授業実践記録

魔方陣の秘密を見付け,活用しよう
福岡県北九州市立横代中学校
西岡 和成

1.はじめに

  新学習指導要領において,知識・技能を活用する力を育成し,学ぶことの意義や有用性を実感できるよう,「数学的活動」が学習指導要領に規定された。その活動の中で,既習の数学を基にして,数や図形の性質などを見いだす活動が明記されている。ここでは,教科書 P.41の数学展望台に記述されている魔方陣を学び,きまりやつくり方を発見した後,負の数への拡張を行い,法則を一般化して考えることができるように展開を考えた。

2.研究の背景

  本校第1学年は,アンケート調査より,既習事項を基に,数学的な表現方法を活用することに苦手な生徒が多く,他の生徒の考えを取り入れ,深く考えようとすることに消極的な生徒が多い。そこで,数学的活動を取り入れ,数学への興味・関心を高め,数学的な考え方を養うことにした。

3. 授業の実践

(1) 本時の目標
@ 魔方陣のきまりについて関心を持ち,規則性を調べようとする。
A 魔方陣の様々な秘密を発見し,負の数を含んだ魔方陣づくりへ活用することができる。

(2) 学習展開例
学 習 活 動 ○指導上の留意点 ◇評価規準 ()評価の観点 【】評価方法
◎評価に基づく具体的な支援
 
魔方陣のきまりを調べ,本時の目標を知る。
   
 
次の図は,1から9までの数を,縦,横3個ずつ,正方形の形に並べたものです。この数の並び方にはあるきまりがあります。そのきまりを見付けてみましょう。
 
   
縦,横,ななめすべての列の和を意識させることで,魔方陣のきまりを確認する。
 
     
   
       
空欄に数を入れ,魔法陣を完成させる。
課題1で発見した性質を用いて,課題に取り組ませる。
 
@ A
   
 
   
   
 
   
   
3つの魔法陣を比較し,気付いたことをワークシートに記入する。
自分の気付きをワークシートに記入させ,他の生徒の気付きと比較できるよう机間指導を行い,助言をする。
 
       
 

 
       
負の数を用いた魔方陣について考える。    
  『−5』から『3』までの連続した9つの整数を使って,魔方陣を完成させましょう。
また,どのように工夫をして考えたか,まとめましょう。
 
       
 
1グループ3〜4人の小集団を構成し,話し合いやすい状況をつくる。
工夫点をまとめる際,
先に決めた数の場所はどこか
どのような規則で並ぶようにしたのか
1列をたしたらいくつになるのか
などヒントを与え,どのような観点でまとめていくのか明確にする。
グループで意見を出し合い,魔法陣を完成させると同時に,効率のよい方法を発見することができる。(表現・処理)
  【発言・様相観察】【ワークシートの記述】
意見を出し合うことができないグループには,今までの課題で気付いたこと,まとめたことを具体的に再確認し,同じ観点でまとめればよいことに気付かせる。
 
グループで工夫した点を発表する。
発表用ワークシートにグループの考え方をまとめさせる。
グループ内で,
発表する生徒
掲示用プリントを記入する生徒
他のグループの意見をまとめる生徒

を分担し,役割を明確にしておく。

工夫した点だけでなく,他のグループの意見を参考にして,気付いたことも任意に発表させる。
 
   
       
   
       
いろいろな魔法陣を紹介する。
本時で学んだことを確認しながら,4方陣や円魔方陣を紹介し,理解をより深めさせるようにする。
 
自己評価を行う。
自己評価させることで,生徒に本時の学習のめあてを振り返らせる。
 
【発言・様相観察】【ワークシートの記述】
 

4. 成果と課題

@ 魔方陣のきまりについて関心を持ち,規則性を調べようとする。

  【成果】

    魔方陣のきまりを見付ける学習を通して,正の数・負の数の演算方法を活用し,法則を見いだしていくという課題について,関心をもって授業に臨んでいた。 題材が生徒の興味関心を高めるものであったと考える。また,少人数グループ編成を行い,司会・記録など役割分担を行ったことで,意見の練りあいをスムーズに進めることができ,グループ内で分からないところを補いあう雰囲気が生まれ,様々な意見を積極的に出し合うことができた。

  【課題】

    この課題に対して消極的になっていた生徒が若干いた。その生徒は,算数・数学が極端に苦手である生徒で,ワークシートにも考えを記述できなかった。これらの生徒に対して,細やかな机間指導等,生徒支援の方法を模索する必要がある。

A 魔方陣の様々な秘密を発見し,負の数を含んだ魔方陣づくりへ活用することができ る。

  【成果】

    クラスの仲間と話し合ったり発表したりすることについて「苦手である」「どちらかというと苦手である」と回答した生徒は約65%であっクリックで拡大たアンケート結果と反し,グループによる練り合いの場を設定した結果, 数学的な表現方法を活用して自分の考えを活発に述べたり,他の生徒と考えを練り合い,より能率的な方法はないか議論したりすることができた。授業後の自己評価においても,他の生徒の意見を聞くことで自分の考え方を工夫することができたと振り返っている生徒もいた。

  【課題】

    グループでの話し合いに移行するまで,既習事項との関連をうまく活用することができず,見通しをもつことができない生徒がいた。ワークシートに生徒自身の言葉で考えを記述したり,他の生徒の意見をまとめたりする作業を行うために,簡潔に記入する方法を指導する等,細やかな支援をすることが必要である。

 

《参考文献》

片桐重男 『数学的な考え方とその指導』 明治図書 2004

国立教育政策研究所教育課程センター,『平成20年度 全国学力・学習状況調査 解説資料 中学校 数学』,2008

 
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