学校ホームページによる学校改革
〜「ひがし小ブログ」でつなぐ学校,家庭,地域社会〜
1.本校の主張
家庭にインターネットが普及し,日本中の学校もすべてインターネットにつながるようになった。インターネットは,学校と保護者,そして地域の人を結んでくれる不可欠なインフラともなった。学校は保護者や地域の人に理解と協力を仰ぎながら教育を進めていくわけであるが,そのためにはホームページを介して学校を知ってもらうことが早道である。本校では公式ホームページに加え,民間ブログを活用することにより,教職員や子どもが校内で創り出す情報を,効果的・効率的に発信できるようにする仕組みを研究し,家庭や地域とつながり,地域ぐるみで子どもたちを育てる学校づくりを積極的に進めている。
今日,玄関で出会った母です。早速,そのことがホームページに書いてあって,とても身近に感じて嬉しく思いました!ホームページが,先生,親,子どものより強いつながり(信頼関係)のひとつになれればいいですね。これからも,楽しみに見させてもらいますね。 |
これは本校の公式ホームページとブログによる情報提供をスタートさせた初日,2006年6月1日に届いたある母親からのメールである。新しい情報提供の取り組みを待ち望んでいた保護者の熱い思いが伝わってくる。
こんにちは,初めてメールします。このようなホームページ,いいと思います。大掛かりなものを作っても,結局更新できないまんまなので。ブログ形式もリアルタイムに様子が知れていいですよね。校長先生自らも更新されているというのも新鮮だし。 |
これは,北海道内のある教師から届いたメールである。ホームページの更新が進まない現状を指摘しながら,新しい取り組みへの期待感がにじみ出ているように感じられる。これら二つのメールで届けられたメッセージこそ,本校の目指す学校ホームページ・ブログを運用する本質である。また,教育の今日的な課題として開かれた学校づくりを進めるためには,学校の教育活動の営みを積極的に発信することが求められており,それらを通して家庭や地域への説明責任を果たすという重要な要素も存在する。さらに,特定の教職員しかかかわれないという特殊性・閉鎖性から脱し,多くのスタッフが積極的・計画的にかかわっていく組織力も重要な要素である。そこで学校の教育活動全般について紹 介する公式ホームページに加え,毎日の変化する教育の営みを適時適切に発信できるブログとの併用が有効であると捉えている。
<本校の情報発信のスタイル> |
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(併 用) |
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(多様な掲載記事) |
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<定期的に更新> |
<毎日更新> |
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2.取り組みの実際
本校の一日は,ブログによる投稿計画から始まる。web担当者が教職員に呼びかけ,学年や学級,担当業務などにかかわる投稿希望を募り,その日のタイムリーな記事をカテゴリーに応じて投稿出来る環境を整えるのである。地域や保護者に伝えたい活動や子どもたちの様子など,各教師は記事にする内容と質を構想する。それらを通して教師同士の情報交換と豊かなコミュニケーションが広がる手ごたえを感じている。
【改革のポイントT】 |
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投稿する記事を カテゴリーにより分類して,記事の作成・投稿作業を進める。読者は興味関心のある記事をカテゴリーにより閲覧したり,過去に配信された記事をまとめて閲覧することができる。このことから,読者の主体性と選択性を生かした閲覧システムを構築することができる。本校では次の7つのカテゴリーを設定している。 |
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お知らせ 〜行事開催の案内や不審者情報など,緊急性のある内容を知らせる。 |
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授業 〜日々の授業や子どもの様子を伝える。 |
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ビオトープ 〜原野の再生を目指すビオトープの変化の様子を写真で知らせる。 |
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コラム 〜日常の子どもの姿や学校の様子を写真とともに知らせる。 |
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PTA・地域 〜PTA・地域の様子を知らせる。 |
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自然教室・修学旅行 〜5年生の自然体験活動・6年生修学旅行の様子をリアルタイムで知らせる。 |
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校長のハッピーアドバイス 〜子育てのヒントやモラルを育てるためのメッセージを伝える。 |
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学校改革の核となる教師自身がホームページの作成や効果的な運用に関心を持ち,積極的にかかわらない限り開かれた情報提供は実現できない。しかし,ホームページビルダーを利用して開設した公式ホームページは,校内のweb担当者の管理の下で更新していかなければならないという制約があり,タイムリーな記事を載せて日々更新していくことは困難である。そのマイナス面を補う方法として民間ブログを併用し,全教職員が参画できる体制を整えたのである。
