東京都中学校 A 教諭 |
第1分野「(2)ア物質のすがた(ア)身の回りの物質とその性質」では,物質についての学習の導入として,様々な物質に触れて親しみをもつことをねらいとする。白い粉の実験(ミステリーパウダー,ホワイトパウダーの実験とも言われる)は多くの学校で未知物質を調べていくという流れで指導されている。指導計画では,生徒はガスバーナーの基本操作を身に付けて,それを実験に活用できるという位置づけである。未知物質について観察・実験で調べていくというのは,生徒には興味をもたせやすい内容である。今回は目標を「4種類の白い粉が何か化学捜査する」としてさらに生徒の関心をひくように工夫した。
既習事項を生かし,班での話し合いを通して調べる方法について考え,実際に実験を行う。さらに,実験結果から4つの物質が何であるかを班で話し合いどの物質であるかを決定していく。
実験の結果については,4つ切りの画用紙に決め手となった理由を書いて班の代表が発表する。他の班の発表を聞くことで考える視点を広げることができる。
2章 物質のすがた
身の回りの物質についての観察,実験を通して,有機物・無機物,金属・非金属,プラスチックなど物質の性質や変化の調べ方の基礎を身に付けさせる。
A 関心・意欲・ 態度 |
B 思考・判断 |
C 観察実験の 技能・表現 |
D 知識・理解 |
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安全指導 【実験】 |
理科室でのルールを身につけている。 | |||
ガスバーナー構造 【実験】 |
マッチを安全に点火することができる。 | ガスバーナーの構造について理解している。 | ||
ガスバーナーの基本操作 【実験】 |
ガスバーナーの操作を正しく安全にできる。 | ガスバーナーの基本操作を身に付けている。 | ||
白い粉末の区別 (本時) 【実験】 |
① 身の回りの物質の区別の仕方について考える。 |
① 実験結果から4つの物質が何か科学的に分析して推測する。 |
① 実験について考えることができる。 ② ガスバーナーの操作など,実験器具の操作を正しく安全にできる。 |
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物質の区別「有機物と無機物の区別」 | 物質の性質に関心をもち,物質の性質を利用して区別しようとする。 | 有機物と無機物の違いを理解し,知識を身に付けている。 | ||
金属の性質 【実験】 |
身の回りのどんなところにどんな金属が使われているか関心をもっている。 | 金属の性質を理解し,知識を身に付けている。 | ||
密度の求め方 【実験】 |
電子てんびん,メスシリンダーの基本操作ができる。 | 物質によって密度が違うことを理解し,密度についての知識を身に付けている。 | ||
プラスチックの性質について 【実験】 |
身の回りに使われているプラスチックにいろいろな種類があることに関心をもち,進んで実験をしている。 | 物質には,密度や加熱した時の変化など固有の性質があることを理解し,知識を身に付けている。 | ||
ボルトが何の金属でできているか 【実験】 |
ボルトが何の金属でできているか調べる方法について考えようとする。 | ボルトが何の金属でできているか調べる方法を考える。 | ||
A 関心・意欲・ 態度 |
B 思考・判断 |
C 観察・実験の技能・表現 |
D 知識・理解 |
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評価の方法 |
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項目 | 時間数 | ねらい |
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安全指導 【実験】 |
1 | 理科室の使い方や,実験器具の取り扱いについて理解させ,安全に気を付けて実験ができるようにする。理科室のルールについて,それぞれの意味も考えながら理解する。 |
ガスバーナー構造 【実験】 |
1 | ガスバーナーの分解を行い,ガスバーナーの構造を知ることで基本操作の意味を実感しながら操作できるようにする。 |
ガスバーナーの基本操作 【実験】 |
1 | チェックシートを用いて,ペアワークによるパフォーマンステストを行いながらガスバーナーの基本操作を身につける。 |
白い粉末の区別(本時) 【実験】 4/12 |
2 | 食塩,小麦粉,砂糖,グラニュー糖の4種類の白い粉末を区別する観察・実験を行うのにどのような観察・実験を行うか考える。この4種類の物質での異なる性質,共通する性質を見いだす。また,4種類の物質をガスバーナーで加熱する観察・実験を行い,ガスバーナーを実際に操作する。 |
物質の区別「有機物と無機物の区別」 | 1 | 身の回りの物質には,いろいろな性質があり,実験によって見いだした性質によって,物質を分類することができることを理解する。物質を有機物と無機物に分けることができることを知る。 |
金属の性質 【実験】 |
1 | 金属に共通する性質である電気伝導性,金属光沢,展性,延性など実験を通して見いだす。磁性については限られた金属のみの性質であることを確認する。 |
密度の求め方 【実験】 |
2 | 物質によって密度が違うことを理解する。メスシリンダーと電子天秤の使い方を身に付ける。物質を測定することで密度を求めることができるだけでなく,密度を比較することによって物質を特定できることに気付かせる。 |
プラスチックの性質について 【実験】 |
1 | プラスチック片を水,飽和食塩水,エタノール水溶液に浸し密度の違いによる浮き沈みを調べる実験を行う。ガスバーナーで加熱し,プラスチックの性質の違いを,密度,燃え方などから調べる。 |
ボルトが何の金属でできているか 【実験】 |
1 | 物質の調べ方を通して学んだことを生かして,ボルトが何の金属でできているのか,班で話し合って適正な実験方法を考え,実験計画を立て調べる実験を行う。実験結果をクラス発表する。得た情報を整理して実験レポートを作成する。 |
教師の活動 | 生徒の学習活動 | 評価規準 | ||
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導入 (15分) |
前時の復習と本時のねらい『4種類の白い粉が何か化学捜査する』の掲示 |
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*ここまでの学習の復習
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Q1 物質を調べるにはどのような方法がありますか。
