1) |
個人の興味関心に基づくテーマ設定
ア) |
個人研究が「総合」の中心
本校では,あくまで個人の興味・関心にもとづき調査研究を進める個人研究を「総合」の大きな柱とした。自分自身の「調べてみたい」「研究してみたい」という内なる欲求を大切にし,自分自身の力で問題に取り組み解決することにより,個人の「生きる力」を伸ばすことができると考えたからである。
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イ) |
発展的なテーマ設定の工夫
教科学習が1年・2年・3年と進むにつれて内容が発展的になるように,総合学習でも学年が進むにつれテーマや内容が発展的になるよに工夫した。1年生ではフィールドワークなどの実地見聞や実習が行いやすく,身近でテーマ設定もしやすい伊勢原市を中心とした「郷土を知る」を学年のテーマとした。2,3年生は個人が興味・関心のある課題を見つけ,自分自身がやってみたい内容を研究する「自由テーマ」とした。各学年とも,生徒自身の興味・関心を大切にしたテーマ設定になるよう配慮した。
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ウ) |
ウェビング表の活用
個人に合ったテーマをいかに設定するかは,「総合」が成功するかどうか重要なカギを握っている。テーマが決まったらウェビング表を生徒一人ひとりが作成し,テーマの広がりや深まりを確認する。ウェブとは「クモの巣」のことで,ウェビングとはテーマから関連する事項が密接に関連を持ち,しかも広がりがあるかどうかを見る有効な手段である。
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2) |
テーマ追究学習の実践
ア) |
個に応じた指導・支援
「総合」は個人によってテーマが違うため,一人ひとりに応じた指導が必要である。クラス単位で学級担任が指導していたものを,昨年度より少人数クラス,そして今年度より課題別クラスも実施して,個に応じた指導を行いやすくしている。
a) |
少人数クラス <今年度の2年生の例>
7クラスを,1組から出席番号などで機械的に11クラスに分け,生徒一人ひとりに教師の目が届きやすくした。1クラス10人程度減っただけであるが,教師の支援がしやすくなり,子どもたちも落ち着いて取り組めるようになった。
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b) |
テーマ別クラス <今年度の1年生の例>
8クラスの子どもたちから出てきたテーマを,できるだけ同じテーマになるように,また,各クラスの人数にばらつきができるだけ出ないように,教師の方でテーマごとに10クラスに分けた。同じ傾向のテーマなので,担当教師もよりきめ細かい支援ができるようになるだけでなく,受け持つ生徒の人数も少なくなるので,一人ひとりに目が届きやすくなるという2つの効果をねらっている。
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テーマ1 | : | 大山 | (31人) | テーマ2 | : | 歴史・神社・仏閣・城 | (32人) |
テーマ3 | : | 産業 | (31人) | テーマ4 | : | 生物 | (31人) |
テーマ5 | : | 地学など | (27人) | テーマ6 | : | 伝統文化 | (26人) |
テーマ7 | : | 環境 | (32人) | テーマ8 | : | 福祉 | (27人) |
テーマ9 | : | 施設・教育 | (26人) | テーマ10 | : | スポーツその他 | (26人) |
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テーマ1 大山 (抜粋)
氏名 | テーマ名 |
A | 大山豆腐について |
B | 大山の名物 |
C | 大山ごま |
D | 大山の旅館について |
E | 大山街道について |
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イ) |
振り返り用紙の活用
「総合」の時間の最後5分を使い,その日に行った活動・反省・自己評価,次回の予定などを簡単に書きとめる作業を行っている。そうすることによって,生徒が自分の活動状況を反省し,教師が生徒一人ひとりの活動状況を把握することができる。
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ウ) |
研究の経過・成果のファイル
本校では,生徒一人ひとりがクリアファイルを持ち,活動の記録や振り返り用紙などをファイルしている。生徒が自分の活動を振り返り,反省し,学習を深める材料となっている。
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エ) |
フィールドワークの実施
深まりのある研究にするために,現場に足を運んでの実地体験や実験観察を行うフィールドワークを実施している。1年生では1月に,2年生では6月に,3年生では夏休み(任意)に実施している。
実際に自分自身が見聞きして体験している研究成果には説得力がある。発表会でも,そうした発表は聞く生徒も興味を持って聞き,質疑応答も活発に行われた。また,フィールドワークを行う際には,生徒が自分達で計画を立て,訪問先とのアポイントメントも自分たちで取っている。
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オ) |
「総合」の時間割設定および図書室パソコン室の利用
フィールドワークやまとめ・発表の時間を充分確保するために,各学年とも午後に2時間続きの時間を設定した。
本校は,全校生徒800名を越える大規模校のため,全学年同じ時間に「総合」を設定すると,図書室やPC室の利用に重なりが多くなり,生徒一人あたり活用できる資料が非常に少なくなってしまう。そこで,火・木・金の午後の時間に3つの学年を振分りけて「総合」の時間を設定し,各学年が身軽に活動できるようにした。
また,コンピュータの使用希望を朝の学活でとり,午前中のうちに午後の使用時間を割り当てて効率的にコンピュータが使えるように配慮したり,クラスごとにコンピュータの割り当て台数を決めを,各クラスがいつでも5台はコンピュータが使えるようにする工夫も行っている。図書室も,基本的に教師を配置し,希望者がいつでも使えるようにしている。
