栃木県小山市立小山第三中学校
1. はじめに
本校の校務分掌は,過去の教育活動の伝統的な積み重ねから,生徒指導,進路指導,学習指導と並び,次いで道徳,特別活動と続いている。奇異に感じられると思うが,これが本校に自然に生まれた特色と言えるかもしれない教育課程の雰囲気である。更に,進路指導は教育活動の本筋にも関わらず,理論は述べられても具体的な係の活動になると極めて動きづらい一面がある。それだけ内容が多く,他との錯綜があるからであろう。学校教育の本道を進路指導と考え,努力している学校として述べてみたい。
2. 進路指導の再確認
(1)
教育活動すべてに渡って進路指導があることの認識
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指導者が正しい進路意識を持つことによって,生徒へのあたり方が違ってくる。これが,生徒自ら「生き方」を模索する支援になるはずである。
自己の「生きがい」を見つけるために,将来の自分の職業を思い描き,自分を成長させようと努力する態度を育てたい。
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90%を越える進学情況の中では,どこの高校を受験し,合格させるかといった出口指導に陥りやすいことに注意する。
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各種学校行事は,感動を基調とした体験と自己発見を意図した計画を立てる。
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進路実現に近づけるために学習指導があり,進路指導・学習指導が可能になるために生徒指導があること,つまり,生徒指導に支えられて学習活動が成立し,出口にとらわれない進路指導が可能になる。(図1参照)
(2)
体験的な学習は,発達段階に応じて意図的に計画し,学習の中で生徒自身が感じたり意義付けたりできるような活動をめざす。
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選択教科の学習や総合的な時間の学習は,体験を通して自己発見が可能な,より直接的な進路指導になる。
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運動会や学校祭は生徒の主体的な行事になるよう指導し,感動をともなった成就感・存在感を得られるようにするために,事前指導と準備を重要視するとともに,事後指導をおろそかにしない。
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校外学習,宿泊学習,修学旅行を各学年に配置し,自己の成長を確認させる。
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1・2学年の段階を考慮した職場体験学習の計画をする。(図2参照)→見学・調べ中心の1年生,体験中心の2年生
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3年生においては,調べ学習後の高校一日体験学習を積極的に体験させる。
図1 進路指導の位置付け
図2 2年生の体験学習
図3 地域の人と語る1年生
3. 進路に関する啓蒙活動の充実と実践に関わる年間計画(図3,表1参照)
表1 進路指導年間計画
※太文字は進路行事です。
4. 進路指導に関する各種計画
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進路指導全体計画
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校内進路指導組織体制
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進路指導年間計画(表1参照)
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全教育活動における進路指導の位置付け(図1参照)
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学習指導と進路指導の関連・各行事・生徒会活動と進路指導
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学級活動における進路指導関連指導
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進路学習3年間の流れ(職業と生き方に関わること,学業生活と進路の選択に関わること)
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校内進路指導研修計画
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進路行事(表1参照)
5. 進路指導を軌道に乗せられた,その要因と考えられる事項
(1)
進路指導主事は地域の人や各学年との渉外事務が多く,そのための熱意と指導力を持った人材を得ることができた。同時に協力体制のとれる職員に恵まれたこと。
(2)
進路指導主事と学年主任の仕事分担の明確化を図ったこと。
(3)
学校教育における進路指導主事の伝統的役割を打破するには,職員の意識改革が重要で,軌道にのるまでには長年かかると考えたこと。
(4)
生徒指導を基盤とした教育活動が,生徒の学習体制に影響したこと。
6. 見直しを試みた進路指導
(1)
進路指導主事の仕事範囲
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進路指導年間計画(表1参照)にあげられた項目すべてにわたって,進路指導主事が原案としての企画・立案に関わり,特に,担当欄の進路指導部とあるところは,進路指導主事が中心となる。
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従来,3年生の入試に関わる事務は,3学年主任がすべてを取り仕切っていたが,主として生徒の指導に関わることを司り,高校との渉外に関わることは進路指導主事が窓口として一本化する。特に,私立高校からの推薦勧誘に関しては,適切な段階から進路指導主事がリードをとる。
(2)
進路行事について
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進路に関する
啓発活動
は,4月当初からスタートする。
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職場体験の
体験先開拓
は,全校体制で4月から動きはじめる。
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3年生保護者(他学年でも希望可)を対象に,5月の時点で高校入試を中心とした
進路指導説明会
を行う。ここで,校長の進路指導方針を述べておく。
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高校説明会とは別に,具体的な専門学科について該当高校の職員に依頼し,より詳しく,1単位時間を使って
学科ガイダンス
を行う。5月に3年生,2月に2年生対象として行い,進路選定に役立てる。
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9月における
私立高校説明会
は,全保護者対象とする。
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1年生は
職場見学
,2年生は
職場体験
,3年生は
高校一日体験学習
を行う。
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1年生はグループ・集団活動訓練の
校外学習
,2年生は集団宿泊訓練の
宿泊学習
,3年生は集大成の意を含んだ
修学旅行
として計画を立てる。
7. 成果と今後の課題
(1)
成果(生徒指導・進路指導・学習指導の三味一体として)
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自分を生かそうとする意識が,部活動への積極的参加となってあらわれ,各種大会でも良い成績を収められるようになり,自分に対する自信を得たようである。
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自分を生かす場として学校行事をとらえ,主体的・積極的に参加するようになった。
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高校選択にあたり,将来の職業観に照らし合わせて考えるようになり,主体的・積極的にあたるようになった。
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高校進学後の努力意識の向上,充実感を口にする卒業生が増えたようである。
(2)
今後の課題
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人事異動による進路指導主事転出後の適任者発掘と体制の維持
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地域からの外部講師の発掘
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体験学習に関わる安全管理と危機管理
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予算措置