本校は兵庫県内に16校ある総合学科の1つである。卒業後の進路は大学進学,専門学校への進学,そして就職の3パターンがあり,その中でも大学進学を目指す生徒はそれほど多くないのが現状である。しかし,どのような進路になったとしても,将来的に自分が学んだ事をまとめ,人前で発表する力や,チームで何かを作る力,資料を読み取る力は誰にでも必要とされるものである。総合学科の特徴として,1年次では産業社会と人間,2年次では総合的な探求の時間,3年次では課題研究が設定されている。これらの授業を通して,自分の調べたことを,自分の言葉でまとめ,他者に伝える力を養っていくことが目標の1つであるのだが,私が担当している1年次生の産業社会と人間の授業と英語や国語,数学といった教科との関連がまるでないように感じた。そこで,英語の授業に何か工夫を加え,産業社会と人間の授業目標に近づけるような活動ができないかと考え,以下の活動を行うことにした。
そして,これらの問題に共通していることは,生徒が「分かりません」と諦めてしまい,教師が単語の意味を表示したり,SVOCや文法を説明したり,日本語訳をしたものを,考える前に,言われた通りに書き写してしまうことだ。
これらの問題が少しでも改善されるような授業になるよう目標を持ち,以下の活動を実践した。
Revised LANDMARK English Communication ⅠのLesson8 “Mariko Nagai, Super Interpreter”を用いて授業を行った。Lesson8には,長井鞠子さんがどれほどの努力をし,通訳の準備を行っておられるのか,通訳という仕事の大変さ,ただの通訳ではなく,人に感情や気持ちを伝えるにはどのようにすればよいのか,などが書かれている。それらを文章で読むだけではなく,自分たちで通訳を体験してみることで,少しではあるが,Lesson8の本文内容をより理解できるのではないかと考えた。
まず,生徒たちに活動の内容を伝え,Part1のParagraph1を用いて,教師によるデモンストレーションを行った。ALTに英文を読んでもらい,JTEが通訳として,読まれた英文を通訳していった。
次に,Part1のParagraph2からPart4のParagraph2までを細かく区切り,生徒たちが担当する箇所を分担した。
英文を読む練習をする際に使う音読の音声をタブレットに入れ,操作の方法を指導した。
辞書や文法の参考書を一生懸命に引き,グループで協力し合いワークシートと日本語訳を完成させていた。「分かりません」と質問に来るのではなく,「関係代名詞が使われていることは分かったのですが,これは,こういうことですか」や「このitが差す内容は,私は~~だと考えたのですが,合っていますか」など,以前よりも具体的な内容を質問する生徒が多かった。何度も音読のCDを聞き返し,難しい発音の単語は,さらに電子辞書の発音の機能を使い,練習を繰り返す生徒も多かった。
それぞれの発表が終わった後に,「よく分かったよ」や「発音上手だね」と,生徒同士で称え合っている姿も多く見られた。最初は,話された内容をメモに取ることで精一杯だった生徒が,だんだんと顔を上げて発表を聞き,頷き,メモが取れたらペンを置き発表者への合図を送ることができるようになった。この活動をした5時間の間に,生徒の成長を見ることができた。
上記のように,生徒自身が自分たちの役割をしっかりと果たし,互いの発表を聞きながら行った授業に対し,生徒達は次のような感想を書いてくれた。
また,授業の感想の他にも,難しかったことや自信がついたこと,楽しかったことなども次のようにまとめてくれた。
これら生徒の振り返りから,英語に対しては苦手意識を持っていた生徒も,少しずつ自信を持て,英語を楽しめたように思えた。自分たちで責任をもってやらないといけないというプレッシャーはあっただろうが,練習を入念に行う生徒や,事前に予習として質問に来る生徒,発表の直前の休み時間まで一生懸命に発音練習をする生徒の姿を見ることができ,自分たちで学習しようとする意欲が高まっていると感じた。Lesson8の本文内容にもあった,長井さんのモットーである”Careful preparation and hard work never fail”を,生徒自身が体感できたように感じた。また,聞く側の生徒もしっかりメモを取り,英文と照らし合わせながら理解しようとする姿も印象的であった。生徒たちは,おおむね良い意見をフィードバックとして挙げてくれたが,まだ課題も多く残る。今回の活動はパートを分担して行ったため,それぞれの生徒が取り組んだパートが異なる。その為,本文のパートごとに内容の理解度が異なってしまう。その点を改善し,全部の範囲に全員が同じ時間をかけて触れ,内容理解していく時間を持てるような授業構成を心掛けたい。
最初に述べた通り,本校は総合学科であるため,特別に設定された科目がある。よって,他校行では通常1年次で英語の授業が5時間あると思うが,本校は4時間しかない。それに加え,4・5月の緊急事態宣言による休校の為,「ここまでは1年次で終わらせなければ」と私自身が焦ってしまい,教師主体の詰込み教育をしてしまっていた。どんな状況になろうとも,生徒が考えるチャンスを奪わないような授業計画を綿密に立てていかなければならないと改めて感じた。