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子どもを「にんぎょう」にしない
大阪の子どもがこんな詩を書いている。
にんぎょう 1年・男子
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せんせいのそばにいると,
にんぎょうに なってしまう。
うごくにんぎょうに,なってしまう。
ぼく,
はよ いえにかえろ。
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(山際鈴子編「児童詩の世界」くろしお出版より)
「せんせい」は,大抵の場合,子どもが好きで「せんせい」になった。子どもが好きな「せんせい」は,これも大抵の場合,子ども達のために一生懸命働いている。それでも,子どもは,「せんせい」に「にんぎょう」にされることを,きっぱりと拒否しています。
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宮沢賢治の教師像
賢治が教師であったことは広く知られています。花巻農学校時代の教師像を畑山博氏 がまとめた「教師宮沢賢治の仕事」(小学館刊)の中で,次のように伝えています。
賢治は子どもたちが授業を受けるにあたって守るべき3つのルールを話したと言われています。
○ | 先生の話を一生懸命聞いてくれ
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○ | 教科書は開かなくてもいい
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○ | 頭で覚えるのではなく,身体全体で覚えること。そのかわり大事なことは身体に染み込むまで何回でも教えるから。
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大村はまの教師像
国語教室の実践家として知られている大村はま氏が,「教えるということ」(共文社刊)の中で,職業人としての教師像を次のように述べています。
○ | 一生懸命は,人間として当然の姿。
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○ | 優しくて親切は,教師として当然の姿勢。
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○ | 子どもに確実な力をつけ,責任は全部自分がとる。
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○ | 子どもは,常に一人ひとりを見るべきだ。
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○ | 教師は子どもを尊敬することが大切。
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○ | 「子ども好き」だけではだめ。子どもを一人で生きぬく人間に鍛えあげる。
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○ | 教師という職業人としての技術,専門職としての実力を持つ。
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○ | 「教える」ということが,すぐれた技術になっていなければならない。
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○ | 研究することは「先生」の資格。
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このようなプロの教師集団に出会った子ども達は,その教師に魅かれずにはいられないでしょう。「私」を尊敬し,「私」に確実に力をつけてくれ,「私」一人で生きぬく人間に鍛えてくれる。保護者にしても,プロの教師集団で組織された小学校への信頼はきっと大きなものとなるに違いありません。
保護者も子どもと共に幸福に暮らしています。プロの教師は,子どもを一人で生き抜く人間に鍛え上げるのです。
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「照干一隅」に学ぶ
これは,比叡山開祖最澄の言葉です。第253世座主山田恵諦氏の「大愚のすすめ」(大和出版)では,この言葉を「自ら照らす」と説いています。太陽の光を反射させて光る月明かりではなく,小さな光でも,自らを発光体として一隅を照らすのです。
子どもたち一人ひとりが自ら照らし出せる一隅を,一緒に求めていきたいものです。
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「効果のある学校」に学ぶ
アメリカのエドモンズに代表されるエフェクティブ・スクール論を「解放教育・第301号・’94.1月号」(明治図書刊)に,大阪の鍋島祥郎氏が「学力保障の観点から見た学校づくり」という論文の中で紹介しています。
エドモンズのいう「効果のある学校」とは,最低限度の学習到達度に達していない者の割合が人種や階層によって異ならない学校のことです。
エドモンズの導き出した効果のある学校分析から,次の5要素を上げておきたいと思います。
1) | 子どもを束にして見ないで,子ども達一人ひとりを尊敬していく。
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2) | 暴力やいじめをなくし,「にんぎょう」のような子ども達ではなく,「にんげん」らしい生き生きとした子ども達の育成をめざそう。
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3) | 基礎的な学力の習得を,教師が責任をもって成し遂げるよう実践しよう。
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4) | 目標を達成するために,チームとしてスクラムを組んで継続的に努力しよう。
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5) | 私たちの目標と成果をいつも見直し,効果的な具体の手立てを考えていこう。
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