1.はじめに
本校は大阪北部に位置して北に箕面山系をひかえ,周りには野外活動センタ−を含む大きな公園をもち,大阪のベッドタウンとして1970年の万国博覧会前後から開発された街の中にある。街は計画的に開発され,随所に人工的ではあるが緑が残されたきれいな景観をしている。
環境教育では,小学校から中学校にかけてタンポポ調査やツバメ・セミ調査などを行ってきた。
タンポポ調査では,中学校のテニスコートに広範囲のカンサイタンポポのみの群生地帯があり,校区内でもかなりのカンサイタンポポを見ることができ,シロバナタンポポも確認されている。また,ツバメ調査では,最寄りの阪急北千里駅周辺のショッピングセンター内で巣が大量に確認された。さらに,セミ調査では,数多くの種類の鳴き声が確認され,多数の抜け殻が子どもたちの住居の敷地内から発見されている。
このように生活環境としては,人工的とはいえ自然環境に恵まれているが,自分たちの住む地域の環境問題や環境保全等についてはあまり関心がないというのが現状であった。そこで,各教科による環境教育を行うことが望ましいが,組織だって行われていないのが現状である。
このような中で第3学年の選択授業(理科:週1回)で理科の分野に留まらず,「環境教育」と銘打って行った講座でビデオを使った授業を行った。環境教育には関心があるが,どの教科で,どのようにやればいいのかお悩みの先生方には,環境教育入門の方法として参考にしていただければ幸いである。
2.学習内容と学習方法
・環境教育ビデオの視聴及びワークシートによる作業
<例>
第3学年選択授業(週1回1時間:3時間)
ビデオ「未来からの電子メール−環境に国境はない−」(キリンビバレッジ株式会社)
1時限:前半部分の視聴−ワークシートによる作業−
2時限:後半部分の視聴−ワークシートによる作業−
3時限:環境問題に対する自分たちの行動についての討議
3.授業の成果
現代の子どもたちの活字離れがよくいわれているが,確かに中学でも生徒が「本」といえば漫画本であり,小説などは縁遠い存在のように思われる。しかし,ビデオやCDなどには常に接していて手持ちも多く,またレンタルなどで気軽に借りている。手紙・はがきでなく電話がまさに音信の手段である子どもたちにとって,このようにダイレクトに視覚や聴覚に訴える映像や音は,一般の授業よりもインパクトが強いように思われる。
このことは従来からいわれてきたことであるが,このような(映像を介した)スタイルの授業も,要は生徒の取り組む姿勢如何であって常に有効であるとは限らない。生徒がどのような姿勢をもつかは,教師の環境教育に対する関心の大きさによるのではないだろうか。たまたま私が行った授業では,生徒は自らの選択で「環境教育」を採った者が中心で,その点は申し分なかった。また,環境問題への理解,知識の有無の必要性を,今年度の公立校の入試問題を例に取り具体的に説明したのもよかったのかもしれない。ただし,環境問題への関心の必要性は,単なる入試対策に留まらず自分自身,ひいては人類の問題であることを最終的には何とか理解できるようにしたつもりである。
授業の成果としては,ビデオを見ているときも,その後のワークシートによる作業時も集中力が持続したように思われた。
生徒の感想の中にも,
・ | 話を聞いたり写真を見たことがあったが,ビデオで見たのは初めてだった。 |
・ | 実際にビデオに映っていた現場に行ってみたい。 |
・ | 本当にあんなことが自分たちの身の回りにあるのが信じられない。自分でも,確かめてみたい。 |
・ | 授業以来,道を歩いていても今まで見過ごしていた環境のことが気になり,ごみなどに目がいくようになった。 |
など,ある程度の成果が見られる。
4.おわりに
環境教育を行うにあたって,何をどのように子どもたちに提言すればいいかは,教師にとって大変難しい問題である。
各企業が出している環境教育ビデオは多分に企業宣伝の部分もあるが,環境問題への取り組みの統一性と切り口のわかりやすさは簡単明快である。また,多くの企業が無料もしくはそれに近い値段で提供しており,映像的にも優れている。このようなことから,環境に関心はあるが切り口に困っておられる先生方にはまず,最初の一歩として提案したい。そして,その情報の中から次の一歩の方向性も見いだせるのではないだろうか。
5.参考資料
・ | キリンビール株式会社,キリンビバレッジ株式会社
未来からの電子メール−環境に国境はない− |
・ | 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
エネルギー環境教育情報センター
エネルギーの未来−みんなで考えよう・21世紀のエネルギー− |
<環境関連インターネットアドレス>
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