自然の造形

台湾大地震でできた大滝

New waterfall created by vertical faulting northeast of Fengyuen, TAIWAN)

台湾,台中県豊原(台中市から北へ約15km)

大阪教育大学附属高等学校

柴 山 元 彦

 

 1999年9月21日午前1時47分(日本時間同2時47分)頃に台湾中部を震源とするマグニチュード(M)7.3の強い地震が起きました.この地震は「集集地震(台湾大地震)」と名づけられ,2000人を越す人達が亡くなるなど,大きな被害をもたらしました.
 震源地は台北市の南南西約150kmの南投県日月漂付近で,南投県ではオフィスビルやホテル,住宅など約1000棟が倒壊しました.この地震に伴って出現した地震断層の1つである東籠埔断層は,南北方向に長さ80km,最大縦ずれ10mにも達し,地震のエネルギーは,兵庫県南部地震の約10倍にも相当すると思われます.
 台北から車で南北高速公路を約2時間走ると台中県に入ります.台中市の少し手前で高速道路を降り,豊原の町に向かい,さらに北東へ少し行くと大きな河川に出ます.この川(ターチャー川)にかかっていた橋は,この地震でできた地震断層を横断していたため橋げたが落ち,通行できなくなりました. この橋のすぐ東側に大きな滝が出現しています.これがこの河川を横断している地震断層によって上流側が垂直に隆起し,突然できた大滝で,その落差は5〜6mにも達し,大きな音をたて水流が流れ落ちています.これは滝がどのようにしてできるのかを目の当たりに見せてくれた見事な現象です.河の両岸の部分を見ても,この地震断層による土地の横ずれはほとんどなく,垂直方向にだけずれたことがよくわかります.
 台湾付近ではフィリッピン海プレートがユーラシアプレートにぶつかり東西に地殻が圧縮されるため,そのしわ寄せが台湾に集まってしばしば大きな地震を起こしてきました.

 

旅を楽しむ

<台中市> 花蓮とを結ぶ東西横貫公路の起点.果物の一大集散地.市北部にある宝覚寺境内のミロク大石仏(高さ30m)は有名.

 


台湾大地震によってできた垂直方向に落差のある断層がこの川を横断したため,その部分が滝になった.


滝の落差は6mもあり,大きな音を立てて水流が流れ落ちている.6ヶ月たった現在,中央の水量の多い部分はすでに侵食されて滝の位置が後退している.