授業実践記録

四角形の等積変形
名古屋市立一色中学校
岡 享子

1.はじめに

  生徒が課題「わからないこと」を明らかにする指導の工夫として,『問題場面について,〜が分からない』と生徒に働きかけるキャラクター「さん」を登場させ,生徒と「さん」とのコミュニケーションを大切にし,さんと共に一つのことを考えることで,さんと生徒との間に知的共同が生まれる学習活動を重視して実践を行った。

 

2.問題提示の工夫とさんの役割

  生徒に問題解決に向けて各自の考え(仮説)を持たせるように働きかける問題を工夫し,以下の3つの観点からさんの役割を考えた。

@ 何を考えればよいかを気づきやすくする。
さんの願いから,問題の要素や問題解決の目標が分かりやすくする。
A 何をどうすればよいかという目標に気づきやすくする。
さんの目的に着目して,問題の要素の関係に着目しやすくする。
B どのように考えてきたかをまとめやすくする。
さんの目標や目的をどのように解決してきたかをOさんに語りかけるようにまとめる。

 

3. 授業の実践

(1) 単元
  2年 「平行線と面積」

(2) 単元の目標
  平行線と面積の関係を理解し,平行線による等積変形の方法が利用できるようにする。

(3) 実践の流れ
学習の流れと内容 学習活動と実際
 

【提示問題】

   
   

  平行な2つの直線の間にある,右のような三角形ABCとDBCの面積が同じになることを説明しましょう。

(わくわく算数5下 p.13 改題)
 
   

@

AD // BCならば,
△ABC=△DBC
を証明する。

小学校で学習した問題を用いて,△ABCと△DBCの面積が等しくなることを,生徒の説明をもとに確認する。

底辺が共通で,底辺に平行な直線上に頂点をもつ2つの三角形の面積が等しいことを,一般的な表し方でまとめる。

 
 
   

@

△ABC=△DBC
ならば,AD // BCを
証明する。

逆が成り立つことを証明する。
 
 

【提示問題】

   
   

さんと植木屋さん
  右の図はさんの家の門,花だん,玄関の位置を表したものです。
  ある日, さんは,門から玄関まで行くのに花だんが邪魔なのでデザインを変えようと思い,植木屋さんに頼むことにしました。
  すると,植木屋さんは花だんを三角形にしようと提案しました。さんは花だんの広さは変えないという約束でお願いすることにしました。
  広さを変えずに三角形の形の花だんに変えるために, あなたならどうしますか?

 
         
   
(1) 現在の花だんに色をぬろう。
 
   

  考える対象を明確にして,問題の要素を明らかにする。

現在の花だんに色を塗り,現在の花だんが四角形であることと,辺の長さが示されていないことに気付く。

 
 
   
(2) 面積が同じ三角形の花だんの形を予想しよう。
 
   

  O さんの困ったことから,「こうしたい」「こうなるといい」という予想を立て,課題を明確にする。

今のままでは邪魔なので形を変えたい,面積を変えずに,三角形の花だんにしたいというさんの願いから,花だんをどんな三角形にすればよいのかを予想する。

S1 : 三角形ならどこに作ってもいいの?
S2 : 面積が変わらなければ2つにわけてもいいの?
S3 : ( 図の花だんを指して ) これって台形?
 
    【生徒の考え】
 
     

どの形が一番さんの願いに合っているのかを考え,ウの形にするとよいことに気付く。

 
   
(3) もとの形と予想図を比べてどこが変わりましたか。
 
   

  頂点に名前をつける。

  もとの花だんの形と予想図を比較することで,平行線を使った等積変形ができることに気付かせる。

考えが人に伝わりやすくするために,頂点に名前を付ける。

もとの形と予想図を比べてどこがどのように変わったのかを考え,作図の仕方を予想する。

S4 : Dがなくなり,Eに移った。(図1)
さん : 面積はどことどこが等しいの?
S5 : △ADFと△ECF。(図2)
S6 : △ADCと△EAC。(図3)
 
   
(図1) (図2) (図3)
 
     
さん : Eはどうやって決めるの?

S7 : AC と DE は平行だよ。

 
   
(4) あなたが植木屋さんだったら,どのように設計図をかいてさんに見せますか。
 
   

  正確な図をかいて証明する。

どの直線とどの直線が平行になるのかを考え,設計図をかく。
 
 
   
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(5) 本当に面積が等しいのかどうか証明して,さんに説明してあげよう。
 
     
設計図が正しいことを証明する。
S8 : Aで証明したよ。
 

 

4. おわりに

  「あなたならどうしますか」という発問や,予想図をかいたことで,生徒は自ら仮説をつくり,その正しさを証明しようとした。また,さんに説明することで,自分のやったことを再現できるようになり,自分のやったことが説明できるようになった。

  また,人に伝わるようにまとめようとすることで,頂点に名前を付けることや,順を追って説明していくことの意識が高まった。

  今後も,もっと生徒の予想や仮説をもとに,生徒と考え合う会話を豊富にして問題解決に主体的に取り組む生徒の育成に努めたい。


 

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