【改革のポイントII】 |
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タイムリー (簡単な更新で時期を逃さない情報発信), メッセージ (思いを伝える機会と場)の二つのキーワードを念頭に,学校が家庭や地域のより身近な存在となるよう,その意義を全教職員で確かめ,特性を生かして運用する。そのための留意点を4点におさえている。 |
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不審者情報や天候異変など,子どもの安全確保にかかわる情報を迅速に提供すること。 |
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子育てに悩む保護者に対し,教育の専門家からのアドバイスを提供すること。 |
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信頼される学校づくりを進めるために,外部からの評価を公表し,説明責任を果たすこと。 |
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日常の教育活動の新鮮な話題をタイムリーに提供すること。 |
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忙しい毎日の中で簡単に更新ができるブログは大きな魅力である。また,文字情報だけでなく,写真なども発信できることは,情報提供の幅と深みができ,教職員が主体的にかかわろうとする姿勢を確かなものにしてする。一人ひとりの参画意欲とよりよい情報を提供しようとする熱意や,運用方法を学ぼうとする姿勢が「学校力」を高める礎となる。
【改革のポイントIII】 |
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校内に設置した情報推進委員会で検討したガイドラインに基づいて手順を共通化し,記事の内容や写真掲載などを適正に行う。 |
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タイムリーな情報発信 〜日々変化する教育活動の様子を迅速に発信する。 |
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思いを伝えるメッセージ 〜投稿者の思いや願いを添えて発信する。 |
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記録(log)を残す 〜日記風の記事を日々の時系列で発信し,蓄積する。 |
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下書きの作成 〜ガイドラインにより担当者が作成,管理職に報告し精査後に投稿作業を行う。 |
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記事の投稿 〜web担当者が行う。 |
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返信メール 〜外部へは管理職の判断の上で,個別に対応する。 |
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(4) |
情報の適正化を保つためのガイドラインの作成 |
公式ホームページやブログの運用に当たり,児童のプライバシーの保護や 人権への配慮,知的所有権(著作権や肖像権など)の遵守が不可欠である。そのために,「情報取扱ガイドライン」(掲載は略)を作成し,教職員で研修するとともに,保護者へ配付し,理解啓発を図ってきた。この作成に当たっては,全国の学校HPを閲覧し,フリーで利用できるガイドラインサンプルを提供している先進校の資料を参考にした。特に,目的と作成上の順守内容(公開と非公開内容)と責任範囲と外部からの指摘への対応を明確にした。
従来より子どもが学校を離れて行う自然体験学習や修学旅行などの様子は,事後のまとめや通信等で知らせてきたが,新鮮さや臨場感に乏しいことは否めない。そこで,その時々の活動の様子をリアルタイムに発信し,情報を保護者に提供している。送られてくるナマの情報に学校や保護者は感動しなが ら,「安心」というかけがえのない財産を得ているという声も多い。
【改革のポイントIV】 |
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ブログサーバーに登録した携帯電話を利用して現地から実況中継風に情報を送る。 |
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カメラ機能を駆使し,新鮮な写真とメッセージでブログに掲載する。 |
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子育て真っ最中の母親やPTA,地域住民向けに,子育てのヒントやアドバイス,社会生活のルールやマナーなどのモラルを育てるためのメッセージを 「ハッピーアドバイス」として 投稿している。 記事を心待ちにしている読み手が増え,返信メールも届くなど双方向の情報交換の環境ができつつある。
【改革のポイントV】 |
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校長自身が読み手に語りかけ,思いや願いを伝える中で,家庭の教育力を高める工夫をする。 |
