1.はじめに
自然現象や社会現象などの具体的な事象を数理的にとらえるとき,関数的な見方や考え方を必要とする場面が多く,関数の指導が重要であると思われる。本校の実態としてこれまで,数学は日常生活で使われていると感じている生徒が少なく,ともなって変わる2つの量の規則性を考察し,先を見通すことを苦手としている傾向にあった。そこで,生徒に興味・関心をもたせるために,身近にある事象(ランドルト環)を題材として取り扱い,その事象から関数関係を見いだし,その特徴を表・グラフ・式を活用しながら考察し,未知の数量を求めさせる。こうした活動をすることにより,関数的な見方や考え方を伸ばしていくことができるとともに,日常生活と数学の関連に気づかせ,数学の有用性を実感させることができると考えた。
2.授業の内容
【啓林館の教科書より】 |
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ランドルト環とはフランスの眼科医ランドルトによって視力を測るために考案された1909年国際眼科学会で公認された国際規格のことをランドルト環という。
ランドルト環の大きさと視力の関係は,環のすき間をxmm,視力をyとすると,y =1.5/x という反比例の関係があることが知られている。
授業の構想図 |
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3.授業の実際
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3 |
視力とランドルト環の外側・内側の直径,切れ目の長さを実際に測り,表・グラフ・式にする。 |
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4 |
実際にグループで0.01のランドルト環をつくる。 |
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○ |
予想した大きさよりすごく大きくてびっくりした。
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○ |
反比例の関係が身近な所に使われていることが分かり,すごいと思いました。
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○ |
0.01のランドルト環なんて,本当に作れる?と思っていたけど,実際に作ってみて“反比例”という関係を求めるだけで出来るんだなと思いました。
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○ |
私は目が悪いので0.01のランドルト環を見て目を大切にしようと思った。
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○ |
信号機など,いろいろな場所で困っている人がいたら,助けてあげたいです。
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○ |
私はこれからも数学の習ったことを思い出して生活でも生かして,日常でこんなことができるとみんなに教えてみたりしたいです。
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4.授業の考察
視力とランドルト環の大きさの関係を表・グラフ・式に表すことで反比例になることがわかった。表を作らせた時点で反比例と気づく生徒もいたが,ほとんどの生徒がグラフの形を見て,反比例に気づく生徒が多かった。式を作らせるときは,どの値をとればよいかわからない生徒に対しては,理論値の値に着目させて,作らせた。その後,視力検査表にはなかった0.01のランドルト環を実際にグループ活動で作成させた。生徒たちは想像以上に大きいことに驚きの声等も聞かれた。また,0.001はどうなるか?を反比例の式から考え,外側の直径が7.5mになることがわかり,とてつもなく大きくなることから,さらに驚きの声が聞かれた。また,健康教育の観点から目の大切さや弱視者への思いやり等についても触れることができた。
*自己評価表(32名) |
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とても |
すこし |
すこし |
とても |
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1 |
わかりやすい課題だった。 |
23 |
7 |
2 |
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わかりにくい課題だった。 |
2 |
自分の力で解決できた。 |
15 |
10 |
5 |
2 |
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人に頼った。 |
3 |
やさしかった。 |
9 |
16 |
7 |
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難しかった。 |
4 |
わかった。 |
28 |
1 |
1 |
2 |
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わからなかった。 |
5 |
楽しかった |
29 |
1 |
1 |
1 |
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たいくつだった。 |
6 |
集中できた。 |
27 |
3 |
1 |
1 |
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集中できなかった。 |
7 |
授業に参加できた。 |
25 |
5 |
1 |
1 |
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参加できなかった。 |
8 |
グループ学習がよい。 |
25 |
5 |
2 |
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一人学習がよい。 |
課題としては,やや難しかったようであるが,自力解決,グループ学習を通して解決できた生徒が多く,良い課題だったと思う。また,誰でもが知っている視力検査表(ランドルト環)ということで,わかりやすい課題であったとも言える。また,全体的に楽しく,集中して取り組める課題ではあったが,理解の遅い生徒にとっては,たいくつ,わからないという結果も見られた。
そこで,理解の遅い生徒にとっては,興味をひく内容であり,意欲的に取り組める課題であったが,問題を解決するうえでは,難しい課題だったように思われたので,次の学級では,習熟度別に学習を行い,次のような点に配慮して授業を行った。
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標準クラスにおいては,一斉授業と同じ方法で行った。 |
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基本クラスにおいては,次の点を注意して行った。
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ゆっくり一緒にできてよかった。
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ワークシートを全部うめることができた。
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式に表すのが難しかったけど,楽しかった。
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測ったり,計算したり,いろいろな活動が楽しかった。
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最後までできてうれしかった。 |
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5.成果と今後の課題
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成 果 |
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今後の課題 |
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