中学理科教科書「未来へひろがるサイエンス」Q&A

物質

Q2
中和の実験(教科書本冊3年p.125)で,指示薬としてBTB溶液ではなくフェノールフタレイン溶液を用いているのはなぜですか?

回答
 BTB溶液は,BTBの化学構造が中性時は不安定で,中和点の前後で連続的に色が変化し続けてしまうため,中和点を見つけにくい試薬です。一方,フェノールフタレイン溶液は中和点付近において水溶液一滴で一気に色が消える鋭敏な試薬であり,滴下をやめるタイミングが判断しやすい試薬であるといえます。
 例えば,教科書の実験のように,水酸化ナトリウム水溶液(強アルカリ)に塩酸(強酸)を加えていくと,中和点付近ではpH7を一気に飛び越えて酸性側に傾くため,BTB溶液では緑色を見ることなく一気に黄色まで進んでしまいがちです。また蒸発させる際に,その溶液に溶けていた二酸化炭素が先に蒸発してしまうことで,わずかながらアルカリ性に変化してしまい,残った結晶は青色に色づいてしまいます(フェノールフタレイン溶液は中和点で無色であり,二酸化炭素の蒸発により変色することはありません)。このような現象をBTB溶液の特徴とともに理解しながら,実験を進め中和を学習していくことは,中学生にとって難しいことであるといえます。
 以上の理由で,指示薬にはフェノールフタレイン溶液を用いています。