5年
メダカのペーパーモデル作成により子どもの観察技能を高める
茨木市立茨木小学校
泉 光郎

1.はじめに

 理科において大切にしたいことは,様々な「きまり」を覚えることではなく,実験や観察からの「事実」から,子ども自身が「きまり」を考え出すことではないかと考えます。

 しかし,実験や観察において,子どもたちが「本に書いてあること」と違う「事実」を見た時,「失敗した」とか「見間違えた」とそれ以上の興味や関心をしめさないことがよくあります。このことは,自分が見た「事実」より本に書いてある「きまり」を大事に考えてしまう態度の表れではないでしょうか。子どもたちに「自分が見た事実」を大切にする態度をつけさせるためには,自分の見た事に自信を持たせる事が大切であり,そのためには,「何をどのように見ればいいのか」ということが分かる技能が身につかなければならないでしょう。

 ところで,メダカを水槽に用意すると,子どもたちはすぐに興味を持ち,飽きずにずっと見ています。しかし,「ヒレは,何枚」という質問をすると,「一枚(尾びれ以外見えてない)」とか,「五枚(本で見たメダカを思い出してか片側しか見えていない)」とか答えたりします。このように,目的が子ども自身にないままの漠然とした観察では,技能は上がらないように思います。そこで,「メダカのペーパーモデルを作ろう」を活動の中心にして,子どもたち自身が必要を感じて観察を行い,発見を自らの活動に生かすことによって,観察の技能を向上させる取り組みを行いました。

2.「メダカのペーパーモデルをつくろう」の学習活動

 (1) 本物そっくりに,メダカの色をぬろう。(1時間)
メダカのモデルの展開図に色鉛筆で,色をつける。

 (2)

 おす・めすの違いに気をつけて,胴体をつくろう。(1時間)
展開図を切り取って,胴体をつくる。

 (3)

 ひれのつき方や役わりを考えて,ひれをつけよう。(2時間)
−おす・めすのひれの違いを本で,調べよう。−
ひれを切り取って,胴体につける。
(モデルを作り終えた子どもから)
ひれの動きの違いを,観察する。

 ★

子どもたちは,オス・メスの二匹をつくる。

 ★

作業の遅い子でも一匹はそれぞれの時間内で,モデルを完成する事ができました。

3.実際の活動の様子と指導上の留意点

 (1) 本物そっくりに,メダカの色をぬろう。( 準備物・色えんぴつ)

 子どもたちに展開図(図1を厚手の上質紙に印刷したもの)を一人ずつに渡し,本物のメダカも100mlビーカーに一匹ずつ入れて,班ごとに渡しておきます。ビーカーに入れられたメダカはしばらくはあばれますが,黒い紙をビーカーの底にひくと落ちつくようです。「上からのぞくと,びっくりする」ということを発見したのをうけて,目が上の方についているメダカ(目高)の語源を説明しました。

 色鉛筆を「オレンジ,黄,黒,赤等」をつかって,「本物そっくりに色をぬろう」と本時の課題を言いました。また,色鉛筆をこするように,うすく重ねてぬるように指示しました。「背中の方が色が濃い」「体の真ん中に赤い筋がある」「尾っぽの方はすきとおってる。」「おなかの所は少し青みがかかった黒だ」「その,黒い所からフンが出ている」「ぱくぱくしているところ(えら)が赤い」など,色に注目させると様々な発見を導き出せる事ができた。なかなか特徴をつかみきれない子どもも,「赤いのはどこ」「背中と腹の濃さの違いは」と聞くと作業が進んだ。指示したのは胴体だけだが,早くできた子にはひれの色づけにも挑戦させた。


 (2)

 おす・めすの違いに気をつけて,胴体をつくろう(準備物・はさみ,木工用ボンド)

 組み立て図の記号の説明を行い,まずは胴体を自分で考えさせながら作らせました。
 

 体の模様がついてるところは,おり線がないところをおるところがありますが,その都度,子どもには説明しました。

 組み立て方に特に順番はありませんが,次の用にすると組み立てやすいようです。
腹の部分のふくらみをつくる。→頭の部分を作る→尾びれの下をつける

 また,背びれをはさんでつける都合上,背中や尾びれの部分ははりつけないでおいておかせます。
 おす・めすの違いを「腹のふくらみ」に注目して,説明をします。メスは「横ひろ」オスは「たて長」になるように作らせます。また,実物をもう一度観察させながら,箱型になりがちな体を,「生き物っぽくなるように」丸みをおびるようにつくるように指示します。こういったことから,よく工作で行われるおり線に筋を入れるということは,しないほうが丸く仕上がります。

この活動の中で「メスは卵を生むから,(体が)でかいんだな」という発言がでてきたので,二匹の体の違いだけを説明して,「どっちがメスでしょう」ということを,考えさせてもよかったかなと思います。


くっつけてから丸みをつけたりして力を加えるのに,木工用ボンドをうすくぬることが,すぐにくっつきまたしっかりして効果的でした。ステッキのりでは,すぐにはずれて形をつくることできませんでした。


 (3)

 ひれのつき方や役わりを考えて,ひれをつけよう。(準備物(2)と同じ)

 A・Bそれぞれが,1匹分になっています。尻びれと背びれは,二つをはりつけ1まいにします。背びれは,胴体にはさみながらとりつけますが,図のままだとやや後ろすぎるので,胴体に少し切れ目をいれなければなりません。

 まず,他の魚の例をあげながら,ついている場所によるひれの名前を違いを説明しました。そこで,実際のメダカを観察して,それを確かめさせました。どのひれがどこにどのようについているのか「しっかり,観察しないと,模型が完成しない」ので,子どもたち は,一方方向からではなく,反対を見たり,下から覗き込んだりしていました。今回はどちらかがオス・メスということを説明せずに,自分たちで教科書などをつかって調べさせることにしました。

 胸びれや腹びれの向きを逆につける子が多く出ましたので,前に進むんだから,抵抗なく進むにはと,考え直させました。また,尻びれや背びれをはりつけずに,二枚でつけた子も少なからず出ましたので,もう一度観察するように促しました。

 「尻びれとかが模型と違う形をしているのは,折りたたまれているからだ」「胸びれはえらのばくばくといっしょにいつも動いている」などの発見を子どもたちはしました。早く仕上がる子どもには,ひれの役わりについて考えながら観察し,まとめるように指示を しました。
 こうして,できあがったペーパーモデルは,腹びれで立つようになっています。

 つくった模型については,クラス全員分をモビールのように天井からぶらさげたり,背景を描いてそこにはりつけて展示したりといろいろなことに使えると思います。

4.終わりに

 モデル作りを,活動の中心におくことによって,子どもたちは単にメダカを観察するよりも多くの発見をしたように思います。また,スケッチでは絵の得意な子とそうでない子との差が大きいが,この模型作りではだれでも,メダカらしく作ることができます。

 しかし,もっと本物らしくつくるにはカーブをつけたり微妙な工夫がたくさん必要で,子どもたちがそれぞれ自分なりの目標をもって活動できたのではと考えます。子どもによっては,「本物そっくりといっても,おなかの部分があいているので何とかしたい」とか「ひれは透明なんだから,ひれは透明なものに部品を変えたい」という意見も出ました。今のところこれらの欲求には,答えられずにいます。

 ひれのつけ方にとまどってしまう子どもが多く出たことも課題です。1から作り方を説明する方法もありますが,観察をして自分で考えて作るということを大事にしたいので,これからも指導法を改良していきたいと考えます。



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