普通教科「情報」Q&A



 
 
 
 
[Q] 質問事項の一覧

どうして情報科という教科が高等学校で必修化されるのですか。

情報A,情報B,情報Cの内容は,それぞれどのように異なるのですか。

「情報」を暫定的に理科や数学の授業で置き換えることはできますか。

生徒用のインターネット施設がありませんが,平成15年度までに整うのでしょうか。

中学校の技術・家庭科の情報教育の内容を教えてください。

プログラム言語に触れたことがありませんが,アルゴリズムの学習を行うのに,コンピュータを使った適当なものはありませんか。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 



回答
 
どうして情報科という教科が高等学校で必修化されるのですか。
 これからの時代は,コンピュータやネットワークなどの情報手段を勉強や仕事に活用することがあたりまえの時代になります。仕事だけでなく生活に必要な情報もコンピュータやネットワークから入手することになるでしょう。したがって,自分の仕事や生活をよりよくしていくために情報手段の活用や情報そのものを活用する能力がすべての国民に必要になってくるのです。もし,このような能力を身に付けていない生徒は,おそらく職業の選択においても生活においても,また余暇そのものを充実させることにも他の人に比べてきわめて不利になってしまいます。これが今度普通科の履修科目として教科「情報」が設置され,必修の教科になった理由なのです。

 さて,このような能力は単にコンピュータやメディアを使いこなしていればいいというわけではありません。高校段階では,その裏側にある原理や仕組みや社会的な視点など,さまざまな観点から情報のもつ意味を批判的に考え,その上で情報をうまく活用して自ら問題を解決していける必要があります。また,不特定多数の人々がネットワークを通じて情報のやりとりをするようになれば,情報を発信する上でのモラルやマナーなどが一人一人に求められてきます。これからの社会では,さまざまな情報が身の回りにあふれています。この情報の洪水の中から本当に自分が必要とする情報を主体的に活用する能力を身につけるためには,情報がどのように作り出され流通しているのか,その基本的な仕組みを見抜く力についても養っておく必要があります。このような目的の教育を,わが国では情報教育と呼んでいます。

 情報教育の目標は,次のように示されています。 
 


 この3つの能力を生徒が高校を卒業するまでにバランス良く身につけるために,普通教科「情報」では,情報A,情報B,情報Cの3つの科目が用意されています。情報A,情報B,情報Cの中から1つ,または1つ以上を選択して履修することになります。
 

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情報A,情報B,情報Cの内容は,それぞれどのように異なるのですか。
 普通教科「情報」では情報A,情報B,情報Cの3つの科目が用意されていて,その中から1つ以上を選択して履修します。この情報A,B,Cの内容はそれぞれ,情報Aは「情報活用の実践力」の育成に重点をおいた科目,情報Bは「情報の科学的な理解」にやや重点をおき,情報Cは「情報社会へ参画する態度」の形成にやや重点をおいた構成になっていますが,情報教育では,このいずれを選択しても,上記の3つの目標をバランスよく身につけることができるように学習内容が工夫されていますので,同じような内容をすこし視点をかえて学んでいく3つの科目と考えていただいたほうがいいでしょう。

 この3つの科目の雰囲気を大まかに表すと,次のようになっています。

 


ネットワークやパソコンを使いこなし,情報を活用していくための教養的内容の科目。コンピュータとしては個人の道具として主にパソコンを利用する。ワープロ,表計算,電子メール,お絵描きのツール。インターネットで情報の検索。


情報技術の仕組みや問題解決にコンピュータの活用を理論的に扱っており,情報Aに比べればすこし専門的な科目。理系に進学する生徒向き。モデル化やシミュレーション,計算の仕組みなどについては,演習を中心に扱う。コンピュータの中の仕掛けや仕組みを知り,それを設計する立場から必要な知識や技術,身に付けるべき社会的配慮などが扱われている。


