授業実践記録
習熟度別クラスをどのような方法で分けるか
兵庫県立播磨南高等学校
辻 登志雄
 
1.はじめに

 本校は創立23年目を迎える比較的新しい学校である。推薦入試によりグローバル情報コミュニケーションコース(英語コース)1クラス選抜し、一般入試での合格者を対象に文系アドバンスト(文系特進)と数理情報(理系)という2類型を入試成績等により選抜している。卒業後の進路先としては、多くの者が私立文系大学へ進学を希望している。入学時より数学を苦手にしている生徒が多い。理系クラスにおける数学の授業レベルは文系より若干高いレベルの内容を実施しているが、クラス選択者の中には英語,国語,社会よりはまだ「マシ」といった安易な選択により、在籍している生徒も少なくないのも事実である。
 今回は1年次文系クラスにおける習熟度別クラスをどのようにクラス分けしていけば効果があがるか考えてみた。私が赴任した7年前は2クラス2展開としていたが、ここ数年2クラス3展開や、年度によっては3クラス4展開と比較的恵まれた人員配置が認められている。

 
2.展開の方法について

 本校での授業展開クラスは以下のようになっている。
  1組(英語コース 推薦入試) 2組(特進クラス 入試成績を主として選抜)の2クラス3展開
  3組(文系一般クラス) 4組(文系一般クラス)の2クラス3展開
  5組(文系一般クラス) 6組(文系一般クラス)の2クラス3展開
 ちなみに7組(理系クラス 入試成績を主として選抜)は単独授業である。

 そこで、クラス分けの際、次の3点を考えることにした。
  ア)どの段階の成績を基にクラス分けするか
  イ)どのような学力レベルの生徒で構成するか
  ウ)各クラスにおける人数配分 
 

 
3.3点の具体例と本校の事例

 下線部が現在本校で実施している方法

 ア)について
直近の順位による選抜(2クラス内でⅠとAの順位平均)
例)2学期の中間~期末考査までの展開は2学期中間考査を元に算出
・今までの考査をすべて積算していく。
例)2学期の中間~期末考査までの展開は1学期中間,期末,2学期中間を基に算出
 イ)について
・上位から輪切り 
・その他の分けかた
本校では1,2組と5,6組は上位から輪切り (α,β,γ)
3,4組においては上位クラスだけ選抜し、残りは均等割(α,β,β)
 ウ)について
・上位クラスの人数を多くする
・上位クラスの人数を少なくする
下位クラスの人数を多くする
・下位クラスの人数を少なくする

本校では 
1,2組  α(30人) β(23人) γ(20人)
3,4組  α(35人) β(23人) β(22人)
5,6組  α(35人) β(25人) γ(20人)

参考 教諭の持ちクラスと授業の展開方法
( )内が担当者名

1,2組 
3,4組 
5,6組
数学 I
α(tj)β(hy)γ(tk)
α(hr)β(hm)β(tk)
α(tk)β(hy)γ(hr)
数学A
α(tj)β(hy)γ(tk)
α(hr)β(hy)β(tk)
α(tk)β(hm)γ(hr)
 
4.3点ア)イ)ウ)における色々な考え方

 ア)について
データをとるにも比較の方法がなかったので数学科教員に聞いてみた。
直近の成績の方がいいだろう派
○ 教師に緊張感が生まれる
○ 生徒も「次こそ!」と取り組みやすい
○ 最初に失敗して、心を入れ替えてがんばった生徒が報われる
TOTALで判断した方がいいだろう派
○ 2,3学期には総合力をもった生徒が多く集まり、さらなる内容の濃い授業展開ができる
 イ)について
 年度当初より習熟度別授業について考える実験として、α β γ の展開クラスと α β β 展開のクラスとすることにより、何らかの有意差が得られるのではと考えた。
 ウ)について
 上位クラスの人数を多くするほうが、生徒のやる気が多くなると考えている。ただし過去の失敗例として下位クラスの人数を15名程度と極端に少なくしたことがあった。その結果、妙な連帯意識ができてしまい、“できなくてもいい”という雰囲気になってしまうので、手厚くしようと思って下位クラスの人数を、減らしすぎることは好ましくない。
 
5.データによる分析

 担当者や生徒,クラスの雰囲気等があるので一概にどうとは言えないが次のようなデータを出してみた。

資料1 全体の順位変動について

順位
人数
230名
UP
107
DOWN
123
1,2組
UP
33
DOWN
39
3,4組
UP
33
DOWN
45
5,6組
UP
41
DOWN
39

資料2

1学期期末の結果,クラスがあがった者
β→α
γ→β
γ→α
230名
29
19
3
1,2組
8
6
1
3,4組
10
7
1
5,6組
11
6
1

1学期期末の結果,クラスが下がった者
α→β
β→γ
α→γ
230名
25
17
5
1,2組
7
6
1
3,4組
8
5
3
5,6組
10
6
1
 
6.まとめ

 実は1学期の期末考査の結果、大きな有意性は見られなかった。上位クラスにいったもの、下位クラスにいったもの、3つの組で数字はほとんど同じであるといえる。習熟の方法はあまり意味がないのではとも思ったが、ただ顕著だったのは資料1における5,6組の順位UPの人数だけが、他のそれとはまったく違う結果がでたということで、これは注目すべき点であるとは思う。また3,4組と5,6組の両方の授業を行っている担当者に言わせると、「 3,4組は αββの方がいい」とのことであった。その理由として「この両クラスには下位層の生徒も多いので、γとして特化してしまうと授業の雰囲気に悪影響がでるので、平均的な生徒と同じクラスにして、授業の雰囲気を大切にしていきたい」とのことであった。確かに本校ではクラス自体に色々な雰囲気がでてしまうことがあるので、クラス単独の授業を1年間続けるより、どのような形にせよ、習熟別クラスという名目として他クラスを交えての授業の方が、万が一しんどいクラスができても授業を成立させることができると考える。
 2学期に向けて色々な方策を考えながら、生徒にアンケートを実施し、生徒が望む方法を取り入れていこうと思う。

 生徒や教師などの条件を一緒にできるわけではないし、たった1回だけのテストでどうのこうのと言えるような資料ではないと思える。これらの統計自体に意味があるかどうかから考える必要があるが、そこまで手が回っていないので詳しく分析もできていなく誠に申し訳なく思う。