生物授業実践記録
同化色素 吸収スペクトルの観察
北海道大麻高等学校
菊池洋好
 
1.はじめに

 緑色植物の働きにおいて光合成は重要な位置を占めるが、光合成で利用されている光の範囲(波長)については、物理を選択していない生徒にとって理解しづらい部分であり、その点が理解できないと吸収スペクトルのグラフの意味もわからなくなる。そこで波長という物理学的な説明ではなく、手軽に吸収スペクトルを直接観察できる実験を行った。
 
2.実験の手順

2−1.同化色素の抽出

(1)シソの葉をちぎって乳鉢に入れ、エタノールを加えて押しつぶす。 

(2)溶出した同化色素を試験管に集める。

※この同化色素の抽出を、メタノール:アセトン=3:1の混合液やジエチルエーテル等を使って行うと、抽出液はそのままペーパークロマトグラフィーに使用できる。

2−2.スペクトルの観察

(1)直視分光器を使って、自然光のスペクトルを観察する。

(2)手順1で試験管に収集した同化色素越しに、直視分光器を使い吸収スペクトルを観察する。

2−3.教科書や図説のグラフと、観察した吸収スペクトルを比較する。

 同化色素越しに見たスペクトルで消えてしまった色の部分と、グラフにおける各同化色素の吸光度が高い部分を対応させ、光合成に利用されている光の色(波長)を理解させる。

 
3.終わりに

 この実験は特にめずらしいものではないが、ペーパークロマトグラフィーと併せて行うことで、同化色素の働きと種類に対する理解を容易にすると考え、本校では2年次に実施している。
 この実験の後に、光合成で利用していない光の色(波長)が反射・透過して目に入るため、葉が緑色に見えていることを説明している。
 様々な現象が密接に関連して、自然現象が成立している。このことを常に意識して、今後も授業を行いたいと考えている。