児童書を出版するということ
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本は、いろいろな目的を持って出版されています。
大人向けの本、子ども向けの本、旅行好きな人が読みたい本、料理をつくるときに読みたい本など、さまざまです。
子ども向けの本では、学習に役立つ本や、子どもの興味関心を広げるのに役立つ本が多くあります。
小中及び高等学校などで使用する教科書は、学習指導要領の内容を踏まえて教科の内容をわかりやすく理解できるように工夫をして出版されています。
子どもたちが使う問題集は、学力の定着や自分で学んでいけるように工夫をして出版されています。
そして児童書では、本を通じて知らない世界や新しい事柄に興味を持ってもらい、それを子どもにわかりやすく伝えることを大事にして出版をしています。
児童書を通じて、古今東西のさまざまな出来事や最新の情報を、いかにしてわかりやすく伝えることができるのか。このことは児童書を企画し、制作する上で大事なことです。
読者に対して、どんな児童書を出したいか? それを考えることはとても難しいですが、また楽しいことです
乳幼児向け絵本は、家族とのかかわりを通じて豊かな感性を育むことができるような本をつくりたい。
幼年絵本や絵童話は、集団生活が始まる中で、友だちや周りの人への思いやりを育むことができる本をつくりたい。
小学生以上に読ませたい読み物は、日本の創作読み物だけでなく、世界中の読み物を出版することにより、子どもたちの心の成長の糧になるような本をつくりたい。
学習向けの図鑑は、世の中のさまざまな出来事や情報をわかりやすく伝えることを工夫した本をつくりたい。
これら児童書の企画方針と編集者の思いを、作家や画家や翻訳家、また一緒に制作をしてくれるライターやイラストレーター、デザイナーなどと共有して、子どもに伝えたい本ができ上がります。
そして、その思いがつまった児童書を、書店のみなさんや司書のみなさんが子どもたちに伝わるように紹介をしてくれています。
一例として、1977年に初版発刊以来、今日までに140万部以上販売している絵本「もこ もこもこ」をご紹介します。発売以来40年以上経っていますが、今では、お母さんたちが子どものころ、ご自身のご両親や祖父母に読んでもらった記憶から、手に取ってご自身のお子さんに読み聞かせていることが増えております。三世代にわたり読み継がれている絵本になりました。
2019年には、第66回青少年読書感想文全国コンクール課題図書に選定された文研ブックランド「青いあいつがやってきた!?」を出版しました。小学校中学年以上を読者層とした、創作物語です。転校したばかりで不安や悩みがいっぱいの男の子を、空からやってきたカッパみたいな生き物が一緒に考えてくれます。登場人物もさることながら、話の展開にぐいぐい引き込まれていきます。
(この本は、2020年6月から日本全国の書店で、課題図書の帯を巻いて販売されています)
2016年には、ノンフィクション作品の文研じゅべにーる「髪がつなぐ物語」を出版しました。この本では、「ヘアドネーション」という、長く伸ばした自分の髪を散髪して寄付をする活動を紹介しています。この本を通じて、「ヘアドネーション」の活動を知った子どもたちが多くいました。
最近の小学校の様子から考えられた企画が、「ひと目でわかる!教室で使うみんなのことば 全5巻」(第1期、第2期)です。このシリーズは、外国籍の子どもたちが、学校生活で困るような言葉や活動を、イラストにしてわかりやすく多言語で紹介した絵本です。第1期は日本語の言葉やセリフすべてに、英語・中国語・ポルトガル語・フィリピノ語の訳を掲載しました(詳しくは文研出版ホームページをご参照ください)。この企画は、学校生活を送るいろいろな国籍の子どもたちが、少しでも学校生活に慣れていただき、楽しくすごしてもらうことを願って、学校の先生方と一緒に制作しました。
児童書の可能性は、無限です。世の中のいろいろな課題や取り組みを、児童書を通じて紹介をしていくこと。そんな児童書を読んだ子どもたちが将来、さまざまな課題を解決するために取り組んでいく。そして、だれにとっても住みやすい世界をつくっていく。
そんな未来を願っております。
文研出版 小林篤