化学授業実践記録
授業プリント・確認テストの連動による
化学授業の効率化の試み
長崎県立長崎南高等学校
久保惣二郎
 
1.はじめに

 週5日制の完全実施に伴い,授業時間を確保するために,本校では45分授業7校時・2学期制を実施している。それにより週35単位が確保されたが,カリキュラム上,化学の授業時間はそれまでと同じである。つまり,実質上授業時間が9割に削減されたことになる。以前より時間不足を主張しながらも,その時間で何とか工夫してやってきた。さらなる不足分を確保するために今までの試みを見直し改善を図ったので,それを報告する。
 
2.授業プリントの活用

 45分の授業は短い。したがって,板書をし生徒がノートに書き写すというスタイルではなかなか進めない。しかしながらノートをしっかり作らせていかなければ生徒の学習がやりにくいのは明らかである。
 そこで〈 資料1 〉のような授業プリントを作成し配付することにより“書き写す”という単純作業を省略し,短時間でより深い内容の学習ができるように工夫した。

資料1

授業プリント作成時の注意

  1. 教科書の配列より授業展開を優先して配列した。授業の内容を振り返りやすくするためである。
  2. 重要な部分や語句は空欄にし,授業中に説明し埋めさせた。生徒は授業中に聞くだけでは緊張を持続できにくいので,適度の作業をさせる余地を残している。
  3. 用語や表現は教科書に準拠する。授業は教科書に始まり教科書に終わるとも考えられるので,教科書を逸脱する内容は慎むべきと考えられる。
  4. 芳香族化合物において,市販のソフトではベンゼン環は画像であり,ファイルサイズが大きく扱いにくいので,ベンゼン環をオリジナルの外字として作成し,ファイルサイズを小さくするようにした。これは確認テストも同様である。

授業プリント活用時の注意

  1. ノートの見開きの左側ページにのみプリントの1ページを貼り,右側ページは空けておく。冊子にして配付すればプリントの散逸がなくまとまった形で保存できるが,生徒にある程度の作業をさせることにより,学習への意欲を高めていく効果があると考えられる。
  2. ノートの右側ページには授業中に補足説明したことや取り上げた例題などなどを記入させる。

 生徒たちは授業時間中に“書き写す”という単純作業から解放され,その時間に教科書や資料集を開いて確認したりすることにより,より深く内容が理解できるようになったと思われる。
 授業プリントは確実に効果を上げているように思われる。

 
3.確認テストの活用

 授業プリントとセットの形で確認テスト〈 資料2 〉を作成しており,毎時間の授業の初めに,前時の内容の確認テストを行っている。授業内容の確認と定着が目的である。

資料2

確認テスト作成時の注意

  1. 授業内容と授業プリントの記述に準じる。授業内容の確認と定着が目的であるので,授業内容以外のことを要求しないようにした。
  2. 問題番号をつけるのではなく羅列する形で作成し,授業の進み方により必要な部分を切り取って使うようにした。このことにより,クラスごとに違うテストの作成も簡単にでき,テスト作成の負担は小さくなった。

確認テスト実施時の注意

  1. テスト実施時間は5〜8分程度とした。
  2. 終了後近くの座席の生徒と交換し採点させた。他の生徒の採点をすることにより緊張感を保ちながら定着を図るためである。
  3. 7割の正解を目標に取り組ませた。
  4. 生徒がテストの解答に取り組んでいる間に,前時の確認テストを一人ひとりに返却し,目標に達していない生徒には注意を与えた。

 生徒の取組みは良好で,化学の授業前の休み時間にはほとんどの生徒が直前の確認をよくしていた。これによって,定期考査への取組みもよく,それなりの結果を残している。
 また,生徒も確認テストを上手に利用しており,定期考査対策に有効であるとの声も聞かれる。

 
4.おわりに

 授業の内容は短時間で深く,しかも定着を図り,教師側の負担も少なくするという試みであるが,今のところ順調にいっているようである。教師側の負担が少ないということは,その時間に次の教材研究や実験の準備ができるということであり,時間の有効活用ということでもある。
 現在,この形の授業は2年生と3年生で実施している。本年度から新学習指導要領による授業が始まり,私は理科総合Aも担当している。来年度からの化学Tに備えて,現在の授業プリントと確認テストの全面改訂を始めようとしている。よりよい授業を目指し頑張っていきたい。