1.はじめに

4年生の面積の学習で,複合図形の面積を求める学習は,いろいろに工夫して考えたり公式の活用をしたりすることを通して一段と児童に力をつけることができるところである。児童は線で分けたり切ったりひっくり返したりして求め方を発見して楽しさを味わうことができ,多様に考えるきっかけをつかむことができる。

右の問題は,使用している教科書の問題(啓林館 教科書4年上p94引用)で,実際に辺の長さを測って長方形の組み合わせから式を考えて,3通りの方法で面積を求めていく。この学習を経て習熟を図る問題に取り組むが,複合図形が長方形の組み合わせで構成されていることを,算数的活動を通して十分思考させて分からせて求積の式に結びつけていく力を育てて5年生につなげたい。そこで,復習と習熟を図る問題として,3月頃に実施できる指導を提案したい。

2.実態と指導

L字型の図形の求積の問題は代表的な問題であり,複合図形の面積をいろいろに考えて求めていく上で,どの児童にもきちんとできるようにさせておきたい。

学級のこれまでの指導としては,すでに12月と冬休みと1月初旬にかけて既習内容の復習を手がけてきた。その結果,本学級の児童は複合図形の面積を求める力と式をよむ力を充実させねばならないことが明らかになった。そこで,まず4年生最後の単元となる「分数」終了と同時に教材「もうすぐ5年生」を基本にして,各領域に基本問題と応用的な問題を用意して指導に当たることにした。特に,面積の求め方では,まず基本を復習して問題解決に取り組ませ,算数的活動を通して問題を解く楽しさを味わわせる工夫も取り入れた。

また,児童にはなじみのある複合図形を取り上げ,学習した面積の求め方以外にも工夫して面積を求めることを考えさせることで,解決方法の広がりから多面的に面積を求めることの楽しさや良さを感じ取らせ,式を立てていくことの大切さを改めて知らせていく工夫もしてみた。

3.実践

本学習は,使用教科書(啓林館)の3月の内容に沿って計画している。

              

1 教材

「もうすぐ5年生」(単元としては挙げられていません)教科書下P75〜78

2 目標

  • 「数と計算」,「量とはかり方」,「図形」,「数量の関係,問題の見方・考え方」のそれぞれの問題を,これまで学習したことをもとにして,意欲的に解き進めようとする。(算数への関心・意欲・態度)
  • 既習の学習や算数的な活動を通して,見通しをもち,筋道を立てて,考えることができる。(数学的な考え方)
  • 数量や図形のいろいろな問題について,式に表したり,計算を正しくしたりすることができる。(表現・処理)
  • 数量や図形のいろいろな問題について,それらの意味,性質などについて理解することができる。(知識・理解)
                                  

3 教材について

本教材は,教科書に4年の総復習として位置づけられている。単元としての設定はされていないが,4年生の算数の学習内容が網羅されており,実態に応じて問題の取り扱いに軽重をつけることができ,短期間の復習とてして効果的な教材である。3月のまとめの時期の中旬に実施予定で,教科書4ページで6時間の配当になっている。構成としては,それぞれに工夫された問題で児童が理解して,解決しておきたい内容ばかりであるが,補充をして習熟を図るために4年生で使っているワークやプリント等も織り交ぜて対応していきたい。

また,総復習のところなので,教科書の設定の時間よりも多く14時間とり,各領域の苦手なところと大切なところで習熟を図っていく計画を立てた。

 

4 指導計画 (全14時間)

領域 主な学習内容及び学習活動 時間
  • 数と計算
  • 大きな数の大小比較
  • 小数,分数の大小比較
  • わり算
  • 小数の加減計算
  • 数の相対的な見方
  • 概数処理
3時間
  • 量とはかり方
  • 角度の測定
  • 長方形及び正方形の面積
  • 面積の量感と単位の選択
  • 情報選択と面積の公式の利用
  • 面積の求め方の工夫(本時4/4)
4時間
  • 図形
  • 垂直と平行
  • 台形,平行四辺形,ひし形
  • 直方体,立方体
ここは移行措置のため内容が総入れ替えとなる。
3時間
  • 数量の関係,問題の見方・考え方
  • 折れ線グラフの表し方,よみ方
  • 順にもどして考える問題
  • 二次元の表に表して考える問題
  • 何倍になるかを考えて解く問題
3時間
  • 評価
  • 4年のまとめテスト
1時間

5 本時の目標

  • 複合図形の面積を求める式から,その考え方を見つけることができる。
  • 既習の方法を使ったり,友だちと意見交換をしたりして,意欲的に解決に取り組むことができる。

6 学習指導過程

段階 学習内容及び学習活動 指導上の留意点 資料

準備等
つかむ10分

1 これまでの面積の学習を振り返る。

  • 前時までの学習を想起する。
  • 本時前の問題をする。
  • 長方形や正方形にしていくことで面積を求めることができることを確かめる。
掲示用のL字型図形
  • 1つの式で求めなくてもよいこととする。
  • 既習のア,イ,ウ,の
    求め方を復習する。式と図形を対応させて,児童が理解できるよう,ていねいに指導する。

