情報授業実践記録
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Web教材「情報機器と情報社会のしくみ」
を利用した授業実践
社会の変化に対応した授業
静岡県立浜松湖南高等学校
新村桂司
 
1.授業への不安

 本校は、情報免許取得者3名が全員数学の教員と言うこともあってか、比較的科学的理解の重みが高い情報Bを1年生の必修科目として設定した。教員が授業をやりやすいということが重視されたわけであるが、当然、授業の中では、情報活用の実践力や社会に参画する態度も育成しなければならない。なかでも、社会に参画する態度に関してはマナーやモラルに加え、変化が激しい高度情報化社会についても教員側である程度、基礎知識を身につけていなければ魅力的な授業は展開できないと考えられた。ただ、正直なところ、私自身が現在の情報社会システムに精通しているとはいえず、この分野(啓林館教科書「情報B」第5章)の授業展開に不安を感じていた。
 そこで、Web上にある「情報機器と情報社会のしくみ素材集」を利用した授業展開を考え実施した。このサイトは、文部科学省が実施した平成13年度「教育用コンテンツ開発事業」により、「情報機器と情報社会のしくみ」開発委員会が制作し、平成14年度「教育用コンテンツ開発・改善・普及に関わる研究事業」 (いずれも主査:永野和男 聖心女子大学教授)として普及活動が行われている。


「情報機器と情報社会のしくみ素材集」のトップページ

 本校では基本的に教科書に沿った授業展開をしており、第5章は3学期に扱ったが、1,2学期に他の分野でこのサイトを利用しており、生徒は何度かこのサイトを見た経験はある。そのときは、どちらかといえば教材の提示が中心であったが、今回は生徒が教材に主体的に取り組んだ。

 
2.教科書の内容に沿ったコンテンツ

 授業ではまず一通り教科書を読んで生徒は内容を知るようにした。とはいっても、文章だけの説明では、生徒にとっては社会のなかでの情報システムがかえって親しみにくい縁遠い存在となってしまう傾向があるので、教科書の挿し絵を解説することによって簡単なイメージをつくっていった。まだこれだけでは、生徒は情報システムの存在は知ることはできても、そのしくみや特徴については充分学んでいないと感じた。ここで、Web教材「情報機器と情報社会のしくみ素材集」を使った授業を展開した。
 生徒は教科書を読んだ後、素材集の4200番台の題材をすべて見た。時間は15分程度とればすべて見ることができる。内容は「アメダスの原理」「コンビニエンスストア」「ETC」等(他多くあり)、偶然にも教科書の挿し絵の内容が多く、動画で説明されていた。これを見るだけで生徒は身近なところに情報システムが存在していることに気づき、そのしくみに見入る生徒も数多くいた。


「情報機器と情報社会のしくみ素材集」
4000 コンピュータとネットワークの応用のページ

 
3.発展的な取り組み

 さらに生徒に、この中から一つ選び2ページ程度にまとめる課題を与えた。最初は、電子文書でまとめることは強制しなかったが、 素材集の画像等を貼り付けるなど電子文書作成のヒントを与えることにより、最終的にはほぼ全員がパソコンを利用して課題を作成した。使用ソフトはワードが多数をしめパワーポイントを使う者も数名いた。
 一方、内容を発展的に進めていきたい生徒には他のWebを検索して調べていくことを奨めた。ここで生徒は有名メーカーや大手取扱業者のサイトにいく場面が多く見られ、生徒のサービスや商品に対するイメージがCMや雑誌等によってつくられていくことを改めて感じた。
 まとめる観点は、「コンピュータの五大機能にあわせ各システムにおいて入力・処理・出力に該当するものを示し、各システムに共通することや特徴的なことを考察する。」とした。だが、途中の段階での作品を見ると、生徒は共通して入力段階での説明を詳しく述べていた。例えば、コンビニエンスストアではレジの機能、宅配便では携帯Pos等、身近なものに興味を持ったようである。ここでは情報システムは、情報が集中管理されていることに特徴を持たせたかったため、一度全員に注意を与えた。生徒はこの注意に敏感に反応し、すぐに改善に応じてくれた。これは、多くの情報システムを見た経験が活きたものだと思われる。

生徒作品
アメダスの原理
配達便の管理

 
4.まとめ

 今回、Web素材集を教材として使うことによって、教員の基礎知識として足りないものを埋めるだけでなく、さらに生徒の発展的学習に大きく結びつく効果を得た。生徒は調べていくうちに専門性が高くなり、やがて自信を持ち、そこで得たものを他の生徒や私たちに積極的に伝えようとした。これは今までの学習であった「ここまで覚えればよい」とは違った「自分にとって納得がいく」自己啓発的な学習ではなかっただろうか。この場合、時間配分や評価が難しくなるが、その苦労以上に生徒の成長を間近で見ることができたのは幸いである。

Eメール;k2ym@d2.dion.ne.jp