生物授業実践記録 |
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1時間の授業でいくつのステージを観察することができるか −「バフンウニの発生」を観察する− |
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福井県立武生高等学校生物科 齋藤 和秀 坂東 知範 小林 輝己 武生高校HPアドレス http://www.takefu-h.ed.jp メールアドレス tb856576@fukui-ed.jp 授業日誌アドレス http://www1.coralnet.or.jp/tbando/index.htm |
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はじめに
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高校において,ヒキガエルやウニの発生の過程を生きた材料で観察するのは,季節的な問題や飼育上の問題から容易ではない。実施したとしても,発生の一時期のみ,あるいは固定した材料を用いている学校が多いのではないだろうか。本校ではバフンウニを材料に1授業時間(50分)で,放卵放精からプルテウス幼生までのほとんどのステージを,生きた材料で観察する授業を実践している。観察した生徒は実際の卵割の瞬間など,写真や固定した材料では味わえない「生き物」を実感する。観察の方法を紹介し,多くの高校で実践される場合の参考となることを望むとともに,ご批評を仰ぎたい。 |
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採取と飼育
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バフンウニの産卵期は1〜3月頃であるので,観察は,毎年3学期の終わり頃に実施している。採取は時期にあわせて出かけたいが,冬の日本海は高波が押し寄せるので,数少ないなぎの日を見計らって実施している。この頃のバフンウニは波打ち際の石の下などに集まっていることが多く,ふつうの長靴程度の装備で採取できる。また,同じ場所に多個体が集まっている場合が多いので,1時間程度で必要な個体数を集めることができる。ふた付きの海水入りバケツに管足を後で傷つけないように,えさになるアラメやホンダワラなどの海藻と共に入れて持ち帰る。学校では,底面ろ過を施した水槽(長さ120cm)に海水を入れ,採取してきたウニを海藻とともに入れておく。水温は室温で,10℃程度である。1〜2か月は,長さ45cmの水槽で100個体程度を十分に飼育できる。 |
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授業の展開
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1.放卵放精(演示5分)
4.胚(25〜35分) |
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撹拌装置
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本校は1学年が10クラスあり,その全クラスで観察を実施している。このため,大量の胚が必要になる。あらかじめ受精させておいた胚は,遊泳を始めるふ化以前,ごく低密度であれば問題ないが,2リットルのビーカーでもわずかに目に見える程度の密度で底に沈殿し,酸欠のためか正常な発生がさまたげられる。これを解決したのが小林の考案した撹拌装置(図)である。低速回転モーター(30rpm)にプラスチックの羽根をつけた簡単なものであるが,海水をゆっくり撹拌し胚を正常発生させる。低速回転モーターは限られた時期にしか製造されないらしく,地方では手に入りづらいが,秋葉原の電気部品店の店頭には1個千円程度で積まれていることがあるとのことである。 |
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おわりに
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「生命が自分の顕微鏡のステージ上で形成されていくのを目の当たりにすることほど,生徒の生物に対する興味を引き出す方法はないのではないか。」毎年学年末にこの観察を実施し感じる感想である。情報の溢れる現代においてこそ,実物をリアルタイムで観ることの大切さを感じる。しかし多忙化する学校においてはこのような観察・実験はますますやりづらくなってきている。その点ここで紹介した観察は,苦労対効果の比率の高い観察であると実感している。 最後に自慢をさせていただくと,本校の生物教員は大変仲が良い。実験室には手のあいている者が顔を出し,特に指導を補助すると言うのではないが,顕微鏡をのぞき見ては,教員自身が感じたことを生徒に話かけたりしている。そして自慢できる実習教員(助手)がいる。いくら手間がかからないといっても,一時限目に間に合うように受精させたり,海水のついた顕微鏡の始末をしたりと様々な苦労がある。短い間に手際よく観察を行うには準備,後始末だけでなく,実験室で生徒に,時には教員にも適切なアドバイスをタイミングよく与える福塚るり子助手の手腕に負うところが大きい。この場を借りて感謝の意を表したい。 (文 坂東) |