授業実践記録 | |
媒介変数表示の曲線について −グラフの概形を捉える方法− |
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佐賀県立高等学校 北川宏武 |
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1.はじめに
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過去の大学入試問題では、媒介変数表示で曲線を与え、グラフの概形を捉えさせる問題が頻出している。その理由としては力学現象を捉えるとき、媒介変数として時間 t をとることが多く、物理学や工学を学ぶ上で媒介変数表示、極座標表示は必需なものであると考えられる。これらの問題はグラフの概形を捉えることさえできれば、あとは曲線のある部分の長さや曲線を含むある部分の面積または体積(回転体)を求めさせる問題がほとんどなので、標準的な問題と思える。しかし、生徒達のほとんどが、“グラフの概形”に苦戦し、この種の問題を難しいと思っている。
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2.授業
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[1]曲線の媒介表示の作成(ベクトル方程式を用いて) 高校数学では通常、ベクトルの成分表示を行ベクトル で扱うが、2つ以上のベクトルの和や差を計算する際、列ベクトル の方が各ベクトルの x 成分、y 成分が捉えやすく計算しやすいことを紹介し、すべて列ベクトルを用いて解説する。また、図の部分は、grapes ソフトを用いてプロジェクターで黒板に投影し、点の軌跡を動的に見させる。時間をかけず効率よく学習できるよう書き込み式にしたプリントを活用する。 例1 半径 r の円が定直線に接しながら、滑ることなく回転するとき、その円上の定点が描く曲線(サイクロイド)を媒介変数表示する。
例2 座標平面上に原点 O を中心とする半径2の固定された円 C と、それに外側から接しながら回転する半径1の円 C' がある。円 C' の中心が(3,0)にあるときの円 C' 側の接点に印 P をつけ、円 C' を円 C に接しながら滑らず回転させる。
よって、 例2 は練習問題として生徒自身に導かせる。内サイクロイドも考えさせてよかろう。“ベクトル”の概念の利便性を分からせるよき例だと思える。
[2]グラフの周期性および対称性
●合成関数の基本周期 T について y =3 sin x -sin 3 x のグラフ
●媒介変数表示による曲線の周期 曲線 のグラフ ( II )グラフの対称性について ●陽関数 y = f ( x ) ,陰関数 F ( x,y )=0 の対称性について
●曲線 の対称性の調べ方について
(例)
x (θ) = (1- cosθ) cosθ のグラフは上記のようになり、○=2π - θ となるが、このグラフを直感的に捉えるのは難しい。そこで、x (θ)=(1- cosθ)cosθ を構成している 1- cosθ,cosθ について考える。 x =1- cosθ,x =cosθ のグラフは下図のようになる。
よって、グラフより ○=2π- θ が分かる。 〈3〉y (○)=- y (θ) を示す。
[3]増減表及びグラフの概形 ちなみに、 の導関数は合成関数および逆関数の微分法(「数学 III 」)によって
0≦θ≦ において =0 とすると θ=0,
0≦θ≦ において =0 とすると θ=0,
(注)最下段の矢印について |
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3.おわりに
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“媒介変数表示の曲線のグラフの概形”の授業を板書だけで行うのは、図を描くだけでも時間がかかるし、媒介変数を変化させたときの点の軌跡を伝えるのも難しいので効果的でない。だから、授業には grapes や function view のソフトを用いてグラフを投影し、点の動的変化を見せながら視覚的に理解させる。また、できるだけ短時間で分かりやすくするために生徒にはポイントを書き込み式にしたプリントで作業等を行わせ、解説および答え合わせは power point を用いて行う。 |