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英語

4技能統合型英文法指導法PPP( Pattern Practice Pairwork )の実践とその効果について

北海道室蘭清水丘高等学校 小林 佳

1.PPP( Pattern Practice Pairwork )とは

パターンプラクティスとペア学習を融合した文法指導法です。立命館中学校・高等学校教諭 今井康人先生が命名され,その効果と指導の有効性を「英語教育今井塾」をはじめ,セミナー等で今井先生がご指導されています。小林の実践としては,本校2015年度入学生において2年半に渡り,進学補習・講習等で導入し現在ではC英語Ⅲの授業でも取り入れています。小林はここ数年今井先生のセミナーで英語指導法を学びながら,PPP と英語の自動化を目指した授業を日々模索しています。

2.PPPの効果

PPPはペア活動を通して文法学習を行う「学習者主体の文法指導法」です。その効果は模試等で爆発的な英語力の伸長をみせ,特にセンター試験の平均点では本校経年比較+20点という結果を導き出しました。当然のことながら,2018年入試合格実績にも多大な影響を与えました。進研模試での英語力の変容は以下の通りとなります。

偏差値学年平均の推移(進研模試 英語)
2015年
入学生
1年7月
記述
1年11月
記述
1年1月
記述
2年7月
記述
2年11月
記述
2年1月
記述
2年2月
マーク
1 44.9 2 47 3 47.5 4 48 5 47.7 6 48.5 7 49.1

学年全員受験のみ掲載(2月マークは希望者受験)

本校経年比較上,該当学年の英語力は圧倒的に高く,受験期においては英語以外の科目にもバランス良く学習時間を割くことができたようです。その結果,現役国公立合格者数の飛躍に繋がったと考えます。

国公立大学合格者数経年比較(2016年~2018年)

2018年 2017年 2016年
現役国公立大合格数 24名 9名 11名
2018年入試
現役合格国公立大
防衛医大・秋田大・弘前大・札幌市立大等10大学

2018年センター試験受験者数
97名

3.PPP英文法指導の特徴

PPPでは生徒の一人は解答者,もう一方は評価者として全員が能動的に学習することが求められます。解答生徒は口頭で問題を解くため,多くの解答数を要求されます。評価者生徒についてはパートナーの解答を確認し,場合によっては解答生徒に解法ヒントを与えるため,解答生徒よりも文法問題により深い思考を必要とされます。つまりPPPでの重要な役割は解答者生徒よりも,評価者生徒であることが大きな特徴と言え,生徒は生徒自身の立場と,解答を指南する教師としての立場を交互に経験しながら,より深い文法知識を無意識のうちに習得することになります。ここがPPP英文法指導の本質と言えます。

またPPPでは4技能全てを使用し協働的に学習することで,生徒にとっては楽しく文法学習を追及できる時間となります。英語4技能全てを高める効果もあると考えます。


~ PPPの様子① ~

4.実施方法


~ PPPの様子② ~

5.C英語での実践

今井康人先生がセミナーで提唱されている英語の自動化「理解・内在化・発信」授業をC英語Ⅲで実践しています。PPPは主に「内在化」の中で展開しています。文法理解をしながら英文を覚えることに最適な活動であると考えています。15分程度の時間で行うことができ,授業は活発化し生徒は自ら課題解決に邁進します。以下が教科書本文を用いた実際のPPP英文と指示になります

PPP C英語Ⅰ(エレメント・啓林館)

指示1(生徒Aの指示) 英文1と2を1文にする。

1.Humans are fighting against a computer 2.It is very small.

生徒Bの解答

Humans are fighting against a computer which is very small.

P38 教科書本文の英文になる。

指示2(生徒Aの指示) 英文1を現在時制から過去時制にする。

1.Asimov is not the only person that makes predictions about the future.

生徒Bの解答

Asimov was not the only person that made predictions about the future.

P39 教科書本文の英文になる。

C英語の教科書を使用したPPPでは,文法学習・内在化・内容把握を同時に行うことができます。
4技能の向上にも役立ち,QAとTFを同じ授業内で行うと英語力の向上がさらに見込めます。

6.例文集の内在化

高校入学時から例文集を内在化させることは非常に重要です。PPPで教え合う効果で定着度が増します。( Vision Quest 例文集 )

指示1(生徒Aの指示) 次の英文を関係詞を用いた英文にしなさい。

We went to Sydney and stayed there for a week.

生徒Bの解答

We went to Sydney, where we stayed for a week.

7.まとめ

高校生が高い英語力を習得する「鍵」は入学時からの2年間だと考えます。PPPで多くの語彙・例文を内在化し発信活動(opinion,英作文等)と連動させることで基礎が出来上がり,三年次の爆発的な英語力の飛躍につながると考えます。①~④を徹底することが大切だと考えます。

今回ご紹介したPPPは高校英語の基礎を構築する「4技能統合型文法指導法」であり,生徒と教員が楽しみながら英語を習得できる手段として,多くの日本中の教室で導入されることを期待しています。