私が現在勤務する長崎県立長崎北陽台高等学校は,普通科と理数科を併せ持つ県内最大規模の公立高校である。緑豊かで閑静な環境の下,生徒は日々学習に励み,卒業後は国公立大学等に毎年多数進学している。
また,部活動においても強豪として全国的に有名な本校のラグビー部は,全国大会(花園)でも過去準優勝した経験があり,他にも、夏の全国大会(甲子園)でベスト8入りして「青い旋風」(本校のスクールカラーが淡青色のため)と謳われた野球部や九州有数の強豪である男子バドミントン部や登山部等,数多くの生徒が学習と部活動の両立を実践している。
以上,英語教師としては非常に恵まれた環境で,平成15年から9年間生徒達を指導してきた。今回の授業実践記録では,平成25年度より実施される新学習指導要領を鑑みて,そのポイントである「英語を用いて生徒が活動することを中心とする授業」への取り組みの一例を報告する。
私は,アメリカのハワイ大学で日本の中学・高校教師を対象にした英語研修に参加する機会をいただいた。その際,現地の講師陣より指導を受けた教授法をヒントに,実際授業で実践・活用した内容を,ここで紹介する。
Extensive Reading
ここ数年,大学入試センター試験や各大学の入試問題においても長文化がかなり進んでいるのに対して,高校生が教科書を使って3年間で読む英文がかなり少ないことを日頃から痛感していた。
その一助となればと思い,まずは教科書以外の英文素材(サイド・リーダー)を集め,それを休暇の課題として生徒に読ませることから始めた。本校生が長期休暇中に読むのに適当な内容・分量と考え,選んだものを下に記す。
・ Penguin Readers | Level 2 (Elementary 600words) |
Level 3 (Pre-Intermediate 1200words) | |
・ Evergreen Series | (800words, 1000words, 1200words) |
・ SCHOLASTIC Readers | Level 1 (Elementary 600words) |
Level 2 (Pre-Intermediate 1000words) |
指導の流れとしては,以下の通りである。
タイトル:The finest young woman(Grace Daring)
On a stormy September morning, a ship lay wrecked on a rock off the shores of the Farne Islands. There were 12 people on the rock. They were nearly dead with wet and cold. Grace Daring, the daughter of the lighthouse keeper on one of the Islands, looked out over the waves and saw the wreck of the ship. At first, she couldn't see any people, but soon after she saw some men on the top of the rock. She wanted to help them, so she told her father about it at once. Her father looked at her and said, "We must try to save them. Will you come?" she agreed quickly. They took out the lighthouse boat to try to save those poor people.
Picture Painting
新課程コミュニケーション英語Ⅰの教科書である啓林館ELEMENT English CommunicationⅠには,実際の本文に至る前の2ページを割き,"Graphic Introduction and Retelling"という部分がある。
ここには今から学ぶ内容を示唆し,高校生にとって興味深い絵や写真が10数枚記載されているので,英語4技能を養成する活動に利用したい。例えばLesson1 "Samurai and English"は「明治の文豪福沢諭吉の英語学習との出会い」をテーマにした内容であるが,福沢の青年期の写真や,彼が渡米した際の咸臨丸の絵,初代大統領ジョージ・ワシントンの肖像画,日本の訪問団が大統領に謁見した際の絵等12点がある。現在,私が考えている授業展開(導入例)は以下の通りである。
生徒が英語の面白さを知り,かつ英語の4技能を伸ばすには,教師から与えられた教材を使用するだけではなく,生徒自身が「読みたい!書きたい!聴きたい!話したい!」と思うものを使用することが最も有効であると思う。そのために我々教師が工夫して,学習者の主体性を尊重した授業展開を行うことができれば,授業が活性化することは間違いない。これからもこの視点を忘れず,同僚とも意見交換をしながら,4技能が統合された授業プラン作りをこれからも進めていきたい。
(参考文献)Kathleen T. McWhorter "Academic Reading" sixth edition