授業実践記録

生徒の興味・関心等に応じた課題学習 〜微視的・巨視的なとらえ方で学ぶ環境学習〜
滋賀県 萩原伸浩

1.テーマ名

 葉山中学校の環境


2.学習活動のねらい

<この学習活動のねらい>
自分自身が学び,考え,課題を発見し,その解決方法を提案できる力をつける。
学び方や問題解決の方法を身につけ,学習に向かう主体的な姿勢をもつ。
主体的に社会とのかかわりをもち,自分自身の生き方について考えを深め,生涯を通して生きて働く力を身につける。
<年間指導計画におけるこの学習活動の位置付け>
本校では70〜130時間を「総合的な学習の時間」として取り組んでいる。合唱コンクールや各学年の体験学習(1年は福祉体験学習,2年は勤労体験学習,3年は環境体験学習)も,「総合的な学習の時間」のひとつである。そして各学年隔週で「総合的な学習の時間」を設け,1年間で35時間を当てている。
<生徒がこの学習をすることの意義>
発見する環境を主眼に据えて,具体的に身近な環境である我が中学校に焦点を当てることで草木(樹木)に愛着を持ち,興味・関心を持てる生徒を育てる。
<このテーマで扱う大まかな内容>
葉山中学校の敷地内よりお気に入りの樹木を選び(私の樹木),毎月微視的にとらえてスケッチをし,気づいたことをノートに記入する。
葉山中学校の敷地内の樹木を調べ,名札付けをする。
校外へ出向き,森の大切さについて学ぶ。


3.学校や地域の特色

 葉山中学校としては,総合的な学習のメインテーマとして「環境」を柱にかかげている。滋賀県は日本一大きな湖があり,水資源が豊かであり環境に熱心な県として知られている。滋賀県南部の栗東市に位置する本校はすばらしい自然環境に恵まれている。

 地域には「栗東自然観察の森」や「栗東歴史民族博物館」があり,いつでも利用することができる。また栗東市のバスを借りての校外学習も可能である。

 更に地域の方(保護者など)を講師にして,まねいている講座もある。


4.生徒の実態

 中学一年生男子7名,女子7名の計14名で構成される。各自が7講座の中から選択をして,この講座で学習しているため比較的に学習意欲は見られる。外国籍の生徒も2名いるが,樹木のスケッチなどで精一杯学習に参加している。


5.必修教科「理科」との関連

 大単元である「植物の生活と種類」を一年生の4〜5月にかけて学習する。そこでは校庭の様々な生物を巨視的・微視的に観察することを学習する。植物の中の分類では,花の咲く植物と花の咲かない植物の学習をし,根・茎・葉の基本的なつくりと働きも学習する。ところが生徒たちは,校庭内の植物はそれだけでないと感じており,そこにヒントをみつけ校庭の樹木に焦点をあてて,既習範囲の応用として樹木の葉による分類を学習し,そこから更に特徴をみつけていくといった学習を進めている。


6.指導計画

1 各講座のガイダンスと選択(2時間)
 
各講座からの担当教諭による大まかなガイダンス(1時間)
生徒による質問と講座選択(1時間)
2 本講座の学習の進め方とグループわけ(2時間)
 
総合的な学習の進め方(1時間)
グループ分けと本講座でやっていきたいことを考える(1時間)
3 校庭内の樹木観察
  10 時間
校庭内の樹木が何本あるだろうか(1時間)
(予想をたてて実際に数えてみる)
自分の1年間スケッチするお気に入りの樹木を探す(1時間)
(決まったら早速樹木図鑑で名前や特徴を調べる)
自分のお気に入りの樹木を年間を通してスケッチする(8時間)
4 草木染めにチャレンジ(4時間)
 
清掃活動で枝を切ったもので染物をしてみる(4時間)
5 校外で森林に関する学習を行う(3時間)
 
守山市にある「びわこ地球市民の森」での学習(3時間)
(樹木の調べ方や植林の重要性などの学習に取りくむ)
6 樹木のプレートの制作
  10 時間
視聴覚機器の使い方の講習(2時間)
視聴覚機器を利用しての樹木のプレートをグループで制作(8時間)
7 発表の準備と発表(7時間)
 
発表原稿制作(4時間)
各講座の発表会と反省(3時間)
5は夏休みの学習のため,35時間には含まれていない。


7.指導の実際(概要)

総合的な学習のため,極力指導は行わず支援を行うようにした。
教師の指導事項 生徒の学習活動 留意事項と評価個所と方法
自分の樹木を探そう。
自分の木について知ろう。
   
自分の樹木をスケッチさせる。
(スケッチの仕方を説明する)
校庭内の自分の樹木を探す。
樹木の本やインターネットなどで自分の樹木のことについて知る。
   
毎月自分の樹木のスケッチをし,変化の様子を書く。(巻き尺なども用いる)
   
