1.はじめに
現在,コンピュータ・メディアにおける発展は目覚ましいものがある。その中でデジタルカメラも,年々精度の高いものが出てきている。
理科の授業では,実験や観察などの分野で,生徒たちの視覚に訴える内容がたくさんある。そのアイテムとしてデジタルカメラを使用することを考えた。
生徒たちの関心を本当の意味で高めるためには,教科書の写真や図を見て,組織や名称がわかるというのではなく,「自分で発見した!」という気持ちを持たせることが大切である。その点で「観察する」ことは非常に有効であり,デジタルカメラを使って,生徒の発見を直接,他の生徒たちにも見せることができることは,生徒の主体的な活動が保証でき,興味も高めることができる。
いざ観察するとき,ほとんどの生徒はどんなものが観察できればよいかは未知である。それを活動の中で見つけだしていくことは大切であるが,最後まで「目的の観察物を見つけられない」という事態にもなりかねない。観察の過程でそういった生徒には具体的な例を見せることで,観察する対象がはっきりとわかり,観察もスムーズに行えると考えられる。
2.学習内容と学習方法
生徒の学習活動 | 指導上の留意点 |
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・ | 道管を,赤インクで着色したホウセンカやススキなどの茎をかみそりで輪切りにしてプレパラートをつくり,顕微鏡観察する。 |
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・ | 茎はできるだけうすく輪切りにさせる。かみそりの扱いに注意させる。 |
・ | 班での観察の様子を見ながら,いくつかの班の観察結果を,デジタルカメラで撮影する。 |
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・ | デジタルカメラで撮影したものを,テレビ画面で確認する。 |
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・ | 観察物を見つけられない班に,目的の観察物を確認させ,目標を持たせるようにする。 |
・ | 茎の切り方が厚いとどのように見えるか,どの程度が適切な厚さかを説明する。 |
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・ | 再度,プレパラートをつくって観察し,スケッチする。 |
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デジタルカメラによる顕微鏡の観察物の撮影方法
<使用器具> |
カシオ 液晶デジタルカメラQV−100 |
光学式顕微鏡 |
<方法> |
| (1) | デジタルカメラを“接写モード”,絞りを“明るいモード”にする。 |
(2) | 下の写真のように,顕微鏡の接眼レンズにカメラのレンズを直接当て,カメラ背面の液晶モニターを見ながら,明るさ・アングルを調整して撮影する。 |
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3.観察結果
4.デジタルカメラを使用するメリット
(1) | 撮影したものをその場で確認することができる。 |
(2) | デジタルカメラのビデオ出力端子と,テレビのビデオ入力端子を接続することにより,顕微鏡をのぞいている人だけでなく,一斉に多くの生徒に提示することができる。 |
(3) | 動く観察物の瞬間をとらえ確認することができる。 |
(4) | 簡単に取り直しがきくので,気軽に撮影できる。 |
(5) | 生徒の観察結果をサンプルとしてテレビに映すことにより,観察の意欲を高めることができる。 |
5.その他の観察結果
ツユクサの気孔 |
カナダモの葉緑体 |
マツの葉の断面図 |
マツの花粉 |
タマネギの根の細胞分裂 |
ミジンコ |
6.デジタルカメラの画像の加工
デジタルカメラのデータをパソコンに取り込み,フォトレタッチソフト[画像処理ソフト(次の画像はPicturePublisherを使用)]を使用することにより,撮影した画像に文字を入れたり,明るさの調整などといった処理を行うことが可能である。
7.おわりに
デジタルカメラの一番のポイントは,撮影した画像をすぐに見られるということである。生徒たちも自分たちの観察したものが「テレビ画面に映る」というインパクトから,競うように優れたサンプルづくりに取り組んでいた。自分の探したものを人に見せたい,人に教えてあげたいという気持ちを持つことによって,学習に対する関心や意欲が育っていくものと考える。
また,普通のカメラと違い,フィルムを使わず,撮った画像をメモリーに記憶させるため,何度でも簡単に撮り直しがきく。撮影した画像は,フロッピーに保存しておき,コンピュータを使うことによって様々な資料への貼付けも可能である。今後,さらに研究し,有効な利用法を考えていきたい。
なお,今回の画像はすべて生徒の観察結果を撮影したものである。
参考資料
カシオ 「カシオ液晶デジタルカメラ なるほど!! 活用アイデアBOOK」
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