1.はじめに
教科書では空気の質量を測るのに,スプレーの空き缶500mLを用意します。つぎに空気入れでスプレー缶に空気を押し込み質量を電子天秤で測ります。
水槽とメスシリンダーを使い水上置換法で押し込まれた缶から空気を出して体積を測定します。その空気の押し込まれたスプレー缶と出された缶の質量の増減分を測ります。 そして質量を体積で割り,計算で空気の質量を求めます。測定結果に誤差が多く1リットルあたり1gを出すのは難しいです。
そこで,多くの生徒が測定でき,もっと簡単な方法はないかと測定器具を作ってみました。
2.今までの実験の難点
(1) |
1リットルのメスシリンダーは水槽に入らず,500mLを3回かに分け測定するため測定誤差が多くなります。 |
(2) |
水槽,メスシリンダー,スプレーの空き缶をそれぞれ12個ずつそろえるのが大変です。(班で実験させるため) |
(3) |
前もって教師が12個のスプレーの空き缶に空気入れで空気を詰め用意しておくのは手間がかかり大変です。
実験が次の時限と連続であるときなどはもっと大変です。 |
(4) |
最初の空気を詰め込んだ缶の質量は測定が簡単ですが,実験を続ける途中で水槽の水滴が付き質量の誤差が多くでてしまいます。 |
3.目 的
空気の重さを実感するために,空気の質量を測る実験をクラスの実験班(12班分12個)でできる方法を考えました。
使うのは下記測定器具と道具だけなので,電子天秤を持ち込めば,水槽もいらず教室でも実験が出来るくらい簡単です。
他の気体(ヘリウム,酸素,二酸化炭素)にも応用できないかと実験してみました。
4.準備物
炭酸系ペットボトル1.5リットル用
電子天秤(0.01gの感量のもの)
空気弁2個(熱帯魚屋で1個150円)
ゴム管(直径6mm)長さ3cm
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ペットボトルの蓋(1個)
ビニール袋A3用(イージーパック)3枚
三つ叉アダプター(熱帯魚屋で1個20円) |
工具:電動ドリル直径6mmドリル
応用としてヘリウム酸素二酸化炭素(缶入りのもの) |
5.測定器具の作り方
(1) |
ペットボトルの蓋の中心にドリルで6mmの穴を開けます。 |
(2) |
そのペットボトルの蓋の穴に空気弁を差し込みます。 |
(3) |
抜けないように蓋の内側にゴム管の一部を切って脱落防止
ゴム管5mmを付けます。右図参照
(接着剤なしでも空気2リットル入れてもアダプターは外れません。) |
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(4) |
ペットボトル、空気弁、注射器、空気弁に右図のようにそれぞれ3cmのゴム管3つを差し込みます。 |
(5) |
A3のイージーパックに穴を開け6mmの穴の開いた補強シールを貼り長さゴム管10cmを差し込みます。 |
(6) |
ペットボトルの中に圧力感知用に市販の弁当用の醤油つぎを入れておきす。
(空気を入れると半分ぐらいにへこみます。) |
(7) |
本装置は接着剤を使い空気弁とペットボトルを固定しましたが接着剤を使わなくとも空気は漏れません。 |
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6.実験方法
(1) |
ペットボトル,測定器,注射器を繋ぎます。 |
(2) |
ペットボトル,注射器,測定器の全体の質量を電子天秤で測ります。 |
(3) |
全容器を電子天秤に乗せ数値を0にします。 |
(4) |
容器を天秤から机に戻し,ペットボトルに100mLの注射器で空気を10回押し込みます。 |
(5) |
空気を押し込んだ後の全体質量を電子天秤の数値で測定します。 |
(6) |
計算した後,12班で測定結果の平均を求めます。 |
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7.結果
(1) |
100mLの注射器で10回空気を押し込み電子天秤で質量を測定します。(右写真) |
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測定した回数: |
10回 |
空気の質量 |
1.10g/L |
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季節によって気温が変化するため多少質量は変化しま す。 |
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※ |
炭酸系ペットボトルを使ったのは過度の加圧に対してガスが抜けるよう安全に作られているためです。また空気弁は2気圧以上は弁が働かなくなり入りません。 |
(2) |
応用としボンベから二酸化炭素やヘリウム,酸素をイージーパックに押し込んで同じ実験を行い質量を測定しました。 |
結果 |
気体名 |
質 量 |
ヘリウム |
0.21g/L |
酸 素 |
1.20g/L |
二酸化炭素 |
1.6g/L |
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なおこの作品は,本年度全日本教職員発明展
(文部科学省後援 全日本中学校長会協賛)
毎日新聞社賞受賞作品です。 |
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