2021年度より学習指導要領に基づき教育課程が編成された。新学習指導要領では,社会に出てからも学校で学んだことを生かせるように三つの力となる「知識及び技能」「思考力,判断力,表現力等」「学びに向かう力,人間性等」が柱として整理された。
それらの力を育むために,主体的・対話的で深い学びの視点から周りの友人と共に考え,学び,新しい発見や豊かな発想が生まれる授業,一つ一つの知識が繋がり「わかった」「おもしろい」と思える授業を展開していくことが望まれる。そこで,新たな発見や豊かな発想が生まれる授業,一つ一つの知識が繋がり「わかった」「おもしろい」と思える授業を展開するにあたり,関数領域に絞ることとした。
中学校学習指導要領の第3学年の関数領域の目標には,『具体的な事象の中から二つの数量を取り出し,それらの変化や対応を調べることを通して,関数関係を見いだし考察し表現する能力を伸ばす』とある。生徒はこれまでに,第1学年においては,比例,反比例を,第2学年では,一次関数を取り扱い具体的な事象の中から二つの数量を取り出し,それらの変化や対応を調べることを通して,関数関係を見いだし考察し表現する能力を高めてきている。第3学年では,それらの学びを一層深めるとともに,事象の考察に生かそうとする態度を育み,後の学習の素地となることをねらいとしている。またこの関数領域は,社会における交通機関や郵便物の料金の仕組み,車の制動距離など身のまわりの事象にも関連していることからも大変意義深い単元である。
本指導案は,啓林館「未来へひろがる数学3(平成28年度以降用)」のP108,109の2いろいろな関数の教材を活用することとした。本校は新学習システムとして数学科,英語科において,個に応じたきめ細かな指導,さらに授業内容に自信を持って取り組めるようにする「基礎コース」,基本的な学習に加え発展的な内容も学習する「標準コース」を実施している。今回は基礎コースに焦点を当てた実践を行うこととした。
本学級の生徒は,活発に発言したり疑問に思ったことを積極的に質問したりするなど授業に意欲的に取り組んでいる。さらに,困っている友人に積極的に声をかけ,助け合う姿も多々見受けられる。しかし,事象を感覚的に捉えることを苦手とする生徒や昨年度の課題である自分の考えを他者に表現することを苦手とする生徒も多い。
そこで,本授業の指導においては,第1学年の比例,第2学年の一次関数の既習事項を再確認し,それを活用した課題を設定し,自分の学びを深め,考えを伝える場を設けた。本授業の課題は,身のまわりの事象として考えやすい場面ができるため,数学の苦手な生徒も取り組みやすい課題であると考えられる。同時に主体的・対話的で深い学びを活用し,まずは自分の考えを伝え,他者の考えを聞くことで多くの考え方に触れ,普段の学びと関連させて考える機会にしたいと考える。自分の考えを他者にわかりやすく伝える活動を通して,表現することの難しさや楽しさを感じる授業,事象を感覚的に捉える手がかりとなる授業を展開した。
第一次 関数とグラフ・・・7時間
第二次 関数の値の変化・・・4時間
第三次 いろいろな事象と関数・・・4時間(本時は第2時)
関数のグラフを個人や班員と求める活動を通して,次のことをできるようにする。
事象に適したグラフを選択する際に,自分の考えの根拠を明らかにして伝え,他者との相互作用を通して,考えを深める話し合い活動を設定する。
ワークシート,iPad,電子黒板,ホワイトボード,ホワイトボードマーカー
時間 | 学習活動 | 指導上の留意点 | 評価規準 |
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0 |
1 本時のめあてを確認する。 |
めあて 事象から状況を把握し,適したグラフを選ぼう。
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3 |
2 1・2年の内容の復習をする。 |
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復習課題1
からの水槽に1分間に2cmの割合で水を入れるときの様子を,入れはじめてからの時間をx分,底から水面までの高さをycmとしてグラフに表しなさい。 |
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復習課題2
図のような高さが同じ水槽に一定の割合で水を入れていく。水を入れはじめてからの時間をx分,底から水面までの高さをycmとして,適当なものを選びなさい。 |
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3 本時の学習課題を確認する。 |
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13 |
学習課題 右の図のような底が階段状になっている直方体の水槽に,毎分同じ割合で水を入れていきます。この様子を表すグラフはどれでしょうか? |
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主発問 この様子を表したグラフはどれかな。
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4 課題に取り組む。 【個人】 |
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28 |
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40 |
5 考え方の共有を行う。【班】 ※班員全員が役割を持つ。 |
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45 |
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6 発表係が代表で行う。 |
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まとめ |
7 本時のまとめを行う。 8 類題を解く。 |
・今日の学びを振り返らせる。 ・今日の学びを振り返らせ考えさせる。 |
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類題 右の図のような状態になっている直方体の水槽に,毎分同じ割合で水を入れていきます。この様子を表すグラフはどれでしょうか? |
本時で学習したワークシートである。【資料1】
今回は「基礎コース」の生徒を対象に行ったため,1・2年生の比例,一次関数の復習を取り入れ,段階を追って授業を行った。そのため,グラフを選ぶ際の理由が「分割して考えると・・・」「水が入る量が増えるので傾きが緩やかなにだんだんなっていく」など事象をしっかりと捉えることが出来ていた。また,授業終盤に類題を提示し,時間切れになってしまったが,休み時間にある生徒が(2)の課題に対し,「一番下と一番上の水の入る量は同じなので傾きは同じでいいんですよね」と発展して考えることも出来るようになっていた。
発展学習として,可能であるならグラフから水槽の形を予想するような学習課題に挑戦するのも思考力・判断力・表現力等の育成に繋がるのではないかと考える。
<参考文献・引用文献>
文部科学省 (平成29年7月)『中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 数学編』