本校は創立70周年を超えた地域の伝統校で,生徒のほぼ全員が大学進学,とりわけ難関国公立大学への進学を希望している。近接する千葉大との高大連携に取り組み,07年度に2学期制,08年度には単位制を導入した。部活動も盛んで,生徒の加入率は約98%に達する。英語の授業展開は,私が赴任した10年前に既にほぼその形態が整っていて,教材,進度,課題量などがしっかりと定まっており,授業を実施していくことに向けては,不安は少ない。しかし,教育課程上2年次に設定している「ライティング」の授業(3単位)だけは,なかなか思うような展開できず,各先生方といつも苦労していた。どうしてもマンネリ化が否めず,生徒の学力を引き上げる実感がなかなか得られないため,今思うと,できる限り手早く終わらせることだけを考えた授業を行っていた。
一方,生徒が進学を希望する難関国公立大学で出題される問題には,必ず英作文が設定されている。さらにその英作文問題は合格要求学力水準を検証してみても,ある程度得点できることが必須となっているのが実情である。こうしたことから本校のライティング指導は,生徒の確固たる英語力をつけさせる目的だけでなく,生徒や保護者の進路志望実現を図る上で喫緊の課題となっていた。
こうした状況下で,私が学年を受け持った平成19年度生に対して行ったライティング授業の実践記録をまとめさせていただきたい。
(1)導入(10分)
(2)展開(35分)
(3)まとめ(5分)
教科書に出ている基本例文がおおむね8~10文ほどあるので,そこから毎回5文を出題する。解答用紙を配布して,教師は口頭で和文を提示する。終了したら,3~4人ずつのグループを作り,机を移動させ,採点作業に入る。採点は教科書の例文と照らし合わせて2分間で行い,再検まで行う。教師はタイムキーパー。
文法については要点のみ,詳細はあまり語らない。不明な点はある程度自分で調べさせたい。時々,グループ内で話し合いをさせてみることもあるが,必ず時間制限をする。
生徒は予習段階で解答してあるので,まずグループ内で解答を見せ合い,互検。その後,教師から正答の提示を口頭で行う。設問量にもよるが,教科書はそれほどの量がないので,解答確認も2分~3分程度。
まず,予習してきた解答をグループ内で見せ合い,正答を考えさせる。与える時間は2分×設問数。その時間内に教師は机間巡視し,必要に応じてヒントを与えることもある。終了後,グループを指名して板書させ,教師が解説を行う。
前時に配布し,生徒があらかじめ書いてきたワークシートをお互いに読み合う。その際に気がついた間違いは朱書きを入れさせる。また,簡単に感想も書かせる。時間は各2分×4。教師はタイムキーパーをしつつ机間巡視してコメントや間違いを指摘することもある。互検後,ワークシートを提出させる。
ワークシートはこちら [5.77MB]
当初,グループ活動を多くすることに私を含め学年の担当者には戸惑いがあった。しかし,意外にも生徒たちは違和感なく,というよりむしろ喜々として机を移動しグループ活動を楽しんでいた。後からわかったことだが,中学校における班学習経験の影響が大きかったようだ。
また,生徒にお互いの英文を見せ合うことにより,二つの効果が生じたようだ。一つは他人に見せることを意識して書くようになった。内容や表現方法,書き方まで意識することが当然になった。二つめに予習習慣が定着した。この授業展開では予習してこないと,自らが参加できないだけでなく,グループ内の他の生徒に甚大な迷惑をかけることになるため,予習の必然性が増した。
更に時間制限を設けることによって,短時間に集中してミスを探すことにつながった。最難関大学の入試ですら,答案には三単現や時制,数といった基本的なミスが目立つといわれる。日常からミスを見つける習慣は,間違えない姿勢につながっていったように感じた。また,時間制限は,アウトプット型の授業がどうしても間延びしがちになることを防ぎ,授業のメリハリをつけることに役立った。
そしてこれが最も大きい効果であったと思うが,生徒が英文を書くことに抵抗感を感じなくなったことである。以前であれば,和文英訳ならまだしも,課題型の作文では白紙に近い状態の生徒も少なからずいたが,この授業展開後はこうした問題でも,「書けない」という生徒はほぼいなくなった。
この授業実践を通して生徒に変化が生じたことはとてもよかったと感じているが,まだまだ改善点は多々あり,この後も学年ごとにマイナーチェンジを繰り返している。今回,この原稿の作成を機に,本校で展開してきたライティング指導をまとめることができ,啓林館の関係者各位に深謝する次第である。