(1) | 「総合的な学習の時間(おのっ子タイム)」の創造
本校では,保護者や地域の人々の協力を得ながら,子どもや地域の実態に応じた特色ある教育課程を編成し,学校の自主性を高めるオンリーワン教育を推進している。
低学年では生活科,中・高学年では(おのっ子タイムの学習)をオンリーワン教育として位置づけ,平成14年度は,これまで各学年ごとに積み上げてきた実践をもとに新たに再構成を試みた。
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(2) | 「おのっ子タイム」の活動内容
表1は,平成14年度に取り組んだ「おのっ子タイム」の活動内容の一覧を示したものである。
表1 各学年における「おのっ子タイム」の学習内容と活動テーマ
以下,各学年の活動の概要を述べる。
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(3) | 各学年の取組の概要
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低学年の取組
1学年は,わか松幼稚園との交流,2学年は商店街の人々との交流をメインにして取り組んだ。本校は,わか松幼稚園と隣接しているので,低学年では以前から交流活動を続けてきている。特に1学年では,生活科や特別活動の時間に遊びを中心にした交流会を何回か続けている。
今年度は,生活科での学びの発表会に幼稚園児を招待していっしょに遊ぶ活動を取り入れた。回を重ねるごとに,1年生なりに上級生としての自覚が芽ばえてきた。
2学年の「町たんけん」の単元では,児童自身に活動の見通しをもたせるために,準備,計画,活動,ふり返りの各段階において教師が支援するようにした。具体的には,調べたいお店の決定,学校からの道順,訪問時のあいさつの仕方,インタビューの仕方,記録の取り方等についての助言を意図的におこなった。
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幼稚園児と交流学習
学校のまわりのたんけん地図 |
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2) | 中学年の取組
中学年はテーマの主軸をふるさと「小野市」に焦点化した。まず,3学年は自分たちが住んでいる地域「小野市」の施設や文化財について調査し,ふるさと自慢をした。そして,4学年は小野市の環境及び福祉について調査した。
表2 児童の調査対象および体験
表2は,3学年児童が見学したり調べたりした小野市の文化財や施設及び4学年の児童が体験した事項を一覧にしたものである。3学年は,校舎の中庭に小野市の地図(輪郭,主要道路)を描き,その中に調査した施設や文化財の立体模型(粘土で制作)を配置していく活動を取り入れた。単元経過に伴って自分たちの住む「小野市」の施設や文化財に興味をもつ児童が増えてきた。単元終了時には,小野市を自慢するジャンボカルタができあがった。
小野市の自慢をひろげよう |
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第4学年は,福祉社会の実現に向けて積極的に行動できる子どもを育てるために,障害のある人,高齢者の方,地域の方々との具体的な「ふれあい体験」を実施した。具体的には,福祉施設を訪問して取材したり,耳の不自由な人,目の不自由な人をゲストティチャーに招いて学習をすすめた。子どもたちは,自分の周りの障害のあるいろんな人たちに少しずつ目が向けられるようになってきた。 |
盲導犬を招いて |
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3) | 高学年の取組
第5学年は,「食」をテーマにし,食べ物と健康についての実践をした。1学期は自然学校での飯盒炊さん,川遊び(魚つかみ)を素材にした。2学期はインターネットで「食べ物と健康」についての情報収集に焦点を絞った。3学期はこれらをふまえてヘルシーメニューをつくる活動に取り組んだ。
ここでは自然学校での川遊び(魚つかみ)の実践を報告する。
表3 杉原川の自然環境及び川遊び(魚つかみ)の活動
杉原川の自然環境等 |
(1) | 水深が浅く,川底は小石と砂で安全である。 |
(2) | 清流であるため,水生生物の宝庫である。 |
(3) | 投げ網,さし網等の漁法が禁止されている。 |
(4) | 杉原川で見られる水生生物 (フナ,ウグイ,オイカワ,カワムツ,ドンコ,ドジョウ,サワガニ,アユ,オヤニラミ,タイコウチ,ミズカマキリ,イモリ等) |
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児童の活動(教師の支援) |
1 | 遊び場所を確認する。 |
2 | 自由に遊ぶ。 |
3 | 魚つかみをする。 |
4 | 捕った魚の処理について考える。 |
5 | 捕った魚の料理をする。 |
6 | 魚を煮つける。 |
7 | 煮つけた魚を試食する。 |
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表3は,川遊びをした杉原川の自然環境とその時の活動内容を示したものである。初めての体験にもかかわらす,児童たちは,夢中になって魚つかみに没頭した。自分たちで捕まえた川魚を煮て食べるという経験は,「食」について考えるよい機会となった。 |
杉原川での魚つかみ |
第6学年の取組は,一緒に学習している2人のベトナム人の級友(Aさん,B君)への共感から出発した。外国の人たちの生活習慣や文化の違いを理解し,互いに了解しあった新たな価値観を身につけさせたいと願った。そのため,まず多くの外国の人や在日外国人を支援している人たちと交流することから始めた。
受
信 |
オリエンテーション
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どうして,AさんやB君は,私たちと一緒に学習しているのだろう。 |
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第一次(22時間)
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AさんやB君が日本に来た理由や,ベトナムのことについて調べよう。 |
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交
信 |
第二次(50時間)
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日本の文化を学び,小野市に来ている外国の人と交流を深め,よりよい関係を探ろう。 |
○日本の文化を学ぼう
○韓国をいろんな面から知ろう
○ベトナムの人と交流をしよう
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発
信 |
第三次(36時間)
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外国の人とよりよい関係を結ぶための具体的な取組を保護者・地域の方に発信しよう。 |
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図1 単元構想の概略と各段階での共通課題
図1は,「あなたもわたしも地球人,かけよう虹の橋を!」の単元の全体構想と各段階での共通課題を示したものである。子どもたちは,この単元の学習を通して,多くの外国の方や在日外国人を支援されている方々との交流を深めてきた。こうした交流が自分自身の価値観を変容し,より高まったコミュニケーション能力で他者とよりよい関係を築いていってくれることを願っている。 |
在日の外国の方を招いて |
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(4) | 成果と課題
こうした「ふるさと再発見」学習の取組を通して,以下に示す成果が認められるようになった。
1) | 自ら課題をもち,積極的に調べたりたり,友だちと協力して資料を完成させたりすることができるようになった。
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2) | 身近にある社会環境,自然環境のすばらしさに気づき,校区やふるさと小野を見つめ直す目が育ってきた。
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3) | 地域の支援ネットワークが広がってきた。 |
今後の具体的な実践課題は,「総合的な学習の時間」(おのっ子タイム)における評価方法を研究することである。 |