2020年といえば,戦後75年,島本町町制施行80年のアニバーサリーイヤー。数学科教員として教師生活38年の区切りの年,還暦,退職,再任用,コロナ禍による緊急事態宣言,臨時休校など2020年はこれまでに経験したことのない,自分にとっても節目となる1年であった。そんな中,斎藤喜博(1969)「授業入門・未来誕生」の子どもを教育することの冒頭の一説が自分の中で改めて,授業を見直す大きなきっかけになった。その一節を紹介したいと思う。
子どもを教育するということは,どういうことなのであろうか。今まで,教師や親たちが,一般に考えていたことは,「しつけ」のよい子どもをつくるとか,算数のよくできる子どもをつくるとか,ただそれだけのことであった。もちろん,そういうことも大切である。しかし,教育はそれだけではない。教育は,それとは別に,無限の可能性を子どものなかから引き出すことに本質がある。どの子どももが,持っている力を,十分に伸ばし発展させるとともに,子どものなかにないものをもつくり出させ,引き出してやることこそが,教育における本質的な作業である。
また,斎藤喜博は,60年前に既に,教師たちは閉ざされた世界から脱け出して開かれた創造者に成長する道を示している。学校が危機的な状況を迎えている現在,学校の閉鎖性と独善性の文化を厳しく問い続けた斎藤の言葉「教師に何より必要なことは,厳しい自分の実践を持つことである。」は,時代を超えて響いてくる。
今回,2020年度のICT技術を活用したコロナ禍での授業の実践例を3つ紹介させて頂きたい。
コロナ禍のなか,授業動画の作成という課題に対して,試行錯誤の結果作成した授業動画が,これまで気が付かなかった自分の実践について再認識する機会を与えてくれた。
具体的には,
など効果は絶大。一度,授業動画を作成されることをおすすめする。
【ドラゴン桜 数学教師 柳 鉄之介セリフより引用】
数学とは,ある意味スポーツ。たとえば,卓球。【ドラゴン桜 数学教師 柳 鉄之介セリフより引用】
ネーミングも,【ピンポンフラッシュ】フラッシュカードをパワーポイント化し,√の中の数をできるだけ簡単な数で表す練習を繰り返し,反復練習しスピードを競うことによって,ゲーム感覚で定着させる。応用範囲も広く,他教科でも活用可能である。
3学年の円周角の定理を使って,角度の大きさを求める問題では,演習プリントの問題を画像として取り込む。プロジェクターで映し出された図を見ながら,生徒が自席に着席したまま,レーザーポインターを順番に操作しながら自分の考えを,説明することで,緊張感をもって授業に取り組むことができる。それだけでなく,生徒が前に移動する時間の短縮にも役立つ。また,密を避けるコロナ禍のグループワークとして効果が大きい。
レーザーポインターを2色使いこなすことで,複数の生徒がレーザーポインターをひとつの図にピンポイントで当てることで,より効果を上げることができる。
また,パワーポイントのスライドを生徒に操作させ解説させることで,授業にアクセントをつけることができる効果もある。
文部科学省は,これからの社会において,①文章や情報を正確に読み解き,対話する力②科学的に思考,吟味し活用する力③価値を見つけ出す感性と力,好奇心・探求力の三つの力が必要だと唱えている。これらの力を身に着けるための思考の基盤をつくるためにSTEAM教育を導入すべきとしているが,現場の教師自らが,日々の授業の中で,既成の枠にとらわれず,「形式主義」「個性のなさ」「保守性」「偏狭さ」から脱し,閉ざされた世界から脱け出す創造者を目指すことが,必要不可欠である。