1.題材について
中学校始めての図形領域の授業において,正方形を7つのピースに分割した「タングラム」というパズル(100円ショップで購入)を利用し,2時間の学習を計画した。
1時間目は,「タングラム」を使ってさまざまな図形をつくり,2時間目にはそのつくった図形を分類するという学習内容である。
これは,1学年「平面図形」で学ぶ線対称・点対称の授業の導入に結びつけるだけでなく,分類の仕方によっては2学年「三角形と四角形」で学ぶ平行四辺形の性質にも結びつけたり,3学年「相似な図形」にも結びつけることができる内容である。
その中で,さまざまな図形をつくろうとしたり,図形に潜む性質を調べようとする「関心・意欲・態度」,いろんな組み合わせ方を試行錯誤し実際に図形をつくっていく「数学的な表現・処理」,そしてその作品を数学的な視点で分類する「数学的な見方・考え方」を育てていきたい。また,班活動による学び合い学習を取り入れたり,発表会を取り入れることで,意欲的に取り組み,粘り強く学習していく態度も育てるだけでなく,「解の多様性」にも気づかせたい。さらに分類することの重要性にも触れたい。
2.題材の学習目標
(1) |
小学校で学んだ図形の基礎的概念とその性質について理解を深める。 |
(2) |
図形を観察,操作したりなど作業的な活動を通して,図形に対する直観的な見方や考え方を深める。 |
(3) |
発表会を通し,多様な考え方にふれることで「解は多様である」ということに気づかせたい。 |
(4) |
分類することを通して,対称性という新たな視点・概念に気づかせたい。 |
3.題材の指導・評価計画
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学習内容 |
学習活動 |
評価規準 |
第
1
時 |
さまざまな図形をつくろう |
・ |
タングラムの紹介 |
・ |
タングラムのピースを2つ以上使っていろんな形を作ってみよう。 (個の活動) |
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関 |
タングラムに興味を持って,作品づくりに取り組もうとする。 |
表 |
タングラムを使って,凸多角形をはじめさまざまな図形をつくることができる。 |
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第
2
時 |
図形を分類しよう |
・ |
それぞれの作品を,いろんなグループに分けてみよう。 (個の活動→班活動) |
・ |
それぞれの班の発表 |
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関 |
図形の特徴をみつけ,グループ毎に分類しようとする。 |
表 |
図形の特徴をみつけ,グループ毎に分類することができる。 |
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4.学習展開例
第1時(個の活動)
あるクラスの第1時の作品づくりでは次のような分布であった。
個数 |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
9 |
人数 |
男 |
2人 |
3人 |
6人 |
1人 |
3人 |
2人 |
3人 |
1人 |
女 |
0人 |
3人 |
3人 |
6人 |
3人 |
2人 |
0人 |
0人 |
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第2時(個の活動→班活動)
学習内容・活動 |
指導上の留意点 |
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作品紹介(24種類) |
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始めに,タングラムを示し,前時の授業を思い起こさせる。(1の作品)
そして前時でつくったみんなの作品を紹介する。 (2〜24の作品) |
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課題の提示 |
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それぞれの作品を,いろんなグループ(特徴別)に分けてみよう。 |
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(個の活動→班活動) |
始めは自分で考えさせ(個の活動),次に班活動に移る。 そうすることで,「見方・考え方」の評価もでき,これからの話し合い活動が活発になった。 また,話し合い活動の効率性を考え,4人で1班とした。 |
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発表会(質問タイムも設ける) |
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あるクラスが分類した例 |
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授業のまとめにおいて,1年生の図形領域で学ぶ「線対称・点対称」の単元につながることを知らせる。 |
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授業のまとめにおいて,2年生の図形領域で学ぶ「平行四辺形」の単元につながることを知らせる。 |
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授業のまとめにおいて,3年生の図形領域で学ぶ「相似」(拡大・縮小)の単元につながることを知らせる。 |
5.成果と課題
(1) |
生徒の反応 |
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中学校始めての図形領域での授業であったが,パズルを利用したり,自分たちでつくった作品を分類することで,図形に対して苦手意識を持つ生徒も興味関心を持ち,取り組むことができた。 |
(2) |
評価方法について |
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「関心・意欲・態度」の評価方法を観察法で行い,AとCの生徒を座席表に記入する方法で行った。そうすることでクラス全員を見ることができ,特にCと判断された生徒には指導の手だてを行うことで,作品をつくろうとする・分類しようとする姿勢につなげ,A・B判断にすることができた。 |
(3) |
評価基準について |
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第1時の評価規準「表現・処理」の基準を,作った作品の個数で判断しようとした。しかし簡単な作品ではなく,他の人がつくらないようなより難しい作品をつくろうとして1個しかつくれなかった生徒もいた。個数だけでなくその頑張りも反映できる評価基準が必要だと感じた。 |
(4) |
第2時について |
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発表会では,作品をいろいろなグループに分類することができたが,似たようなグループが重なり合ったりして系統的でなかった。
そこで課題を提示する前に,教師の発問を「同じ仲間はいないかな?」など工夫することで生徒の発言を促し,その発言ごとで班をつくり話し合い活動をさせる必要があった。そうすることで,座席順に4人1班で図形を分類するより,分類する視点がはっきりとし,最後のまとめが系統的になりもっと収束したものになったであろう。 |
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自分達で分類したものが,1学年で学ぶ対称性だけでなく,2学年・3学年の図形の勉強につながることを知ることで,これからの図形の勉強に対する興味関心を持たせることができた。これは,分類するということが,新しい概念形成を生み出すということを実感させることにもつなげられ,分類することの重要性にも触れられる。 |
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