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3) |
メディア学習の実施
資料の集め方・まとめ方・発表の方法を修得するメディア学習は,「総合」を充実させ,わかりやすく説得力のある発表にするために必要なことである。本校では,3年間に次のようなメディア学習を行う。特に,1年生ではメディア学習に充分な時間をとり,その後の「総合」に活用できるようにしている。
ア) |
資料の集め方では |
・・・・・・ |
学校の図書室の使い方,PC室のインターネットの使い方,市立図書館の利用法,依頼電話のかけ方,取材の仕方
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イ) |
まとめ・発表では |
・・・・・・ |
新聞講習会の実施,個人新聞の作成,キーワードカードによる発表法,OHPによる発表法,PCによる画像処理の方法,プレゼンテーションソフトなどによる発表法,効果的なわかりやすい発表の仕方,発表会の司会進行
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4) |
中間発表会・クラス発表会・全体発表会の実施
発表会の意義は,他の人に研究の成果や価値を知ってもらうこと,自分自身の研究を振り返ったり取り組み状況を再確認できることの2点である。
ア) |
テーマ追究学習を充実させるための中間発表会
中間発表会を行うことによって,子どもたちは,現在の自分の活動状況や今後自分が何をやるべきかを明確にすることができる。また,教師も生徒の活動がよく見えて,教師からのアドバイスも生きたものになる。
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イ) |
お互いに学び高め合うクラス発表会
研究の成果は,一人ひとりがクラスで発表する。少人数クラスや課題別クラスに分かれていた生徒も元のクラスにもどし,さまざまな発表を見る。発表方法は基本的に個人の自由で,メディア学習で学んだ成果を生かせるようにする。
発表方法で多いのは,プリントや画用紙・模造紙によるものであるが,キーワードカードと写真やグラフを組み合わせたり,OHPを使ったり,時間をかけてプレゼンテーションソフトなどに挑戦したりする生徒もいる。
よりよい発表を行おうと,多くの生徒は一所懸命発表の準備を行う。発表は質問を入れて1人5分程度であるが,質問も多く出て活発な発表会が行われた。保護者や地域の方の参観もあった。
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ウ) |
視野を広げる学年全体発表会
学年のすぐれた研究内容・発表方法を見ることによって,一人ひとりの研究によい刺激を与え個人研究の今後の参考にすることができる。
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5) |
相互評価と自己評価
クラス発表会の時,必ず相互評価を行う。相互評価はメッセージカードに書くなどして,発表者本人にかえしいく。そうすることによって,お互いに認め合いやる気を起こすことにつながっていく。
その後,自己評価を行う。各自は他の意見や評価を参考にし,自分の研を客観的に評価していく。さらに,次の「総合」の取り組みに対する意欲へとつなげていく。
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6) |
職場体験学習の実施
2年生では,自分の希望する職場にでかける職場体験学習を実施している。この学習には事前の準備と事後のまとめに時間がかかるが,当日の体験はもちろんのこと事前の準備から訪問先とのアポイント取りまで生徒自身が行うため,生き方を考え,深める学習としてふさわしいものと考える。
平成15年度 職場体験学習実施要項(抜粋)
1. |
目的
(1) |
職場体験を通し,はたらく人の姿に接したり,体験することにより望ましい職業観についての理解を深める。
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(2) |
進路選択の視野を広げることにより,自分の生き方を考え,学習意欲を高る。
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(3) |
体験を通し,職場での協力の大切さを理解し,人の思いやりや正しいマナーとルールなどの大切さを知り,適応能力を養う。
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2. |
日時 平成 15 年 11 月 18 日(火)8:30〜
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3. |
対象 2学年生徒
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4. |
活動範囲 原則として伊勢原市内
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5. |
(以下略) |
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<体験先>
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保育園,老人ホーム,伊勢原駅,警察犬愛犬訓練所,消防署,県警本部,動物保護センター,県立歴史博物館,生命の星・地球博物館,パン屋,洋菓子店,和菓子店,自動車販売店,楽器店,旅館,ラーメン店,スポーツ店,そば屋,米店,美容院,農家,コンビニエンスストア,その他
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7) |
「総合」の評価について
通信票への記述は,各自が努力したところ工夫したところ,身についた力などを個人内評価し,文章で表現する。それにより,生徒のやる気が引き出せると考える。本校では,6つの観点を設定し,その中でも,特に顕著な点を指導要録や通信票に記述している。
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