(1) | 御池への酸性雨の影響はないのか。
お池が環境庁の全国18の湖や沼の酸性雨の調査地点になったのは,周りから河川が流入しないことと酸性化に影響を与えるような人為的要因がないということからでした。そして,平成9年の発表では御池のpHが6.3ということでしたが,私たちのパックテストでの調査でも4年間,pH=6.3と変化がありませんでした(「グラフpH」参照)。これだけの結果から酸性雨の影響はないと決めつけられませんが,とりあえずホッとしています。
しかし,新聞紙上などのいろいろな記事から,高い山のブナ林がなくなったりしているのは酸性雨や酸性雪の影響であることも考えられますので,各研究機関が合同で調査をしていく必要があると思いました。
御池のpH=6.3,導電率=28〜45(「グラフpH」,「導電率」参照)と角川の水質と全く違う結果が出ていますが,雨が多いときも少ないときも水面の高低がほとんど変化しないことから,湧き水の影響だと考えてきました。さらに水生生物も河川と全く違い,魚などはいないともいわれています。ただpHが低い原因として考えられるのは,御池の周辺の岩山は酸性の流紋岩がほとんどなのでその影響だと思われます。
*pH,導電率のデータはグラフを参照してください。
平成9・10・11・12年度のpH
| A地点 | B地点 | C地点 | D地点 | O地点 |
平成9年 | 7.0 | 7.5 | 7.0 | 7.5 | 6.3 |
平成10年 | 6.9 | 7.2 | 7.3 | 6.5 | 6.3 |
平成11年 | 7.0 | 6.8 | 7.6 | 6.8 | 6.3 |
平成12年 | 6.6 | 7.4 | 7.0 | 7.2 | 6.3 |
平成9・10・11・12年度の導電率S/cm
| A地点 | B地点 | C地点 | D地点 | O地点 |
平成9年 | 101 | 85 | 86 | 82 | 45 |
平成10年 | 81 | 72 | 77 | 74 | 35 |
平成11年 | 109 | 90 | 86 | 115 | 28 |
平成12年 | 125 | 100 | 87 | 83 | 38 |
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(2) | ダムや護岸工事などによる河川水質への影響はないのか。
今年度は河川の水質に影響を与えると考えられた,砂防ダムなどに堆積する有機堆積物の研究を始める予定でしたが,4月から研究の練習を兼ねて水生生物や化学分析などの調査を行ったところ,今までに見られなかった結果が出てきました。それは,週1時間の調査の関係で,主に学校の裏のB地点で研究の練習を行ってきたのですが,昨年度まで数多く見られたヒラタカゲロウ類やナガレトビケラ類がほとんど姿を消し,トビイロカゲロウやキイロカワカゲロウ,コカゲロウなどが見られ(「表・水生生物」参照),さらにCODが8〜10ppmと高くなることがよくありました。
そこで,上流部までの様子を観察していったところ,A地点とB地点の間で,昨年の秋頃から(角川にしては)大規模な護岸工事が行われていました。見た目でも水が濁り,しかも角川で一番深い場所が昨年までは2.5mぐらいあったのに,今年は1.5m程度までに流れ出した土砂で埋まってしまいました。工事の影響のないA地点で調査をしたところ,A地点ではカワゲラ・ヒラタカゲロウ,ヘビトンボ,ウズムシなどが観察され,明らかに河川工事の影響であることがわかりました。
写真2 ヒラタカゲロウ |
写真3 ヘビトンボ |
現在あちらこちらで,水生昆虫や魚の保護のために河川をコンクリートで覆わないような動きがありますが,河川の浄化作用を下げないためにも,工事の工夫が必要だと思いました。データの表やグラフは今年の7月25日の調査ですが,この時河川工事はすでに終了していました。4年間のA地点からD地点までのデータを見ていくと,pHは6.5〜7.6となり,D地点(最上川)の測定値の幅が一番大きくなっています。水生生物,COD,NO2,PO4については,下流部にいくほど水質階級が低下します。
さらに,すでに述べたようにB,C地点では,昨年度まで数多く確認された生物が減少し,今後どの程度回復していくのか心配です。COD,NO2,PO4の中でPO4が一番顕著に汚れの様子を表していますが,最上川は山形県全体で浄化の取り組みをしなければならないと思いました。
*水生生物,pH,COD,NO2,PO4,導電率のデータは,表やグラフを参照してください。
生物指標データ
平成9・10・11・12年のCOD
| A地点 | B地点 | C地点 | D地点 | O地点 |
平成9年 | 7.0 | 9.0 | 5.0 | 6.0 | 7.0 |
平成10年 | 9.0 | 7.0 | 7.0 | 9.0 | 10.0 |
平成11年 | 5.0 | 8.0 | 8.0 | 10.0 | 3.0 |
平成12年 | 8.0 | 8.0 | 5.0 | 10.0 | 8.0 |
平成9・10・11・12年のNO2(ppm)
| A地点 | B地点 | C地点 | D地点 | O地点 |
平成9年 | 0.00 | 0.02 | 0.02 | 0.04 | 0.01 |
平成10年 | 0.00 | 0.00 | 0.00 | 0.00 | 0.00 |
平成11年 | 0.00 | 0.00 | 0.00 | 0.00 | 0.00 |
平成12年 | 0.00 | 0.00 | 0.00 | 0.00 | 0.00 |
平成9・10・11・12年のPO4(ppm)
| A地点 | B地点 | C地点 | D地点 | O地点 |
平成9年 | 0.1 | 0.1 | 0.2 | 0.6 | 0.3 |
平成10年 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.3 | 0.0 |
平成11年 | 0.1 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 |
平成12年 | 0.0 | 0.0 | 0.3 | 0.4 | 0.0 |
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(3) | 角川最上部の調査地点で,導電率が高くなる原因は何なのか。
写真4 角川上流 |
4年間の研究で気になっていたのは,導電率が上流のA地点からD地点に行くにしたがって低下していくことでした(ただしO地点・御池は違った環境です)。その原因が何なのかを考えると,A地点の上流に秘湯「今神(いまがみ)温泉」があり,温泉水が角川に流れ出すためではないかと思われました。今神温泉は私有地なので温泉水を調べることはできませんが,過去に調べたことのある人の話ではCuイオンが多いということでした。そこで,今年はCu,Znイオンのパックテストを使い調査してみました(グラフ導電率,Cu,Zn参照)。
結果は,Cuイオンはどこも0.0ppmでしたが,Znイオンが0.8から0.3ppmと導電率と同じような傾向になりました。来年度は今神温泉の水質も調査していきたいと思います。ただ,御池の導電率とZnイオンの関係は河川と逆になり,いろいろなイオンについて正確に調査をする必要を感じました。
*導電率,Zn,Cuイオンのデータはグラフを参照してください。
平成9・10・11・12年のZn、Cuイオン
| A地点 | B地点 | C地点 | D地点 | O地点 |
Znイオン | 0.8 | 0.6 | 0.4 | 0.3 | 0.5 |
Cuイオン | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 |
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