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意見の押し付けにならないよう 親しみやすい内容となるように 配慮する。 |
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ペンネームを利用し,発信者との親和感を深める。 |
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(7) |
「いつでも・どこでも・だれでも」をモットーに |
公式ホームページは家庭のパソコン向けに発信し,ブログは家庭のパソコンと携帯電話向けに発信している。特に,PTA会員の100パーセントに近い所有率を有する携帯電話は強力な情報提供の手段ともなる。また,個人の身近なアイテムである携帯電話はいつでも・どこでも・だれでもが閲覧できる長所がある。さらに,親同士が話題を共有したり,親子の共通の話題として家庭内での広がりも期待され,家庭の教育力を高める可能性もある。次は,ブログ更新100号を記念した記事について, ある母親の 携帯電話から送られてきたメールである。学校と家庭との双方向の情報のやり取りの可能性が垣間見られるのである。
「100号達成!すごいですね!毎日,携帯から記事を読んでいます。子どもたちにも読んで聞かせてるんですよ。記事から学校の様子がわかり,校長先生の ハッピーアドバイスでは学ぶことが多いです。継続は力なりです。これからも楽しみにしていますのでがんばってください!!」 |
3. まとめ
2007年6月,ブログ運用1周年に更新数は470回を超え,それを期に,念願のコメントを受け付け,双方向のコミュニケーションを深める取り組みを始めている。新しいスタイルのコミュニケーション手段としてその可能性に期待が高まっている。2年にわたる取り組みの成果を次の視点からまとめ,今後の指針としている。
新しいスタイルによる一連の情報発信を保護者はどのように評価しているのであろうか。ホームページとブログの運用からおよそ2か月を経過した時点で全保護者へのアンケート調査を実施した。その結果,約83%の保護者が ホームページとブログを知っており,その約半数が閲覧したことがあると答え,関心の高さがうかがわれた。また,閲覧頻度は,ほぼ毎日と週2〜3回程度が約3割を占め,時々閲覧するが約6割で,頻度についてはバラつきが見られ,タイムリーな情報発信が十分生かされていない実態が浮き彫りにされた。また,興味のあるカテゴリーについては下のグラフのように,「校長のハッピーアドバイス」が一番多く校長からの直接のメッセージを興味深く見ていることが明らかになった。さらに,「自然教室・修学旅行」のリアルタイムブログは,感動と安心感を得ることができたとの声が多く,高く評価されている。
公式ホームページ及びブログ開設当初は少数であったが,学校通信や啓発資料を発行するたびにアクセス数は伸びている。特に,7月の2日間にわたる自然教室期間中は,延べ28の記事をリアルタイムに投稿していることから,アクセス数も大きな伸びを示している。学校への関心が高いほど,アクセス数も伸び,新鮮な記事を求める保護者の願いがうかがわれる。
回答を寄せた約四分の一の保護者が率直な意見を具体的に記述するなど,感心の高さと今後の期待がうかがわれた。それは次に示す意見に象徴されている。
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ホームページやブログを日々更新されすごいと思います。今までより学校の様子を知ることができるようで嬉しいです。校長先生のアドバイスで考えさせられたり…。これからもいろいろな場面でのエピソードなどのせていただけると嬉しいです。楽しみにしております。 |
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初めてコメントさせていただきます。ピーマン校長先生の温かな文章,心優しいアドバイスは,きっと父母や子どもたちからも大歓迎のことでしょう。さらに素晴らしいのは先生方も積極的に投稿していることです。父母の方々,ブログ上でもぜひ応援してあげてください。 |
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閲覧数の最も高いカテゴリーの「校長のハッピーアドバイス」は,2年間で251回を数え, 読者を確実に増やすとともに 周囲から強い出版要請が湧き上がった。校長として 伝え続けてきたのは,子どもが真に望んでいることは思いやりのある明るい円満な家庭であり,また子どもは大切な家族の一員であり,親もまた子どもと共に成長し家族の絆を深めることを何よりも大切にしてもらいたいということである。そこで,毎日のありきたりの風景の中で,親として,大人として気付いてほしいことをひとつずつ取り上げ,目と耳と心で対話しながら,子育てをしている保護者や地域の人たちにとっての身近なヒントとなってくれることを願い,2007年12月に道新マイブックより出版した。なお,売り上げ金はアフガニスタンの教育振興に寄付することとしている。
4. 終わりに
情報社会がますます広がる中で,新しい文化と技術の象徴とも言える「ブログ」が,今や誰にも認められる市民権を得るまでになった。毎日の小さな積み上げが新しい学校文化を創造するというフロンティアの心で,学校を取り巻く多くの人の心に小さな感動を与え,教育への関心と子育てへの自信の回復と,社会のモラルの形成に少しでも役立つことができればこの上ない幸せであると感じる。そして,インターネットを通した対話の中に,人間味のある温かさや温もりがにじみ出た時,コミュニケーションの新しいかたちが創られると信じている。
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