授業実践記録 | |
平方完成について |
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(大阪)上宮高等学校 中原恒夫 |
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1.はじめに
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平成15年度に入学した1年生の数学 I の授業で経験したことを中心に報告させていただきます。 本校は大阪の私学男子校であり、生徒の大半が大学進学を予定している大規模校です。中学からの6ヵ年一貫コ-スもあり、私がこの年担当したのは、高校からのコ-スです。 1年時は数学 I(週4時間)、数学A(週2時間)は必修で全員が履修します。 男子校ではありますが、例年理系クラスへの進級希望が3〜4割程度です。(年々、不況とともに理系希望は増える傾向にあります。) |
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2. 因数分解、展開
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数と式の中の『整式の乗法』あたりまでは例年通り進んでいきました。しかし展開公式あたりから、かなりの生徒の‘手が遅い’という感じを受け始め、小テストなどの結果を見ても例年に比べ、正答率の低さと所要時間がかなりかかることを実感しました。 因数分解においても a3+b3 や a3-b3 あたりの応用題につまずく生徒が目につき始め、『やや複雑な式の因数分解』となると、理解はできるが目標の時間までに正解にたどり着く生徒が格段に少ないように感じました。 |
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3. 2次方程式
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この段階で『平方完成』が登場します。 全ての問題を X 2=k 型にするための方法として位置づけて指導しています。
(1)x 2+6x+2=0 ここで x の係数の半分の平方を両辺に加える x 2+6x+2=0 はじめも、2を右辺に移項することをやめ、できるだけ少ない作業で、かつ上の式の内容を確認しながら平方完成させるように指導してきました。( )の2乗を作る前に9を両辺に加えておくという作業が簡単にできるのは数学の出来る生徒だけではないでしょうか。
(2)3x 2+4x-4=0 |
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4. 2次関数とそのグラフ
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2次方程式よりも、むしろ2次関数、2次不等式の証明などで平方完成をすることが多いので、関数とグラフのあたりで再度『平方完成』についてしつこく指導するようにしています。特に2次方程式のときと違い、2次の係数で勝手に割らないように強調しています。下位の生徒はよく間違えます。 教科書を見ると2次の係数でくくった場合、1次の係数が整数になる問題を取り上げているようです。授業では計算は面倒ですが、なるべく分数になるものも取り上げるようにしています。 (1)y =2x 2-8x+11 整数
(2)y =3x 2+2x-1 分数
(1)と(2)では、正答率、所要時間ともに全然違います。計算の早い、まあまあ出来る生徒が(2)の分数計算を暗算でするため案外間違ってしまいます。そこで授業では、面倒ではあるが、「平方完成は問題を書いてから、4行か5行をかけ、1行につき一つの作業しかしないようにして、ミスを防ごう!!」と、注意をうながしています。
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5. 2次関数
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数学 I の中で三角比ももちろん、重要な分野には違いありませんが、2次関数を早い段階でマスタ-できるかどうかが、高校数学に乗っていけるかどうかの境目のような気がしています。 現行の時間数ではどうしても計算を主とした内容を指導するには授業時数は不足がちで、公立高校の先生方は大変苦労をされていると思います。本校は私学でもあり、時間外講習を実施しやすい環境ですので、割合、時間をさいてやることは可能です。平方完成し、グラフが(平行移動の基本を理解していて)すぐに書けることを目標として指導していますが、なかなか思うようにはいかないのが現状です。同じ数学科でも議論の分かれるところで、丁寧にゆっくり教えることが本当に良いことなのか?と、未だに迷っています。集中できる時間を長くとるようにして、生徒に少しは無理をさせたいとも思います。
各個人に応じ、出来るだけ早く正確に計算し、2次関数の一般形から標準形に変形できる。
これを下位の生徒でも出来るようになることを目指し、これからも指導していきたいと考えています。 |