作られたシステムを有効に活用し,あたらしい社会の仕組みを作り出していくために必要な知識や技術の習得を目指した科目。情報Aに比べればすこし専門的な科目で,どちらかというと文系に進学する生徒向き。インターネットやマルチメディアを活用する。マルチメディアを利用した作品づくり。ネットワークで情報を収集し,結果をまとめ,発表することを前提とした課題研究などがある。これらの活動を通して,情報を収集したり発信したりするときの基本的な態度や考え方を身につける。

 これらの内容と生徒の興味・関心をふまえて,履修科目を選択していくことになるでしょう。しかし,平成15年度の段階では,教科「情報」は始まったばかりですので,それを指導する教員の数が十分ではありません。したがって,当面は3つの科目をすべて開講できないで,どれかひとつを学校の方で指定しているといったケースもあるかもしれません。
 

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「情報」を暫定的に理科や数学の授業で置き換えることはできますか。
 新しい教科ができるとそれを指導する教員の確保ができなかった場合を想定して,学習指導要領には代替措置と呼ばれる項目が記述されます。情報の場合も,「特別の事情がある場合には,以下に掲げる科目のうち1科目又は2科目の履修をもって,その履修に替えることができる」と記述され,公民,数学,理科又は家庭の各教科の「情報」に関係のある科目が示されました文部科学省学習指導要領附則2。しかし,文部省の試算によると平成15年度までに必要数の教員研修を実施することによって教員数を確保することを計画しており,情報インフラも財政措置によって平成13年度までに整備することとしています。したがって今回は「特別の事情がある場合」に適合せず,実際には置き換えることにはならない模様です。

附則の抜粋
2 第1章第3款の1の(10)の必履修教科・科目については,当分の間,特別の事情がある場合には,以下に掲げる科目のうち1科目又は2科目の履修をもって,その履修に替えることができる。
(1) 
「数学B」のうち第2章第4節第2款第6の2に示す内容の(3)若しくは(4)の履修又は「生活技術」の履修(第2章第9節第2款第3の2に示す内容の(3)を履修する場合に限る。)(これらの場合,代替できる単位数はそれぞれ1単位とする。)

(2) 
普通科及び総合学科における「農業情報処理」,「情報技術基礎」,「情報処理」,「水産情報技術」,「家庭情報処理」,「看護情報処理」又は「福祉情報処理」の履修 

(3) 
公民,数学,理科又は家庭の各教科に属する学校設定科目として設ける情報に関する科目の履修(公民に属する科目の履修をもって代替できる単位数は1単位とする。)

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生徒用のインターネット施設がありませんが,平成15年度までに整うのでしょうか。
 インターネットの整備については,今回の学習指導要領の実施に間に合うように,さまざまな財政措置や支援が行われています。平成11年には,平成13年度までにすべての学校(もちろん高校を含む)にインターネットを接続するという政策が決定しましたので,ほとんどの学校に近くインターネットの接続がされる見込みです。しかし,授業の実施で重要なことは,コンピュータ室や教室のコーナーなどで生徒がインターネットに接続し,情報交換できる環境が整っているかどうかです。この整備は各学校や教育委員会の指導で進められるので,先生方は教科「情報」の実施のために学校内のネットワーク整備が必要であることを,うまく伝えていく必要があります。また,学校内の整備だけであれば,保護者や生徒,教師などの協力で,自分たちで作業を分担してネットワークを敷設する運動(ネットデイ)が,あちこちの学校で進められるようになってきています。このことについても,検討してみるのはいかがでしょう。