総合的な学習のノートに調べたことをまとめる。
(意欲・関心)
生徒のやりたいようにさせるようにした。
スケッチノートを毎回提出させてコメントをつける。
(意欲・関心・科学的な思考)
環境教育の一環として清掃活動後の刈り取った枝を集めて,草木染めを行わせる。(苛性ソーダであらかじめ枝を1日つけておく)
各自で白い布を準備しておく。
枝を鍋に入る大きさに切り鍋で30分ほど煮て染色液を抽出する。
枝を取り除き,白い布を鍋の中へ入れ20分ほどつけておく。
一度金属塩(鉄ミョウバンなど)をぬるま湯で溶かしたものの中に布を入れる。
しばらくしたら更に元の鍋に入れて一煮立ちさせる。
興味を持って学習できたか。(意欲・関心)
校外(びわこ地球市民の森)での学習をするため,事前学習をしておく。(打ち合わせをする)
夏休みに森や樹木などについて聞きたいことを,まとめておき,現地で質問ができるようにしておく。
現地では森を守るための大切さや,樹木の管理方法,更に樹木の観察方法や図鑑での樹木の調べ方などを学ぶ。
興味を持って学習できたか。(意欲・関心)
校庭の樹木のプレートを制作させる。
デジタルカメラとパソコンの使用の仕方を説明する。
デジタルカメラとパソコンに実際に触れて練習をする。
自分たちでデジタルカメラで撮った樹木の名称や特徴を樹木図鑑で調べ,専用の用紙に記入する。また樹木の葉をとって一緒にパウチをする。
班で分担し協力して,自分たちで個性的なプレートを制作できたか。(意欲・関心・技能)
葉の特徴をつかみ,樹木を図鑑で検索できたか。(意欲・関心・科学的な思考)
発表原稿を作成させる。
発表原稿を作成する。
発表原稿がしっかり書け,発表がしっかりできたか。
(表現力・発表する力)


8.評価(観点,方法,その結果)

 毎時間総合的な学習の専用スケッチノートを提出させて,個々の生徒に応じた着眼点でコメントを付け加えて,生徒のよさを更に引き出すことにしている。

 プレートの制作では生徒の意欲を授業の中で見ている。(14名の少人数のために可能である)

 最終的に前期(4〜9月)・後期(10〜3月)で文章表記で評価している。


9.授業に対するコメント(この学習活動の良さ,特徴,生徒の反応)

<この学習活動の良さ>
生徒が主体的に学習に参加できること
自分の樹木に愛着が湧き,細かいことに着眼点を持ってくれたこと
生命(植物)を大切にする心が少しでも芽生えたこ
<特徴>
個々の生徒のペースで学習していくことができること
個々の生徒の着眼点で学習していけること
植物のプレートを自分たちの手でパソコンを使って制作できること
<私の樹木スケッチによる感想より(12月まで)>
葉っぱの数は変化が見られなかった。きっと生命力が強いんだと思う。葉っぱの色は6〜8月にかけて濃くなっていって,その後9月からだんだん色がうすくなっていった。そして汚れている部分が増えていった。寒くなるにつれて,この葉達も枯れてゆくのかなと思うと少し寂しい。けれどその前にきれいな紅葉を見せてくれるのではないかと思う。更に12月には葉が全てなくなり,枝の先に新たな芽が出ていた。1つの樹木を観察し,1年間スケッチをするのは初めてのことでした。
5〜8月ぐらいまでは葉の色が緑色で,9〜10月ぐらいまでは黄緑色で,11月には黄色になり12月には葉が落ちてなくなっていた。また葉の枚数は11月までは増えたり減ったりしていた。11月には幹を鉛筆でうすい紙になぞって写してみた。枝の長さもはかってみたら25cmだったのが今では41cmにもなり嬉しいです。
6月から9月までは葉の枚数には変化がありませんでした。でも,10月からはかなり変化がありました。9枚だった葉が1ヵ月後には7枚に更に1ヵ月後には5枚に最終的には全て落ちてしまいました。特に9月から11月には虫が葉っぱを食べるようになり,葉っぱに穴が空いてちょっとショックでした。毎月スケッチをしていくうちに,葉の数や長さなどの変化がありました。
最初は緑の鮮やかな葉が寒くなるにつれうすくなり,葉は落ちずとも枯れていくことが実感できました。またふいりの部分も見られました。
気温の差で葉っぱが増えたり減ったりしました。夏にかけて葉っぱが急に増えたけど,10月からは逆に急に減りました。
1年を通して樹木には色々な変化がありました。6月のスケッチでは樹木に実がなっていた。しかし,8月には実が落ちていたので,この木は春に実をつけるんだなと思いました。
最初は「スイカズラ」だと思っていたけど本当は「コブシ」だということがわかった。図鑑で調べたらそっくりだったので,無理はないなと思った。
<その他の感想>
デジタルカメラやパソコンで樹木の写真を取り込み,枠を作ってオリジナルのプレートができたのですごく嬉しいです。
校庭にはすごくたくさんの樹木があるなと改めて思った。また知らない樹木が多いと思った。


10.最後に(この総合的な学習で用いた主な準備物)

総合的な学習フィールドノート(東法出版より 120 円)
  ラミネーター本体
  ラミネートフィルム(A5サイズ)
  デジタルカメラ
  パソコン(paint shop pro使用)
  野外観察ハンドブック(校庭の樹木:岩瀬 徹・川名 興共著)
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