授業実践記録 | |
行列の n 乗に関する指導について |
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福島県立福島高等学校 渡辺洋生 |
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1.はじめに
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数学Cで扱う「行列」の中で,n 乗を求める方法がいくつかあるが,生徒達にはなかなか理解しづらい内容のようである。帰納法,対角化,整式の除法の利用,漸化式の利用,2項定理の利用等々実に様々なものがあり,定着に時間がかかる。何か良い指導法はないかと考え,今年度,同じ問題を何種類かの方法で解くことを通して,指導をしてみた。このとき実施した内容について紹介する。 |
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2.展開
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例.A= について以下の問いに答えよ。 (1)Aは逆行列をもたないことを示せ。 (2)ケーリー・ハミルトンの定理を利用し,An を求めよ。 生徒はよく理解していた。数学的帰納法もよく理解していた。 例.A= について An をそれぞれの方法で求めよ。
[1] 固有値と対角化 [2] 整式の除法の利用 [3] 漸化式の利用(3項間漸化式,連立漸化式を指導した後で) (2)で bn を消去した3項間漸化式とケーリー・ハミルトンの定理で得られた式に注目させる。3項間漸化式の処理を確実に指導する点と,ケーリー・ハミルトンの定理から,次数下げを繰り返し,An =anA+bnE の形で表すことができる点を理解するのに生徒は苦労したようである。 1つの行列に対し,3種類の解法で解答させた。反復が必要であったが3つ比較することで生徒の理解は深まったようである。 次に,重解をもつような場合について解説を加えた。 例.A= について以下の問いに答えよ。 (1)(A−αE )2=Oとなるαの値を求めよ。 二項定理を用い,B2=O を利用して解答する。二項定理の内容を復習できた点は良かった。ケーリー・ハミルトンの定理から得られる等式が解法の判別式の役割を果たしている点を理解することが目標である。 |
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3.まとめ
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A= に対して 1)A が逆行列を持たないとき △A=ad−bc=0 であるから ケーリー・ハミルトンの定理よりA2−(a+d)A=O よって A2=(a+d)A A3=(a+d)A2=(a+d)2A これを繰り返してAn =(a+d)n-1A 2)ケーリー・ハミルトンの定理から A2−(a+d)A+(ad−bc)E =O
△(A−kE )=0 となるのは k=α,β のとき イ.整式の除法の利用
x=α を代入し eα+f =αn x=β を代入し eβ+f =βn よって e = f = 行列に応用して An= A+ E ウ.漸化式の利用
よって これを番号を上げて整理して an+2−(a+d)an+1+(ad−bc)an=0 [2] *が重解 α をもつとき
n ≧2 で B n=O だから
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