」の部分を紹介する。
 
3.年間授業計画案

 平成16年度は、下記のような授業展開を予定している。
学期

授業内容
1学期
4月
 オリエンテーション
・コンピュータのしくみ
5月
 ワープロソフトの基礎と応用
・情報活用とコンピュータ
6月
・情報の収集と処理
7月
 表計算ソフトの基礎と応用
2学期 9月
・情報通信ネットワークを活用した情報の収集と発信
10月
・WWWの活用
11月
 HP作成ソフトの基礎と応用
・電子メールの活用
12月
・情報の表し方と取り扱い
 プレゼンテーションソフトの基礎
3学期
1月
 プレゼンテーションソフトの応用
2月
・マルチメディアの活用
3月
・情報化による生活の変化
 
4.「Webページの作成」の授業について

 本校は、図1で示すように、熊本市内の中心街に位置し、近隣に熊本市内でもっとも大きいショッピングモールの並木坂・上通り・下通り商店街がある。
 普通教科「情報」は、情報手段の活用をはかりながら情報を適切に判断・分析するための知識・技能を修得させ、情報社会に主体的に対応する態度を育てること、つまり、情報活用の実践力をつけることを教育目標の一つとしている。
 地域と共存し、地域の発展に何らかの協力ができないかと日頃から模索していた本校では、「情報A」の授業において、生徒が直接社会と接し、情報の発信・収集を学べないかと考えた。そこで、本校の近隣の各商店にご協力いただいて、並木坂・上通りの商店の『Webページ』の作成を始めることにした。


図1.学校周辺

 
5.授業の展開

1.授業の趣旨についてオリエンテーションを行う。
2.商店決定と作成のルール。
・各班、4〜5人で構成すること。
・担当する商店が、原則的に現時点でホームページを立ち上げていないこと。
・他の班とだぶらないように調整すること。
・自分たちで商店と交渉、趣旨を説明して、協力してもらうこと。
・必要な情報は自分たちで収集・判断・表現・処理をすること。
・各班人数以上のページを構成し、1人1ページ以上担当すること。
 オリエンテーションの後は、シート(図2)の説明に従って、各班で、目的・内容を決め、各自の担当・スケジュールを立てる。次に『Webページ』の構成図・絵コンテを作り、それに基づいて調査・取材・素材集めを行い、パソコンで『Webページ』を作成する。作成後は、作動確認・評価・改善を行い完成とする。授業時間数は、8時間を予定。


図2.Webページ作成オリエンテーション・シート

 
6.取材状況およびWebページ作成

 並木坂・上通りだけでも100を超える商店があり、各班苦労して交渉しているようである。本校では、現在「情報A」を1年生(2単位)で6クラス履修している関係で、合計で40近くの班があり、生徒たちの希望する商店が集中するため、各班別々の商店になるよう調整に苦労をしているようだ。商店が決定してからは想像以上に地域の皆様から協力していただき、スムーズに作業が進行していた。取材時には、各班にデジタルカメラを貸し出し、形式にとらわれることなく自分たちの感性で、自由に取材を行っていた。制作時間数が8時間と決まっていたため、放課後等を利用し完成する班もあった。
朝鮮飴・園田屋 (熊本市南坪井町6-1)での取材風景

 
7.生徒作品

 
生徒が作成した朝鮮飴・園田屋(熊本市南坪井町6-1)のWebページ

 
8.授業を終えて

 このレポートを作成している現在でも、授業は並行して進行中であり、その関係で6クラスのうち1クラスしか完成までいたっていない。今回は、すべての商店が協力的でトラブルもなく進んでいる。営業中にもかかわらず「熊本信愛の生徒のためなら」と、ご協力いただいた商店街の方々には深く感謝している。
 普通教科「情報」は、情報活用の実践力・情報の科学的理解・情報社会に参画する態度を教育の目標にしている。教科書・座学の授業だけでは、なかなかそれらの目標に到達できない。そこで、社会の中で情報および情報技術が果たしている役割や影響について、生徒の体験型授業ができないか、本校の地域性を生かすことができないか、できれば、地域の発展に何かしらの貢献ができないか、と数年前から構想してきたものを初めての試みたもので、教師も生徒も一緒になって、良い経験ができたと思う。今後もこのような取り組みを続けていき、できれば、生徒たちの手で作り上げた商店街すべてのお店のWebページをネット上に紹介できればと考えている。