  文部科学省ニュース「学校のインターネット接続計画 全校を13年度までに前倒し」も参照してください。
 

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中学校の技術・家庭科の情報教育の内容を教えてください。
 中学校では平成14年度から新教育課程が実施されます(平成12年度から前倒しで実施させることができます)。
 技術・家庭科の技術分野は,今まで「A 木材加工」,「B 電気」,「C 金属加工」,「D機械」,「E 栽培」,「F 情報基礎」という6領域として分かれていたものを,新課程では「A 技術とものづくり」と「B 情報とコンピュータ」という2領域に再編されます。
 中学校の情報教育は主にこの「B 情報とコンピュータ」で扱われ,情報手段の活用の基礎的な知識と技術・情報モラルを身につけさせてこれらを主体的に活用する能力と態度を育成することをねらいとしています。
 さて,「B 情報とコンピュータ」では,次のように必修の内容と選択的に履修させる内容に分かれています。
 




(1) 生活や産業の中で情報手段が果たしている役割
(2) コンピュータの基本的な構成と機能及び操作
(3) コンピュータの利用
(4) 情報通信ネットワーク




(5) コンピュータを利用したマルチメディアの活用
(6) プログラムと計測・制御

 必修内容で指導することは,まず第1に「コンピュータ」や「情報通信ネットワーク(インターネット)」の基礎的な知識と活用して生活に取り入れていくための方法です。これにはコンピュータの操作やソフトウェアの機能や操作を知ることも含まれます。第2に「著作権」「個人情報」「コンピュータ犯罪」など情報化の光と影の存在を充分意識して情報モラルの重要性を考えさせます。

 具体的な指導内容は例えば次のようになるでしょう。入門編として表計算,お絵かきソフト,プレゼンテーションソフトなどさまざまなソフトウェアを紹介し,それらの統合と応用(表計算・ワープロ他などを連動させる)を指導します。これは従来の情報基礎の延長線上にあります。

 さらにネットワーク編として,スタンドアロンとネットワークコンピュータの違いを理解させた後,インターネットに入っていきます。インターネットでできることとしてWWWと電子メールを主体に,NewsやFTPなどにも触れるでしょう。WWWではブラウザの基本操作に始まり,検索エンジン, Webページの紹介からWWWの利用の際の情報倫理や,著作権や個人情報といったセキュリティ面の注意も喚起することになるでしょう。

 まだ余力のある生徒に対してはマルチメディア編として情報の発信やWebページの作成,プレゼンテーションツールを使ったプレゼン作成,さらにはディジタル画像,動画,音楽などにも及ぶ中学校があるかも知れません。(6)プログラムと計測・制御では,センサーつきのロボットの制御や,簡単なプログラムの作成演習などが考えられています。
 

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プログラム言語に触れたことがありませんが,アルゴリズムの学習を行うのに,コンピュータを使った適当なものはありませんか。
 情報の科目のうち,情報Bではアルゴリズムが扱われています。しかし,この内容も個々のアルゴリズムを教えることが目的ではなく,コンピュータそのものが内部では基本的な処理の仕組みとして,一つ一つの命令がステップで動いていることを理解させ,その組み合わせによって計算をさせたり処理をしたりすることができることを理解させる程度です。例示では,並べ替えや探索などの基本的なものがあげられています。アルゴリズムの学習には,「ループ」「ジャンプ」と「条件判断」が備わっている言語であれば十分使えますので(当然BASIC やPascal,C(C++),Javaで示すことができますが,これら)プログラミング言語を使わなくても,例えば表計算の組み込み関数やマクロ言語などでも可能です。しかし,言語やマクロにこだわっていくと,もともとの目標である,計算の仕組みの理解の範囲を超え,言語やマクロそのものの教育になってしまう危険性をもっています。これらの様子を示すために,具体的な文法の細かな規則にこだわらずに,おおよその構造だけを示す仮想の言語やコンピュータの動作をわかりやすく示した模型などを使った学習を取り入れることも必要でしょう。
 
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著作権者
永野和男
聖心女子大学 教授
前静岡大学 情報学部・教授
文部省(当時)情報化の進展に対応した初等中等教育における情報教育の推進等に関する調査研究協力者会議委員(高等学校 学習内容検討WG 主査)


啓林館情報科教科書編集委員

新興出版社啓林館編集部