★本時の学習について理解し,見通しをもつことができたか。(観察)

2 本時の学習問題を知らせる

左の図形の面積をア,イ,ウ以外の方法で考え4通りの考えがでてきました。それぞれの式は,どのようなもとめ方をしたのでしょうか。

エ 4×4×5  オ 4×(8+4+8)
カ 8×(8+4÷2)  キ 8×(8+4+8)÷2
掲示用のL字型図形
解決する15分

3 問題の解決に取り組む。

  • 一人で解く。
  • ペアで話し合う。
  • 全体で交流し,友だちの解き方と自分の解き方を比べる。
  • 式と図形のプリントを配り,かき込んだり,色を使ったり,切ったり,貼ったりして,式に対応した求め方を考えさせる。
  • 方法を考え出しても式の出し方や計算の仕方でつまずく児童がいると予想されるので,机間指導で対応していく。
ワークシート

4 面積を求める方法を話し合う。

  • 考えた求め方を発表し合う。
・予想される求め方(書き込み)
  • エについては,4×4=16,16×5=80と解いたり,オは,8+4+8=20,4×20=80など,必要な縦と横の長さを出してから,縦×横の公式で解いていく児童が多いと予想される。1つの式で求めながら考えることに取り組む児童には,式と図形の対応を正確にできるよう助言する。
深める15分

★式をよみ,面積の求め方を見つけることができたか。(発表・観察)

  • 図形の面積の求め方について考えたことや感じたことを述べ合って本時問題をまとめる。
  • いろいろな求め方があることを実感させ,面積の学習についてさらに意欲を持たせていきたい。
まとめる5分

5 本時学習についてまとめる。

  • ふくざつな図形もいろいろに工夫して求めていこう。

6 次時の学習内容を知る。

  • 次時は「○○」について挑戦していくことを知らせ,次時の学習への意欲をつなぐ。

〜授業の記録〜

「つかむ段階」のアイウの問題から
スタート

まず教科書(上)のP94を最初に見せて,L字型の図形の面積の求め方を思い出させた。

次に,左のアイウの問題を提示すると,「むずかしい・・・」困っているつぶやきが聞こえ,4と8と12の数字の意味をつかめない児童がいた。そこで,イとウを指導案の( )をつかった式に変え,長方形が組み合わさってできていることを確認して辺のとらえ方を話し合った。共通理解ができたところで,本時の問題を提示した。(黒板は書き換えました。)

「解決する段階」の問題
エオカキのスタート
エの問題 「正方形が5個分だよ。」
本時は,ワークシートを使用。
式をみて求積の仕方を考えることに意欲満々の雰囲気。
4X4の秘密に気づいた児童。チョークを使って,色で切り分けて説明できた。
「ねぇ切ってみる?」 オの問題 「長方形にするんだよ。」
「先生,はさみを使ってもいいですか?」
図形へのかき込みを納得するために,別に実際に長方形に変形させて確かめをする児童たちもいた。
オの式は長方形に等積変形した考え方の式で横の辺が(8+4+8)cmになることに気づいた。掲示用の問題を実際に切って説明できた。
キの問題 「ぼくが解いたよ。」 キの問題 「÷2で気づいたよ。」
「ほら。大きな長方形になってる。」  求積する図形を半回転させ,2倍の面積の長方形をイメージしてできた式だとわかった。
カの問題 ・・・が残った・・・ 「ここがポイントかな?」
友達と解き方についての意見交換。考えている図形についての数値を明らかにして話し合う。 「長方形にならない?」
「とび出してるところを切ってみたら?」
「先生,来て。分かったよ。」
「カが解けた。」 やっと完成

エオカキの式の考え方は,長方形の組み合わせに変えて,縦×横の公式に沿って面積を求めていくということで学習をまとめた。

児童のワークシート例

4.おわりに

授業の全体の交流(話し合い)の時間に,右の写真のかたまりができていた。上のワークシートを書いている児童の席である。「すごい。」「どうやったら,こんなに書けると?」ここからまた学習が広がった。算数好きが増える。

児童は,算数ができるようになりたい・問題を正確に解きたいと思っている。本実践の後に児童から最も多く出てきたのは,「最初は難しかったけれど,面積を求めるのって考えるとおもしろい。」という声である。「式って意味があると,あらためて思った。」(児童の日記より)という児童も多かった。授業の改善と,児童がうなる問題の工夫も必要である。

複合図形の求積は長方形と正方形の求積をふまえての発展であるが,児童に基礎基本の理解を徹底しておかねば気付かせることができないと改めて思った。(本実践は,できれば3月頃の4年生の仕上げの時期の頃が児童も楽しめるだろう。5年生と6年生の復習としても良いかもしれない。)