授業実践記録

個に応じた指導(発展的内容の学習)〜豚の心臓の解剖の実験(心臓のはたらきについて)〜
北海道札幌日本大学中学校
教諭 斉藤 隆作

1.教材観

 「動物の世界」では,身近な生物の観察実験を通して,動物のからだのつくりとはたらきを理解し,動物の生活や生態についての多様性に対する認識を深めることを目的として学習する。

 心臓の構造は新学習指導要領では扱わないことになっているが,中高一貫コースの利点を生かし,生物 I との関連を考え,従来どおりの部屋の構造,血液の循環についての学習をする。心臓の構造については図やモデルでの説明が主となっているが,実際に触って体験してみることで,構造の理解をすすめたい。

 動物の解剖については,生命倫理の問題もあるので,解剖される動物に対する畏敬の念を持たせること,解剖の際の発言等に注意させたい。

2.生徒の実態と単元の指導計画

 理科に関する関心は高く,特に実験・観察など,自分の目で見たり,手を動かして作業することには高い意欲を見せる。医学部志望の生徒が多く,実験,特に解剖には関心が高い生徒が多い。そこで生徒の興味関心に応じた授業として発展的内容となる解剖実習を多く取り入れている。

 行っている解剖実験は豚の眼球,ニワトリの脳,ニワトリの腱と筋肉,豚の心臓,イカ,カエルなどである。単元の指導計画を作成するに当たり,それぞれの実習の内容がつながるような工夫をしている。

【解剖実習を多く取り入れた単元の指導の流れ(解剖実習にかかわるところだけ抜粋)】
感覚系
循環系
まとめ

3.指導のねらい(本時)

 心臓の観察を通して以下の点に気づくことをねらいとする
1 4部屋に分かれているということ
  2 左心室の肉厚
  3 大動脈,大静脈,肺動脈,肺静脈
  4 弁について


4.指導案(本時)

流れ 学習内容 ○生徒の活動 & ◆教師のはたらきかけ ※留意点
導入(10分) 授業の目的,
心臓のしくみ
生活設計ノートに授業の目的を書く
心臓のしくみの説明を聞く
 
実験の手順の説明
映像を見せて観察するポイントを確認する
(パワーポイントを使用)
実験上の諸注意を確認する
 
気分が悪くなったときの対応,
刃物の使い方の注意をする
※生理的に受け付けない生徒がいたら,無理強いはさせないで見学させる。
展開(30分) 解剖実験
実験に必要な備品を確認する
  (新聞紙,メスセット,解剖台)
解剖を始める(ワークシートに沿って行う)
 
1 一部切られているので,元の形に戻す
 
どの部分が上かを確認する
2 4部屋の場所を探す
 
肉厚の部分をヒントに,左心室から探す
3 大動脈,大静脈,肺動脈,肺静脈を探す
 
4つの部屋をヒントに各血管を探す
4 弁を探す
実験上の諸注意を確認する
※メス,はさみで遊ぶ生徒がいないかどうか確認しながら見てまわる。
   
まとめ(10分) 学習内容のまとめ
実験でわかったことを発表する
班で1つ発表させる。発表者を指名する
 
4つの部屋の違い
大動脈,大静脈,肺動脈,肺静脈がわかったか
弁の特徴
ワークシートに考察・感想の記入
※発表者は立って正しい言葉遣いで発表する。
※聞いている生徒の態度を注意する。
   


5.指導の成果

 実際の心臓を手に取り,その大きさや重さを知り,感動する様子が見られた。一番効果的だったのは肉厚である。厚い理由が全身に血液を送り出すためであると,理由まで含めて考えることが出来たようである。前週に行ったメダカの血液の観察と関連させて,血液を送り出すポンプとしての役割を考えることができた。

 感想を見ると,今回の解剖を通して,さらに別の動物の解剖がしたいという生徒が多くいた。興味関心を高めるという目標は達成できたように思われる。


6.今後の課題

  屠殺場の方にお願いして,心臓はできるだけ血管の部分がつながっている状態にしてもらう。
  無目的に観察すると,発見が少なく終わってしまうので,事前に発見できる項目を焦点化しておくことが必要である。


7.解剖の準備で工夫した点

  ゴム手袋(ドラッグストアで購入)50人分で数百円
  解剖台 100円ショップで購入したカッター台にラップを巻きつけて利用
  解剖セット+はさみ
カッター盤(100円ショップで購入)
ゴム手袋(生徒用は透明の安価なものを使用)
簡易解剖台
(カッター盤をサランラップでくるんだもの)
解剖セット

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