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A1 におい
A2 見た目 A3 水への溶け方 A4 磁石につくか A5 味 |
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*本時のねらいを掲示する。
*モニターでA〜Dを映し出す。
*4つの物質名を書いたカードを用意する。 |
A1 食塩
A2 砂糖 A3 片栗粉 A4 小麦粉 A5 チョークの粉
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展開1 (15分) |
調べる実験方法を自分で考える |
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(1)「白い粉を区別する方法を考えてワークシートに書きましょう。自分の考えなので班(3〜4人班)で話をしないようにしましょう。」 |
(1)ワークシートに自分の考えを書く。 ワークシート調べる方法と使用する器具について記録する。 |
A① 記録分析 |
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(2)「どのように調べるかを班で話し合いましょう。話し合った結果をワークシートに書きましょう。班で司会,記録,時間,道具の役割分担をします。3人の班は時間と道具を同じ人とします。話し合いの時間は10分です。」 記録:班の意見のまとめを画用紙に書く。 時間:タイムキーパーとして,指示された時間内に話し合いや実験などを終わらせるようにする。 道具:ガスバーナーも担当する。 |
(2)班(3〜4人編制)で話し合う。自分の考えをもとに,班で意見を出し合い,観察・実験の方法を考える。 班で出た意見をまとめてどの器具を使うか意見をまとめてワークシートへ記入する。 |
A① 行動分析 |
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展開2 (20分) |
班の考えを発表する |
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(3)「班で出た意見を各班に発表してもらいます。」 (4)どのような観察・実験を行うか確認する。
*味を調べるという班が出てくることが予想されるが,理科室のものは口にしてはいけないといことをここで指導する。 |
(3)班で話し合ったことを発表する。 (4)実験の説明を聞く。 加熱する 水への溶けやすさの比較 |
C① 行動分析 |
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展開3 (30分) |
観察・実験で確かめる |
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(5)「実験をして確かめながら,結果を記録しましょう。細かな様子まで記録していきましょう。●時●●分には実験の道具をすべて片付けて班の意見をまとめましょう。結果は画用紙に書いて黒板に貼りましょう。」 *保護めがねの着用と立って実験を行うことを言う。
*5分前になったらで片付けまで行うように声をかける。 |
(5)班で協力して道具をそろえ 画用紙の記入例 |
C② 行動分析 |
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展開4 (15分) |
結果の発表 |
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(6)「観察・実験した結果を画用紙に書いたものを黒板に貼りましょう。」 画用紙の記入例 |
(6)班で実験の結果について考察しながら,4種類の白い粉末が何なのか推測したことを理由も含めてワークシートに書く。 |
B① 記録分析 |
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展開4 (15分) |
実験結果から4つの物質が何か考える |
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(7)まとめ(ワークシートの表) 4種類の物質の答えは |
(7)観察・実験結果から推測される結果についてまとめ,答えを発表する。 黒い物質が残る物質がある 考えられる生徒の気づき
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B① 行動分析 |
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まとめ (5分) |
有機物と無機物についてまとめる |
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(8)「燃焼した後の黒い物質は炭素です。二酸化炭素を発生させて燃焼したり,炭素が残ったりするような物質を有機物,有機物以外の物質を無機物と言います。」 | (8)説明を聞く。 | |||
(9)「ワークシートを班でまとめて退出するときに班で集めて提出してください。」 |
(9)ワークシートを班で集める。 |
言語環境の整備を行うことで,生徒による話し合い活動が意欲的に行われるように工夫する。まずは,自分で考えをもってから話し合いを行わせるようにする。
班の人数は4人までとし,話し合いに全員が参加できるようにする。
話し合いに適した課題の提示にも工夫する。
話し合いの結果の発表では,画用紙を活用する。話し合った結果を,1枚の紙にまとめるということが,話し合う動機付けとなる。また,話し合った事柄を視覚化することで,話し合いの結果発表が理解されやすくなる。
生徒が考えた方法
結果発表の様子
生徒の考察の記入例
実際に観察・実験を行って,肉眼やルーペを使った見た目での観察から決め手となる情報を多く得られたという記述が多かった。一見区別がつきにくいグラニュー糖と食塩は加熱することではっきりと違いがわかるという記述も多く見られた。
生徒の記入の中には,今回の実験を通してさらに疑問を解決したいという記述もあった。
班の話し合いでは,4つの白い粉を調べるための観察・実験の方法を考え,実験結果について考察することで物質を決定していった。話し合い活動と発表を取り入れることで,生徒の意欲は高まり,思考力も育成されていくと考える。
話し合いや発表は音声言語を活用した言語活動であるので,話し合ったことや発表を聞いて気付いたことを文字言語として記録させることで,思考したことが残るようにする。
生徒プリント記入例
参考文献 | 田代直幸・山口晃弘著、発想が広がり思考が深まるこれからの理科授業、 東洋館出版社,2010,P10 |