1.はじめに
新学習指導要領では,算数的活動がより一層重視されている。算数的活動とは,児童が目的意識をもち主体的に取り組む算数活動するためには授業にかかわりのある様々な活動である。
今まで,算数的活動としてできるだけ具体物を操作したり,身の回りから教材をみつけそれを活用した活動を児童は積んできた。しかし,算数的活動とはそのような体験的・作業的な活動だけでなく算数に関する課題について考えたり,算数の知識を用いて表現したりする活動も含まれるとある。
そこで,今回算数の課題に注目し,その課題を児童が選択し,自ら選んだその課題を自力解決するという算数的活動を取り入れた授業を実践したい。教師から与えられた課題を解くといった学習ではなく,児童自ら課題を選ぶという主体的な学習へと転換することで,算数を学ぶ楽しさがより実感できる考える。
2.単元名「ひっ算のしかたを考えよう」
3.単元の目標
数の仕組みに着目し,簡単な3位数の加法及び減法の筆算のしかたを考えようとする。(関心・意欲・態度)
既習の2位数までの計算をもとに,簡単な3位数の加法及び減法の筆算のしかたを考える。(数学的な考え方)
簡単な3位数の加法及び減法の筆算ができる。(表現・処理)
簡単な3位数の加法及び減法の筆算のしかたを理解する。(知識・理解)
4.本時について
本時は第3小単元で取り扱う簡単な3位数の加法・減法は新学習指導要領で新たに追加となった学習内容である。すでに児童は,一の位でくり上がりのある2位数+1,2位数の筆算,及び一の位でくり下がりのある2位数−1,2位数の筆算の原理や手順は学習してきている。
また,本単元の第1小単元,第2小単元にて,十の位や百の位へ繰り上がる筆算の仕方や十の位や一の位へくり下がる筆算の仕方を考える学習を行っている。
第3商単元ではこれら既習事項を使い3位数の加法及び減法の筆算のしかたを既習事項から児童が自ら類推し,半具体物の操作や図,言葉で筆算のしかたを見つけられるようにしたい。
5.単元計画(14時間扱い)
時 |
学 習 活 動 |
2位数の加法の筆算
(4時間) |
○
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83+46の筆算のしかたを考える。 (百の位への繰り上がりあり) |
○ |
76+58の筆算のしかたを考える。 (十,百の位への繰り上がりあり) |
○
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46+57,93+8の筆算のしかたを考える。 (百の位への波及的繰り上がりあり) |
○
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3位数+2位数の計算のしかたを理解し,計算することができる。 |
2位数の減法の筆算
(5時間) |
○ |
129−53の筆算のしかたを考える。 (十の位への繰り下がりあり) |
○ |
146−89の筆算のしかたを考える。 (一,十の位への繰り下がりあり) |
○ |
102−65の筆算のしかたを考える。(2時間) (一,十の位へ波及的繰り下がりあり) |
○ |
学習内容の習熟を図る。文章問題に取り組む。 |
3位数の加法・減法
(4時間) |
○ |
400+100や600−200などの100を単位とした3位数の加法及び減法の計算のしかたについて既習の計算をもとに筆算で考える。 |
○ |
3位数の計算も2位数までのやり方と同様に加減計算することができることを知るとともに,筆算のよさややり方を理解する。【課題の選択】 |
まとめ
(1時間) |
○ |
基本的な学習内容について理解する。 |
6.児童が課題を選択するという算数的活動について
3位数の加法・減法の筆算という初めての学習内容であっても,今まで学習した筆算の原理や手順から十分自力解決できると考えた。
「たしざん」「ひきざん」を選択できることは,算数への興味・関心を引き起こすだけでなく,その課題をやり遂げようとする意欲も高まると考えた。また,課題を選べることで,見通しをもち解決していくことができるのではないかと考えた。
また,児童が思考活動を十分に行うための時間を確保するため,1時間目に課題の選択及び自力解決を行い,2時間目に検討及び適用問題を行うことにした。
7.実際の授業
I 課題把握 (3次 3/4時間目) |
けいさんのしかたをかんがえよう。 |
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II 自力解決 |
○解決の見通しをもたせる。 |
T:どんな方法で解けそうかな。 |
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T:どんな計算になりそうかな。 |
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○課題を解決する。 |
T:今日は,「たしざん」か「ひきざん」のどちらか選び,えらんだ式の計算のしかたを考えてみましょう。 |
【加法】グループ
◆筆算で考える。
◆タイルで考える。
◆お金で考える。
◆サクランボ図で考える。
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【減法】グループ
◆筆算で考える。
◆タイルで考える。
◆お金で考える。
◆サクランボ図で考える。 |
III 解決の検討・まとめ (3次 4/4時間目) |
○考えを発表する。 |
T:それぞれのやり方を発表しましょう。 |
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タイルで考えた児童の発表。 |
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お金で考えた児童の発表。 |
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サクランボ図で考えた児童の発表。 |
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筆算で考えた児童の発表。 |
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発表をさせながら,それぞれの考え方の共通点,相違点を見つけていく。
そのなかで,筆算のよさに気づかせていく。 |
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◆ |
まとめをする。
その方法は3位数+2位数,3位数−2位数の計算でも,今までの筆算と同じように計算できる。「繰り上がり・繰り下がり」のやり方がつかえることを押さえていく。
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○適用問題を解く。 |
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8.成果
○ |
学習課題を「選択」できるということで,児童は自分にあった課題を選んでいた。学習感想では,選んだ理由として「簡単に解けると思ったから」「考えやすいから」という言葉が出てきており,児童自身,自分に合った課題を選択したようだ。また,選べるという算数的活動は,課題に対し自主的に取り組む意欲をより喚起させ,いつも以上に楽しく学習する様子がみられた。 |
○ |
今回は,座席も加法グループ,減法グループに分けた。隣同士のつぶやきがヒントになったり,既習事項を活用したりして,その子も自分の考えをまとめることができた。また,解決の検討の際も,自分の考え方を確かめるだけでなく,違う演算を選択したグループの発表を聞くことで,多様な考え方を知り,その考え方に共通する部分を見つけるような話し合いをすることができた。 |
○ |
適用問題では,加法グループでは減法の問題を減法グループでは加法の問題を解く場を設けることで互いの学習の成果を活用し,3位数と2位数の加減について理解を深めることができた。 |
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