楽しい「情報」演習 第3回(5回連載)
〜小さなカードに自己表現〜神奈川県立川崎北高等学校
柴田 功
isao@johoka.net
http://www.johoka.net■ はじめに
ワープロソフトと画像処理ソフトを使ってオリジナル名刺を作成します。名刺カードの小さなスペースにお気に入りのフォントで自分の名前や肩書きを入れ、マウスで描いた似顔絵を挿入すると生徒一人ひとりの個性があふれ出る作品ができあがります。完成後は友だちと名刺交換が始まり、コミュニケーション作りにも役立っているようです。■ DATA
実践科目 1年生必修科目「情報A」(1年1単位・2年1単位)
授業時間 50分授業×2コマ
指導形態 40人クラスに3人のティームティーチング
使用ソフト MS-Word2000、ペイント
具体的な指導案 http://www.johoka.net/meishi.htm■ 導入 〜デザインのテーマを考える〜
まずは名刺で自分をアピールできるように名刺全体をデザインするテーマを考えます。いきなりパソコンに向かって作成しますと偶然に流されたデザインになりがちですので,ラフスケッチを描いてから作業を始めます。例) サッカー部員A君〜イラスト:サッカーボール,背景色:芝生のイメージ(黄緑色)など。テーマが浮かばない生徒には教師が話しかけ、会話をしていくうちに良いアイデアが浮かぶこともよくあります。■ 注意する点 〜著作権・個人情報について〜
この授業では自作のイラストを使うことをテーマにしているので,素材集などは使いません。自分の名刺に自分で描いた絵を貼ることに価値があることを説明し、絵が苦手な生徒にも絵を描くことへの動機付けをします。漫画のキャラクターなどには著作権があり,勝手に使えないことも注意します。
また、完成した名刺を渡す相手を想定し,個人情報(携帯電話番号,メールアドレスなどを)をどこまで名刺に記載するのかを決めておきます。■ 演習1 〜似顔絵を描こう〜
イラストは画像処理ソフトを使ってマウスで描きます。「マウスではうまく描けない。」と嘆く生徒がいますが、イラストは縮小して貼りつけられるので多少のミスは目立たなくなりますし、あらかじめ大きめに描いた方がきれいに仕上がることを説明します。その際、縮小しても線が欠けないようにやや太い線で描きます。イラストが完成したら、キャンバスの余白を取り除いて保存します。■ 演習2 〜ワードでレイアウト〜
ワープロソフトでは名刺カードに合った書式を指定し、個人情報を入力していきます。そこに先ほど作った似顔絵を貼りつけ、1枚分の名刺が完成したら、その1枚をコピーしてA4に10枚にします。その際に、1枚は学校提出用として自分の個人情報を、学校の住所と電話番号に代えたものを作っておきます。■ 発展 〜早く完成した生徒向けに課題を用意〜
コンピュータ操作経験のある生徒は
・名前に「ワードアート」を使う
・背景を塗る。(塗りつぶし,塗りつぶし効果,グラデーション,テクスチャ等)
・画像の中の指定した色を透明化する。
・画像を[透かし]にする。
・10枚の名刺を最大10種類の作品にする。
などの発展課題にチャレンジします。発展課題も終わった生徒には、他の生徒の手助けや、教師がする印刷を手伝ってもらいます。生徒は教師の手伝いを通じてスキル向上につながっていくようで、いつのまにか教師のアシスタントとして「情報」の授業を支える存在に成長していきます。このあたりが「情報」の教科の特色かもしれません。■ 評価 〜
印刷後はミシン目で切り取り1枚は提出し,9枚は自分用になりますが、生徒はできあがった名刺を交換し、さっそくコミュニケーションが始まります。教師はこの瞬間にこの授業の達成感を味わえます。提出した名刺を名刺用のクリアファイルに入れるようにすると未提出者がすぐわかり便利でした。
名刺交換を終えた生徒は自己評価としてE-mailで簡単なコメントを書かせて提出させました。
クラス全員の作品が揃ったら、教室に展示し相互評価をします。相互評価の観点として、(1) 全体のテーマ(統一されたコンセプト)
(2) 造形性(フォント,イラスト,レイアウト,配色)
(3) アイデア(イラスト,コンセプトのアイデア)などの項目をあげ、それぞれの項目で優れた作品を1つ以上選んで簡単なコメントを書かせます。
教師の評価項目としては「情報モラルに対する理解と態度」を追加しました。
生徒の自己評価や相互評価は教師がつける評価に直接反映されないようにしましたが、教師としての視点を磨くいい材料になりました。また、作品作りは苦手であっても他の生徒の作品を評価することが上手い生徒もいて、「評価方法の評価」も必要だと感じます。美術の先生にも評価方法を相談するのもいいと思います。■ おわりに 〜反省とアドバイス〜
専用の名刺カードとカラーレーザプリンターのトナーは高価ですから印刷ミスは最小限にしたいと思っているのですが、紙詰まりが起きたり、印刷マージンの設定がずれてミシン目が作品の上にきてしまったり苦労は絶えません。■ 今後の「楽しい『情報』演習」予定
また、せっかくの力作なのですがそのままでは個人情報が記載されているために展示が出来ないので、展示掲示用に個人情報を学校の住所に代えた作品を1枚提出させる配慮が必要です。第1回は「プレゼンテーションソフトで4コマ漫画を作ろう」
第2回は「プログラミングでスロットマシーンを作ろう」
でした。
今後は
第4回「学校紹介のホームページを作ろう」
第5回「コミュニケーションの方法についてまとめよう」
を予定しております。